【稲川淳二】幽霊屋敷【ゆっくり朗読】218
2021/05/31
霊が住み着くところって色々ありますよね。
マンションだとかアパートだとか病院だとか会館だとか劇場だとか。
まぁ民家はもちろんなんですが、特に廃屋なんかは多いですよね。
どこにでも居るわけです。
あるんですよね、自分では気づかないんですが。すぐそばにいる。
例えば私のいとこ。
これ女なんですが、一人暮らしをしていまして、ファッションデザイナーなんです。
それで、自分のマンションを持っている。
持っているのはいいんですが、帰るのは月に一二度。
というのも自分の親友でヨーロッパに行っている人間が居て、その人に留守番を頼まれており、そっちにばかり入り浸っている。
そっちのほうが居心地がいいもんだから。
そんなある時、たまには自分のマンションに帰る。
夜寝たんですが、なんだか落ち着かない。
「自分のマンションなのになんだか落ち着かないなぁ」と思っていた。
朝方なんだかザワザワしている。
なんだろう?隣がうるさいわけです。
でも隣にどんな人間が住んでいるのか分からない。
何ザワザワしているんだろうなと思っていると、チャイムが鳴った。
「はい」って出ると警察官がいたそうだ。
「あの、夜分申し訳ないんですが、お隣さんが…」と言うもんだから
「あ、お隣さんですか、私実はほとんど家に帰っていなくて会ったこともないんですよ」と言うと、警察官が
「あぁそうですか」って言うんで「何かあったんですか」と聞くと、
「いやー実はですね、一人暮らしの女性がいましてね、その人が実は死体で見つかったんですよ。自殺のようなんですがね」
というので驚いた。
自分の部屋の隣、全く会ったことはないんですが、そこの住人が自殺をしていたんです。
嫌だなぁと思った。
そしてまた頼まれている友だちのマンションで留守番をしているんです。
そっちのほうが快適だから。
そうこうしてまた自分のマンションに帰ってきた。
ひと月くらい経っているわけだが、そこでまた寝ているとやはりなんだか落ち着かない。
それで昼頃なんですが、また外が騒がしくなってきた。
なんだろうと思っていたらまたチャイムが鳴った。
「はい」と出ると、また警察の人が立っている。
「すみません隣の部屋なんですが。実はまた女性の自殺がありましてね」
「あーあー、あの事ですね」と言うと警察官が
「え?」
「この前の自殺のことですよね?」といとこが言うと、
「いえ、そのことじゃないんです」
聞いてみるとなんと、初め自殺があって、その後にまた別の女性が入っている。
その人が自殺してしまったと言うんです。
流石にいとこは気持ち悪くなった。
「お会いしたことはないので分からないです」と言うと、警察官は帰っていった。
変なところだなと思った。
そこは分譲マンションなのだが、何故か隣の部屋だけ賃貸となっている。
それでまた友だちのマンションに行った。
そしてまた一ヶ月たった。
それでまた自分のマンションに帰った。
夜寝ていた。
なんだか妙に気分が悪い。
色々考えるせいもあるんだろうが、気持ちがなんだか落ち着かず、眠れないなと思っていた。
そうこうしているうちに夜があけてしまった。
あぁ眠れなかった…なんだか落ち着かないな。
と思っていたら急に隣でガタガタと音がし始めた。
え、なんだろうと思っていると、パトカーの音が聞こえきて、人が集まってくる音が聞こえた。
「また何かあったのかな」と思っていると、再びチャイムが鳴った。
すると警察官が立っていて、「隣の部屋で自殺があって…」
「それひと月前の…?」
「いや、昨日亡くなっているんです。隣の方とは…?」
「実は一度も…」と言うとまた警察官は帰っていった。
でもいとこが気になって聞きに行くと、なんと隣の部屋、三ヶ月の間に縁もゆかりもない女性が三人自殺をしている。
若い人ばかり。
こうなったらもう偶然ではなく、絶対に何かありますよね。
もちろんこんなこと、不動屋さんは教えてくれないだろう。
だが絶対にそこには何かがある。
私のいとこはそこを売ってしまった。
でもそのマンション、まだあるんです。
霊が住み着いているんですよ、そこに何かの霊が。
怨霊が居るんですよ。
で、私の先輩になるんですが、私に新聞を送ってくれたんです。
明治時代の新聞なんですが、そこにいる作家が幽霊について書いている。
あーそれで送ってくれたと思った。
面白い内容だった。
お兄さんが事業に失敗し、急遽引越しをすることとなった。
だがそのお兄さんの奥さんが産気づいて実家に帰っており、今日明日には生まれるだろうという状態だった。
そこでその弟が引越の手伝いをすることとなった。
引越しの手伝いをした。
言い方は悪いがそこは色街というような場所だった。
そういう風情がある。
お兄さんたちはしばらくそこに住むこととなった。
それで二人は近くにある食堂にご飯を食べに行った。
そこで電話を借りて、奥さんに電話をかけると、もうそろそろだということだったんで、お兄さんのほうが
「おいお前悪いんだけど留守番してくれないか。俺病院の方に行くわ」
と言い、病院に行ってしまった。
で、新聞に記事を書いた作家はそこに泊まった。
でも引越しの途中だからまだ部屋に色々なものが散らかっている。
その中で寝ていた。
部屋の中は静まり返っている。
すると夜中。
ギィギィ…ギィギィ……
階段の軋む音がして、それが二階から降りてくる。
流石にゾクッとして、人が誰もいない家なのに、誰かが降りてくる。
それが廊下を
ギィギィ…ギィギィ……
とやってきて、自分の部屋の前で止まった。
そしてふすまがゆっくり開いた。
残念ながら記事はここで切れていた。
昔から幽霊屋敷ってのはあったようですよね……
(了)
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