【厳選】 怪談・都市伝説・怖い話まとめ

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つかまる【四つ年上の姉シリーズ07_完】

      2021/07/28

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四つ歳上の姉の話だ。

もうこの話に関しては、書くべきではないのかもしれないと何度も悩んだ。

全てが終わったのだと思っていたからこそ書き始めた姉にまつわる話が、その後別な形でその片鱗を見せることになるなんてこと、俺は正直考えてすらいなかった。

自分が体験したことすら、未だに半信半疑で、正直、今でも書き記すかどうか悩んでいる。

全ての人に同じような体験が起きるわけがないと思っているが、一応断り書きをいれさせてもらおうと思う。

俺の姉にまつわる『赤い鬼』は、その存在自体はもう無いものの、知った人間の一部に残滓のように影響を与え、時には災厄に巻き込むそうだ。

俺自身は姉と共に乗った車で事故に遭い、その時たまたま姉が同乗してくれていたから今もまだ生きている。

雪の吹きすさぶ中、自分も事故に遭ったというのに平然と笑っていた姉。

深夜も過ぎた午前一時過ぎ。

国道とはいえぽつりぽつりとしか道路照明灯の無い、それでも通い慣れた道。

月も無く、等間隔にともった道路灯の頼りない光と、車のヘッドライトだけの寒く暗すぎるほど暗い夜の中、

「とうま、お前『赤い鬼』に関して何かしてるだろう?ずいぶんと思い切った真似をしたもんだ」

姉は若干呆れたような眼差しで、それでも責めることすらせず、ただ口の端を少しばかりつり上げて苦笑するだけだった。

高い高い橋の上。

事故で車ごと落下死しなかったことが不思議なぐらいの状況で、まるで恐怖も無いように普通の態度だった姉が、その時初めて何か恐ろしい存在に思えた。

のぞき込んだ橋の下は、ひたすら黒い暗闇で、一歩間違えばあの下でぐちゃぐちゃになって死んでいたんだと思うと、寒さよりも恐ろしさで背筋が冷えた。

生きた心地がしなかった。

「興味があるなら、誰でもが覗く権利がある。幽霊だろうが、怪異だろうが、鬼だろうが、ナニモノだろうが」

あの夜の姉の言葉が今でもはっきり耳に焼き付いて聞こえる気がする。

「ただし……『かたればさわる』ぞ。暗がりをせいぜい楽しむといい」

俺が死ぬかと思ったあの車事故の話も、機会があればいつか書こうと思う。

これらの話を投稿し始めてから、立て続けに遭遇した様々な怪我や病、機械の故障に果ては事故も、読んでいる人に

『ただの偶然だ。怖い話なんか知ってるからって、何でも結びつけて考えるなよ、馬鹿らしい』と、笑い飛ばしてほしい。

いっそそうしてもらえると、俺も気が楽だ。

かたればさわる。

ただそれが大事だ。

今後俺が書く話を読む人は、ナニカに自分もさわられることがあってもいいという人だけにしてほしい。

そして、俺の記した話をもし誰かに話すなら、そこに決して嘘を混ぜないでほしい。

『かたればさわる』からだ。

前置きが長くなって申し訳ない。

それでは、いつも通り四つ年上の姉にまつわる話をしようと思う。

姉が小学校の六年になって半年ぐらいの事だ。

当時、母方の実家での父の我慢は年を経るごとに限界に近づいており、祖父と父との仲はかなり険悪な状態になっていた。

祖父が歩み寄ろうとしても、父が受け付けない。

どこの土地で住むにしてもそうだが、その土地の人間とうまくやっていくには相応の風習というか、暗黙の了解のようなものがある。

父は近所付き合いですら田舎の因習として忌み嫌い、四件先の小さな工場で働くことも自分にふさわしくない恥としていたらしく、

表面上はものわかりのよいような態度をとって生活しつつも、深夜になれば今住んでいる場所がどれほどくだらない因習に縛られた時代遅れの低俗な町であるか、つのる不満を全て母にぶつける日々が続いていたそうだ。

