【稲川淳二】夜窓人面浮遊考【ゆっくり朗読】161
2021/05/23
私がレギュラーをしていた番組があるんですよ。
若い子が対象の番組でね。
曜日のレギュラーをやっていたんです。
私がその番組を辞めて何年か経った頃、その番組の500回記念だっていうので、呼ばれていったんです。
こういうお話をしてますから、私の受け持ちは怪奇な部分の話しだったんですが、私のスケジュールの都合で、出るのが他の曜日になっちゃったんです。
そうしましたら、「稲川さん、こういう写真があるんです。これを読んで紹介して下さい」って、心霊写真を渡されましてね。
それは既に番組で紹介した物なんだけど、特に人気のあった物だっていうんです。
見てみると、「車の中に笑った顔の居ないはずの女性が写っている」とか、「子供の足に骸骨が刺さっている」写真だとか、そういう物なんです。
それで、その中の一枚の写真を紹介した時に、みんながキャーって叫んだんです。
それは宴会場の写真なんです。
みんなが騒いで、部屋の中を動いている写真なんだ。
御膳の周りを走っている人だとか、手をあげている人だとか、色んな人がいるんだ。
それでね、みんなが写っている後ろ、バックは大きな窓ガラスなんだけど、カーテンが開いてるんですよ。
外は真っ暗だから何も写っていないんだけど、その向こうに4つの青い点があるんです。
これね、よく見たら人間の顔なんです。髪の毛のない。
歯は食いしばってニーって開いてるんですよ。
で、目玉はまん丸で、同じ顔が4つ並んで笑ってるんだ。
[夜窓人面浮遊考:フジテレビ「夕やけニャンニャン」で放送]
この宴会場は建物の中でも一番上の階だったんで、ここに顔が写るわけがない。
建物の中に居るやつも、そんな冗談は出来るわけがない。
そこに居た人は写真を焼くまで気が付かなかっていうんですがね…これが本物だっていうんです。
私も「これは凄いね、気持ち悪いね」って話しをしてましたよ。
それでその番組が終わった後に、私はすぐにロケに行ったんですよ。
車に乗っていくんですが、現地に着くのは夜中なんですよね。
そして、ほとんど寝れない状態で、長野県のある村へ着いたんです。
もう時計は夜中をすっかり回ってますよ。明日は朝一番からからロケがあるわけですから。
宿に着きましたら、そこの従業員さんが「どうぞお待ちしておりました」と眠そうな顔をして出て来てね、「稲川さん、こちらのお部屋です」って階段を上がっていってね、一番奥の部屋へ通されましたよ。
「じゃあこれで十分なんで。おやすみなさい」って、私は一人で部屋に入って一息ついてね。
それで何気なく部屋を見ると、カーテンが開いているんですよ。
普通さ、そんな夜中だったらカーテン閉めておくでしょ?それが開いてるんですよ。
それを見た時に私ね、あれ?これはどっかで見た景色だな……って思ったんです。
窓の向こうは真っ暗なんです。山が写っているから、景色がない。
でも、私は次の日は朝一からロケですからね。
もう寝ようとしているから、押入を開けて布団を出したんです。
敷布団を敷いて、布団カバーも敷かないまんま、掛け布団を引っ張りだした。
それでパンツ一丁になって、掛け布団をかけようと、ひょいと見た。
そしたら、掛け布団のカバー。ちょうど私の顎が乗るあたりの所。
そこにね、直径10cm位の血の染みがポツンとついているんですよ。
それも洗った後もない、そのままの状態で。まだ少し赤みがある。縁が黒ずんでね。
誰かが鼻血でも垂らしたのかな?とも思ったけど、そんな事あるわけない。
まして旅館でもって、そんな布団を出すわけがない。
さすがに気持ち悪かったから、そのままそれを畳んでしまい込みましたよ。
それで下の布団を出して掛けた。
でも、なんだか寝る気がしないんだ……気持ち悪くて生理的にも嫌だから。
だからね、広い部屋だったんで御膳を挟んで反対側に座布団を三つ敷いて、また服を着て、ポケット瓶を取り出して飲み始めたんです。
それでゴロンと横になった。
そしたら、もう身体は動かないんですよ。
なんせ、ぶっ通しで仕事をした後に、何時間も車で移動してきてますからね、だるくてね。
それで何時間かわからないけど、眠っちゃ覚め、眠っちゃ覚めってのを繰り返してたんだ。
そうしましたらね、誰かが入ってきたんだ。畳を歩く音がするんだ。
一緒に行っているのは、私とディレクターとカメラさんと音声さんと照明さんと五人で、私の他に四人が居るんだ。
それで誰かが入ってきて、私の上まで来て、ひょいっと私を覗いて、私の顔をジーっと見てるんだ。
だから私は、「まいったよ……ダメだよ体がダルくてさ、もう動けないよ」って言おうとしてるんだけど、声が出ないんだ。
で、彼も私をジーっと見てるんだ。そしてそのうちに彼は帰っちゃったの。
しばらくして気配がするから見ると、また誰かが私を覗いてるんですよ。
だから私は、「あーごめんね……体がダルくてさ、動けないよ」って言おうとしてるんだけど、声が出ないの。
で、彼は私をジーっと見てるんだ。それでそのうちに彼は帰っちゃったの。
で、またしばらくして気配がするんだけど、私は横向きに寝ているから、気配はするけど、その姿は見えない。
突然、顔が目の前にポンと出てくるんだ。
それで、私の顔から1メートル半位の位置で屈んで見ているから、「あーまだ寝ないの?」って言おうとしてるんだけど、声が出ないの。
結局四人来ましてね、帰って行ったんです。
私はそのままウトウトしていたんですけど、あー寝ないとだめだ……
具合が悪いや。でも明日もあるからちゃんと寝ないと……って思いながらね、半分寝たような状態で布団まで行ったんです。
それでまたパンツだけになって、掛け布団を掴んで、ひょいっと掛けようとした瞬間……
半分寝たような感じだった頭がスッキリっとしたんです。
それで、あ、そういえば俺の所に四人来たよなって思ったんです。
で、次の瞬間ですよね……
違う!違うんだ!!あれは一緒に来たスタッフじゃないんだ)って思った。
見たこともないやつなんだ。丸い顔をして、歯をニーっと剥き出して俺の事を見てたのは、あの四人なの。
次の日の朝、私は寝れないから早めに起きたんです。
そしたらね、他のスタッフもみんな早く起きてきて、口々に「なんかあそこ寝れなかったよな?」って言ってるんだ。
わけもなく、皆が寝れなかったって言ってるんですよ。でも、みんなその原因がわからないんです。
でも、僕がみたのはそうだったんです。その四人だったんです。
そういう経験がありましたよ。
(了)
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