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トラウマ映画館 『マドモアゼル(1966)』 町山智浩解説 ネタバレ注意

      2015/06/22

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聖ジュネ、少年時代の傷~『マドモアゼル』Mademoiselle

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映画が始まり、画面に映し出されるのは草木の茂る山の中でそんな自然には似つかわしくない都会的な洋服で着飾った女が重そうなクランクを懸命に回している姿だ。
クランクは田舎の村の水門の解放弁らしく、女がクランクを回したことにより大量の水が奔流となって溢れ、村を水浸しにする。
その場から逃げ出した女は草原で鶉の巣の中の卵を見つけ、それを掴み取ると歓喜に燃える目で握り潰す。
家に帰り自分の部屋から突然の出水に慌てふためく村民をうっとりと眺める女。
そして夜。
外の暗闇へと出た女は、小走りに村の道を抜けると、手ごろな納屋を見つけ、それに火を点けた…。
映画『マドモアゼル』は、そんな、あまりにも不穏な出だしから始まる。
しかし、女の表の顔は、村人たちから愛され尊敬され、都会からやってきたことから”マドモアゼル”とさえ呼ばれている、小学校の女教師だった。
村を騒がす凶状がこの女のせいだとは誰も思わなかった。
村人たちが疑ったのは、村はずれに住む流れ者のきこりの男だった。
村人たちは、単によそ者である、ということだけからこの男を犯人だと決め付けた。
一方、”マドモアゼル”は、この逞しいきこりの男に、密かに燃え上がるような情欲を滾らせていた。
村人から愛され尊敬される女、都会からやってきた知的な職業を生業とする女は、その実、独り身のハイミスでもあった。
彼女は、淫らな色欲を押し殺しながら、何食わぬ顔で男に近付いて行く。
そして男への欲情が高まるほどに女の村への凶状は悪辣の度を増し、それを流れ者のきこりの男の犯行だと勝手に決め付けた村人たちは、遂に男を捕らえる為山狩りを始めるのだ。
品行方正な淑女を気取る表の顔と淫蕩で破壊的な夜叉の如き裏の顔。
女は2つの顔を使い分けて村の中で生きていた。
女を密かに反社会的な行為へと走らせたのはなんだったのだろう。
それはきっと、都会で生活し、教師の仕事に就いていたのであろうその女が、田舎へと異動を命じられ、そして彼女にとっては野卑なものでしかない田舎での、意に染まぬ生活を強いられることへの不満と怒りが、破壊行為となって表れたのではないか。
そもそも女は、村人たちに外面こそ良くしていても、自分はこの共同体ともこの土地とも何の関係も無いしこれから馴染むつもりもないのだ、ということを、華美ではあるが村の中では浮いて見えるだけの服装や、田舎の畦道には似つかわしくないハイヒールを履いて現われる、という冒頭の描写から、観る者に既に明らかにしているのだ。
女にとって、自らが住まざるを得なくなったその村は、唾棄すべき忌まわしい辺土であり、そこに住む村人たちは、牛豚並みの汚らしく蒙昧な生き物でしかない。
その場所に望みもしないのに住むことになった自分は、世界で一番惨めで不幸な女であり、そして呪わしくあまりにも不当なその仕打ちへの報復として、女は、異常な行為を繰り返していたのだ。
女は、自らの不幸への、復讐者だったのである。
そしてこの女が情欲の対象として目を付けたのが季節ごとにこの村を訪れ伐採をするよそ者の木こりだ。
逞しい肉体を誇り、屈託がなく、村が窮状に至ると率先して助けようとするこの男を、女は物陰から、舌なめずりさえしながら隠微な目つきで見つめていた。
例えどのように信望を集めていても、田舎の野卑な生活に馴染むことの出来ない彼女と、村に馴染もうとしながらも、所詮は余所者扱いしかされないきこりの男は、ある意味似たもの同士なのかもしれなかった。
似た者同士であると同時に、二人は外れ者という立場から、明暗別々の生き方を選んだ、正反対に映る鏡像のような存在だった。
男の姿は、実は村に打ち解けたかもしれない自分の姿だったのだ。
だからこそ、女は、男に、憧憬の目を向けていたのだ。
しかしそれと同時に女は、小学校に通う木こりの男の息子に、教育的指導とは名ばかりの、苛烈な仕打ちを加え続けていた。
それは、少年の、その澄んだ眼差しに、自らの忌まわしい行為を、見透かされていると感じていたからなのだろう。
その苛烈さは、女の恐怖心の裏返しであり、それと同時に、少年は女に、罪悪感を喚起する存在だったのだろう。
恐ろしい行為を繰り返すこの女は、悪鬼の如き存在であると同時に、どこか哀れでもあった。
その行為は決して認められるものではないにしろ、男への密かな欲情に燃える女には、どこか遣り切れない、どこにも行き場所の無い、渇望にも似た心理を感じた。
女は、単に欲求不満だったのか。
女は、気が触れていたのか。
確かにそうだったのかもしれない、しかしそれと同時に、女はただただ孤独だった、己がどんな恐ろしいことを成しているのか分からない程に、孤独で、そして不幸だったのだ。

町山智浩解説

ジャンヌ・モローは田舎の農村の小学校教師。
村でただ一人のインテリの彼女は村人から「マドモアゼル」と呼ばれて尊敬され、子どもたちから愛されていた。
ところがイタリアから出稼ぎに来た、たくましい木こりに出会ったマドモアゼルは彼を思って悶々とし始める。
そして、満たされない欲望を癒すために夜な夜な、納屋に放火し、農業用水貯水池の水門を開けて洪水を起し、家畜を毒殺し、あわてふためく農民を見ながら悪の悦びに震えるのだった……。

監督は、「怒れる若者たち」の代表作『長距離ランナーの孤独』のトニー・リチャードソン。
原作は、『泥棒日記』のジャン・ジュネ!
脚本は、『24時間の情事(ヒロシマ・モナムール)』『愛人ラ・マン』のマルグリット・デュラス。
そして主演はもちろんジャンヌ・モロー。
彼女が犬のように四つんばいになって男の股間を見つめているポスターも実に色チック。

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