俺は当時小学校中学年にようやくなった頃。

学校の男友達と毎日遊ぶのが楽しく、毎日体力の限界まで遊んでは夜にはすぐ熟睡していて、同じ部屋で起こっている両親の修羅場にはまるで気づいていない、ある意味では幸せな生活をしていた。

姉はといえば、五年になった段階で一階にある小さな部屋を自室として与えられ、そこで寝起きしていた。

祖父母もまた一階で寝起きしていたが、それでも深夜に大の男が怒鳴り散らせば、一階にいる誰もが二階の物々しい罵声には当然気づいていたそうだ。

今振り返ってみれば、父が暴れる声も音も、俺だけには覚えがないというのもおかしな話だ。

子供だから気づかない、ですまないレベルだったのは、母にも姉にも祖父母にも確認したから間違い無い。

不自然に抜け落ちているといってもいいほど、ごっそりと俺にだけその体験が失われている。

どうしてなのかは、いまだにわからない。

眠っていたのか、あるいはナニカに眠らされていたのか。

ともかく、俺の気づかないうちに俺の家族の関係はぎしぎしと歪んでいっていた。

たぶん、姉が誰よりも敏感にそれを感じ取っていた。

何せ、もうその頃には父の足下には常に『赤い鬼』がまとわりついてまわっていたそうなのだ。

姉自身には手を出さず、けれど姉の生活の基盤を鬼達は少しずつ削ぎ取っていた。

父の足の後ろから、隠れんぼをしながら悪意に満ちたくすくすという忍び笑いを向けてくる鬼達。

決して顔は見せず、細い手足にずんぐりとした腹、餓鬼に似たその鬼が、徐々に自分との間隔を狭めているのを、姉は感じていたらしい。

『秘密の友達』が教えてくれた、いつかの言葉。

「赤い鬼に殺されては駄目よ。赤い鬼と同じモノになっても駄目」

それをその都度思い出して、どうしたらあの鬼を退けることができるのか、そして父を元に戻せるのかを意識しない日はなかったそうだ。

自分はあの鬼らしきモノにとってどんな意味があるのか。

何が鬼の目的で、何を求めているのか。

父方の家筋にまつわり、曾祖父は自らが死ぬ前に『資格』があると言っていた。

資格とは何か、直系の長女にナニがあるというのか。

姉は学校で起こる説明しがたい心霊現象の問題を、人に知られないよう注意しつつも片っ端から片付け、(何故俺がそれを知っているかと言えば、幽霊退治?の現場に面白がってついて行っていたからだ)

古い文献などを調べ、博識な老人達の元に足繁く通い、打開策を模索していた。

だが、ちょうどその頃から、姉は徐々に体調を崩すようになっていた。

もともと喘息をもっている上に母方の貧血も継いだらしく、普段はは快活に過ごしていたが、目眩や貧血を起こしぐったりとした姿を見ることも頻繁だった。

そもそも姉は多忙だった。

五年の終わりから当選して引き継いだ学校の児童会長の仕事に、姉の代での校舎閉校、新校舎設立の行事のあれこれ、一年を通して行われる朝と放課後の運動強化訓練、それから家の手伝いに、オカルト関係の雑事と研究。

小学生のする量ではない労力を姉は日常的に続けていた。

姉なりに必死だったと、いつか酒を飲んでいた姉が珍しく自分から話してくれた事がある。

自分の家に降りかかる災難だけを、何もできずに過ごすことが歯がゆい。

人に視えないものが見えて、交流をとり知識を得たり、あるいは誰かに災厄をもたらしているモノを排除したりできても、肝心の自分の家族に纏わり付く鬼をどうにもできないならば意味が無いだろうと、子供なりに研鑽を積めばいつかどうにか出来るだろうと、信じていたのだそうだ。

