夢の中の女
2017/08/03
俺は幽霊は見たことないんだけど、夢とそれに関する不可思議な話。
俺は中学3年くらいの頃から変な夢を見るようになった。
それはショートヘアで白いワンピース着た二〇代くらいの女が無表情で俺を黙って見てるという夢。
夢の中で俺が話しかけても何も言わず黙ったまま今でも月に2、3回くらい見るんだが、当時は週に5回は夢に出てきた。
その夢の女なんだが、俺はまったく見たこと無い顔で、家族に話して心当たり無いか聞いても誰も知らないという。
そして少し月日が経って高校の頃、法事で親戚が集まった時に叔母さんに声をかけられた。
その叔母さん曰く、たまに一瞬だけ俺の後ろに女が見えると。
ちょっと前から盆正月会ってた時に見えて「ん?」て思った時には居ないから気のせいだろうと思ってたけど、今日も一瞬見えたから言ったんだと。
これが聞いてみると、どうも特徴が夢の女っぽくて、その場でこれ聞いてた。
母親がビビって地元に住むホウニンさんっていう婆さんの所に連れてかれた。
このホウニンさんって人はイタコやユタみたいなシャーマンらしく、何やら俺の前で三〇分くらい拝んでたが、それが終わると俺に言った。
どうも俺は夢の女に惚れられたらしく、それがベタ惚れで祓う事が出来ないらしい。
俺に危害を加えるような事はおそらく無いから、俺に飽きて夢の女の方から居なくなるのを待つしかない、いつ消えるか分からないが結婚は難しいだろうと。
結局どうする事も出来ず、そのままずるずると今に至る訳だが、ここまで前置きの話。
俺は今、とある大学生でこないだ友達三人と一緒に肝試しに行ったんだ。
肝試しつっても夜中のドライブがてらある峠を通るだけなんだが、この峠は旧道になってて近くにトンネルが出来てからはめったに車が通らなくなった道。
なんでも夜にここを車で通ると女が上から降って来て、フロントガラスから睨み付けるとか。
その日、友達の溝田が運転席、岡村と牧野が後部座席で俺が助手席に乗って深夜1時頃
その峠に行ってみた。
道中はさすがに真っ暗でみんな雰囲気にのまれて無言だった。
もう少しで道の半分くらいって所で、いきなり後ろの二人が騒ぎ出した。
「後ろから女が追いかけてくる!」
そんな事言いながらものすごくパニくってる。
俺も後ろ見るんだが、暗くてよく見えない、というかそんな女は居ない。
でも後部座席の岡村と牧野は後ろを見ながら「もっとスピード出せ!」とか叫んでる。
運転してる溝田は俺と同じでそんな女見えないから「マジかよ」とか言いながら車の速度を上げる。
見えないからどれだけスピード出せば振り切れるか分からない。
だが、岡村が「もっと上げろ!追いつかれる!!」とか言うもんだから全力で峠を走らせてた。
どうやら峠の道を突っ切った辺りで女は消えたらしく、そのまま具合が悪くなった牧野の家に行って怖いんで朝方まで牧野の家で話をする事に。
そこで岡村が言うには、女が長い髪をなびかせながら宙に浮いた状態で凄い形相で追いかけてきたという。
岡村は気づかなかったが牧野はもっとよく見てて、その女は頭から血を流してたらしい。
そして朝になって各自解散。
俺はそんなもの見なくて良かったとホッとしてたが、ある形で見てしまった。
……その晩の夢の中で。
夢の中で長髪の女が俺を睨み付けるように立ってた。
その顔は頭から血どころか、顔面血まみれの状態で何やら呟いてる。
俺は即座に峠の女だと直感し、動けずにいると、俺の横から誰かが出てきた。
それはいつも見る夢の女だった。
いつもはただ立ってるだけの夢の女は、峠の女に近付いて行き、向き合う形に。
そして、ものすごい勢いてビンタ張ってた。
もう何ていうか「スパアアァァン!」て音がして、峠の女がグラついてよろめくぐらい。
そこで俺は強制的に瞼を開けて無理やり目を覚ましたが、もう心臓バクバク状態。
その後も、夢の女がいつもの様にただ立って俺を見てるだけの夢を見る。
今も見る。
蛇足になるが、峠の女はどうも俺達と一緒に牧野の家に憑いてきてたみたい。
やはり肝試しの次の晩、牧野が寝てると部屋を誰かが歩き回る音がする。
牧野が目を覚ましてみると峠の女が顔面血まみれで睨んでて、牧野と目が合うと、何やら呟き始めたらしい。
牧野はふとん被って震えてたが、呟きが止んだので見てみると、もう峠の女は消えて居なくなっており、それっきりらしい。
長くなったが、最初に言ったように俺は幽霊を見たことは無い。
見たのはただの夢だけ。
そう、ただの夢。だけどねぇ……
(了)
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