必死で、ある意味盲目的だったと、姉は言った。

だから気づかなかったのだろうと、その時は陰鬱な表情だった。

俺達が通っていた学校の裏通りには、気さくなおじさんの経営する魚屋があった。

魚屋といっても魚を中心として様々な食品を取り扱い、トラックで地区の端から端まで売りに来てくれるような、重宝されていた店だった。

田舎といっても、小さいがそれなりに店はあった。

特に学校裏が一種商店街のようになっていて、パーマ屋から燃料店、駄菓子屋に魚屋と様々に、それなりに活気があった。

魚屋のおじさんは恰幅が良く、日に焼けた浅黒い肌もあいまって、ガハハと大きく口を開けて笑う豪快な人だった。

子供が好きで、よく大きな手でがしがしと撫でてくる人だった。

六年の教室を出てすぐの廊下から、その魚屋はよく見える場所に経っていた。

夏が終わって秋が来て、赤トンボやススキなんかが目にとまるようになった季節。

その日は六時のサイレンよりも早く、パトカーのけたたましい音で目が覚めた。

朝の五時頃だ。

たぶん三台ぐらいが連続で通って、もの珍しさにパジャマ姿で眠い目をこすりながらわざわざ外に出たのを覚えている。

せっかく起きてパトカーを探したのに、音だけで車が見れなかったことにずいぶんとがっかりした。

姉は具合が悪いらしく、七時近くになってようやく身支度を調え起きてきた。

朝から貧血らしく、頭を押さえながら青白い顔で食卓につく。

父の食事の時間に父の姿は無い。

ずいぶん前から、父は生活の主体を二階で行うようになっており、団らんの席についたことが無かった。

そもそも父は朝食が遅いのだ。

俺は起きてきた姉に、興奮しながらパトカーが来たらしいことを伝えた。

具合が悪く生返事で、話の半分も聞いていないようだった。

「とうま。パトカーが来るのは何か事件があった時なんだから、喜んだらダメだよ」

「だってかっこいいじゃん!パトカーとか消防車とかパワーショベルとか」

「男子はそういうの好きだよねー」

朝食をとりながら他愛も無い話をして、いつも通り学校に向かう。

学校に近づくにつれて、普段なら出勤しているはずの大人達が道で立ち話をしている姿が増えていくのを奇妙に思った。

学校の真向かいには公民館がある。パトカーはそこの駐車場に止まっていた。

険しい顔をした大人達が行き交い、辺りが物々しい空気にあふれている。

校門には複数の先生が立ち、通学してきた児童ををまっすぐ校内に誘導していた。

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明らかに何かが起こり、それに近づけさせまいとしているのだと嫌でも伝わってきた。

全校児童がしばらく体育館に待機させられ、みんなが「なんだろうね?」と口々にざわめき合っていた。

普段なら開けているはずの体育館の扉も全て閉めてあり、教室へと続く渡り廊下の前には常に二、三人の先生が立って、生徒が体育館から出て行かないよう見張っている。

授業が始まらないのをいいことに、みんなは集められた体育館でいくつかの仲の良いグループでまとまり、子供らしい雑談をして賑わっていた。

三十分ほどして、学年ごと担任の先生に付き従って教室に移動が始まった。

窓際の席だった俺は、教室に入ってすぐにまだパトカーがいるかと公民館側に視線をやったが、パトカーもいなければ大人の姿も無い、ただの退屈な光景が広がっているだけだった。

がっかりしてふてくされて、自分の席に着こうとした時だった。

にわかに廊下が騒がしくなった。

「あ……あああ……なんで……なんでっ!うそ……あああああぁーっ!!」

奥の廊下から聞こえてきたのは、紛れもない姉の叫びだった。

「姉ちゃん!?」

あんな悲鳴じみた叫びなど聞いたことも無い。

だいたいにして落ち着いて、それこそ他の児童が問題でも起こさない限り騒ぐことなど無い、あの姉が。

ランドセルや運動着の入った袋は廊下の窓側にかけておく。

六年の教室の廊下側からは、あの魚屋がよく見える位置にあった。

「どうしたんだよ!!」

荷物も取り落とし、姉は一点を凝視したまま悲鳴を上げていた。

駆け寄って姉の腕を掴んで強く揺さぶるが変化は無い。

姉の視線の先を辿ってごく平凡な田舎の風景の中に、ぶらり、と垂れ下がったモノを『視て』、俺も硬直した。

見慣れた魚屋の二階。

ベランダにだらりと垂れ下がって、舌をだらしなく出し、日焼けた浅黒い肌が妙な紫じみた色になって、苦しさに限界まで開かれたまぶたから目玉がこぼれそうな、あの姿は。

魚屋の二階まではそれなりに距離があるはずなのに、それは妙に鮮明に近くで視えた。

首に太い縄。おじさんの体は若干透けていて、体の向こう側にある窓やベランダの景色が重なって見えた。

これが姉の視ている世界なのかと、幽霊となっても首をくくったまま、時折強風に揺れる魚屋のおじさんのだったモノを俺は初めて鮮明に視て、知っている人の死後、幽霊となってもグロテスクな有様に吐きそうになった。

突然バランスが崩れ、俺はその場に転んだ。

姉が気絶し、引っ張られて俺も転んだのだ。倒れた姉の顔色は蒼白で蝋のようだった。

騒ぎ出す児童をそれぞれの担任がなだめて教室へと押し込む。

姉は先生におぶられ、保健室へと運ばれて行った。

掴んでいた姉の腕はもう離れている。

魚屋の二階のベランダには何もない。

もう何も、視えなかった。

昼休み。保健室で目を覚ました姉は、保険医が早退を勧めてもそれを断り、あまつさえ家への連絡も拒否していた。

朝から貧血気味だったところに登校して変な騒ぎだったから、頭痛と目眩がした時に今朝見た怖い夢を思い出してパニックになっただなどと、口からでまかせもいいところな言い訳をしていた。

家に連絡がいって変に大事になるのが嫌だと担任と保険医に頼み込んで、とりあえず落ち着いた様子だしと不問になった。

普段から真面目の皮をかぶっていたのが幸いしたのだろう。

俺はもう呆れ果て、姉の言い訳にテキトーに話を合わせて終わった。

それから、姉の知っている世界と自分の知っているせかいのあまりの違いに、今更気後れしたのもあった。

姉があまりに普通にしていたから、気づかなかった。

あの時、俺がもう少し物を知っていて、何か力になれたり、せめて相談に乗れていれば、何か変わっていたことはあったのだろうかと、今も時折思う。

思えば俺は、姉のことについてもう少し考えるべきだったんだろう。

自分が年下であるというのを差し引いても、色々とオカルト的なことに関しては一緒に経験していたのだから、ただただ聞くだけに終わらせず、姉のように色々と考えてみれば良かったのだ。

そうすれば、あの時姉が弱っていたことにも気づけたかもしれなかったのに。

三日もすると姉は完全に調子を取り戻し、放課後の運動強化練習にも普通に参加していた。

秋は学校対決の陸上競技大会があるから、練習時間も長くなる。

夕焼けが眩しく、秋風が気持ちいい。

俺はわりあい短距離走が得意なので、タイムを上げる筋力強化メニューとやらに励んでいた。

対照的に姉は短距離走が嫌いだ。

「すぐに終わるから楽しくない」と、真面目に短距離で走らない意味不明な理由を聞いたことがある。

そもそも運動が全般的に得意な姉が、競技大会に向けて取り組まされているのは走り高跳びだった。

もともと身長が高いという長点と、「空が見えて面白い。蒼いから好きだ」と、これまた意味不明な理由で割合熱心に記録を伸ばしていたから、競技選手に選ばれていた。

夕日が陰ったような気がして、俺は空に眼をやった。

雲も無く、陽はちゃんと差しているのに、何かが妙に薄暗い気がする。

目をこすってみても何も変わらない。

急に日陰になったわけでもないのになんだコレと首をひねって、100m走のコースを眺めるような位置にある学校向かいの墓に目がいった。

そういえば、墓地の上に学校を建てたんだよと姉が教えてくれたことがあったなと思い出して、妙な不安感にかられた。

姉の姿を探して、ちょうど高跳びで飛んだ瞬間の姿を見つけ、地面から姉に向かって伸びる何本もの腕を視て、その腕の中にあの魚屋のおじさんの妙な紫じみた腕がもがくようにすがるように伸びているのを視て、何本もの腕が宙にある姉の足に絡みつき、引っ張り、マットの無い場所へ落とすのを視ていた。

何もかもが一瞬だった。

170cmのバーを落とさず跳んで、その位置から固い地面に叩きつけられた姉が声も出せずにもがいている所へ、俺はこれ以上無いスピードで走った。

一番早く走れた気がするが、そんなことはなんの救いにもならない。

すぐに大騒ぎになって、今度こそ姉は病院送りになった。

背中から腰までを強く打ち、しばらく姉は歩けない日々を送ることになった。

「すぐに治るからだいじょうぶだよ」

「うそだ。一つも大丈夫なことなんかない」

「………何か視えでもしたか?」

「……………」

「言いたくないなら答えなくていい。怖いなら離れてろ。視ず、聞かず、知らずにいろ。それなら安全だ」

ベッドの上で痛々しい姿で身を横たえたまま姉は言ったが、安全などないことを俺は知っていた。

あの時校庭で呼吸もままならず、痛みに身じろぐ姉の手に触れた時、俺にもそれははっきり聞こえていた。

『あーし、あーし、つかまえたー』

『かーんど、かーんど、つかまえたー』

姉の語る赤い鬼が、その日は俺にも視えた。

甲高くザラついた、ビデオテープか何かの音を無理に引き延ばしたような、不快で間延びした鬼の声。

姉は痛すぎて落ちたと時のことは覚えてないと言う。

俺はあの日視たもの、聞いたものを何も伝えなかった。

すがられていたよと教えて、いいことが起きるわけもないと嫌でもわかってしまった。

墓の上に建てた学校には幽霊が移り棲むのだ。

プールに七不思議が産まれた時に、そう言っていたのは他ならない姉だ。

気さくなおじさんも、あの学校の土地に棲むモノに引き込まれたんだろうか。

けれど、あのおじさんが自殺後に、赤い鬼を呼び込んで好きにさせた引き金になったのだと、それは確信できていた。

『やぐそぐ、ど、ぢがううぅうううううう』
赤い鬼は痛みにうめく姉の周りで、おじさんを貪り喰っていた。

死んだ後にも痛みがあるなら、本当に地獄だとそんな風に思った。

生前の気さくな面影はなく、恨みの言葉を吐きながらかじられていくその姿に同情はできなかった。

後日の話だ。

無事に歩けるようになったは良かったが、姉の小学校卒業と同時に、慣れ親しんだ母方の実家を出る事が決まった。

中学校に近い場所に家を借りて、そこで父の治療院も開始するとのことだった。

喜色一杯に、「不自由の無いところへ行けるぞ。とうまも町の大きな学校の方が設備もいいから楽しみにしてろ」

祝杯だと機嫌良く酒をあおる父に

「わかった。住む場所は決まってるの?」

「家を借りる金はきっちり準備できたし、何も心配いらないぞ。ゆくゆくは家を買ってやるからな、いい家があれば」

すぐに背をむけ、自分の部屋へと戻る姉が階段で漏らした呟きを、俺は聞き逃さなかった。

「つかまったか。この間の足のぶんだとでも言いたいか……馬鹿鬼共が『カンド』になぞ、誰がなるものか」

呪いじみた重い響きだった。

痛みで覚えていないはずの姉が、何故鬼の言った『かんど』というものを既に知っていたのか。

知る度に、より謎も因縁も深みへはまっていく。

中学、高校とさらのその先も、その縁は続いていく。

どんどんと深みへ。暗がりへと……

投稿者「とうま ◆xnLOzMnQ」2015/03/04

(了)

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