【厳選】 怪談・都市伝説・怖い話まとめ

ネットで見つけた、都市伝説・怪談・ほんとにあった怖い話・世にも奇妙な物語・心霊系・不思議系・電波系・オカルト系のお話シリーズです♪

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巣くうものシリーズ【全8話コンプリート】

      2017/07/01

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巣喰うものシリーズ・登場人物

雅史(まさし) 俺
沙織(さおり)
未央子(みおこ)
隆史(たかし)
菜花(なのか) 沙織の友人
柳二(りゅうじ) 未央子の元カレ
静男(しずお) みえるひと
清助(せいすけ)イカれた息子

巣食うもの~序

何年か前にあった怖い話を投下する。

その時は俺は地方大学の学生で、同じ科の連中とグループでよく遊んでた。

たまに混ざる奴もいて、男四~六人で女四人。

一人暮らしの奴の部屋で集まって飲んでると、よく怪談したがる女の子がいた。

決まって嫌な顔する沙織という子も居て、こっちの子が俺とかなり仲良かった。

怪談をしたがる未央子は、別に電波とかじゃなくて、怪談も体験談はなくて、どこかで面白い話を仕込んできてんじゃないか、みたいな怖い話をする子で、本当は幽霊とか信じてなさそうだった。

むしろ沙織の方が「見えるんだ」と言ってて、沙織はいつも未央子を避けてる感じだった。

二人で遊ぶとかは絶対ないし、グループでも距離をおきたがってる雰囲気。

俺とあと一人、沙織の「見える」を聞いて信じてる隆史って奴は、本当に霊感があったら遊びで怪談するなんて嫌なのかもしれない、と思ってた。

ある日、未央子と仲のいい男の一人が、恐怖スポットの話を仕入れてきてた。

車で30分くらいで行ける場所にあるそうで、未央子も他の連中も面白がって、その場で肝だめしツアーを決定。

来てない他の連中も呼び出そうってことになって、俺は沙織に電話した。

俺自身は行く気だったけど沙織は来ないだろうな、と思い、

「これから~~の辺りに行くってことになったんだ。ただ、肝試しだし他にも来ない奴いると思うし」

と言った。そしたら、沙織は遮るように
「それって、何か大きな空き家のこと?その辺りで肝試しって……」

「あ、そう。その家の裏に何かあるらしいから」

「……よした方が良くない?ってか、やめなよ。誰かの家で飲んで怪談したらいいじゃん、わざわざ行かなくても」

よりによって沙織に怪談話を進められて少し驚いたが、仲間たちは既にノリノリで準備中。

「いや……みんな行く気だし。沙織は気が進まないなら、今回は外していいと思うけど」

すると沙織は少し黙って、

「……未央子は行くの?」

「行くよ。一番、やる気満々だし」

「……そうなんだ……じゃ、私も行くから、ちょっと待ってて」

たまげたことに、沙織は本当に来て未央子と一緒に車に乗った。

結局これない奴も居て、総勢六人で、ワゴン車一台乗って出発した。

未央子は少しKYなとこがあって、沙織に距離置かれてるのもあんまり解ってないっぽく、車中で初めは面白そうにお喋りし続けてたが、すぐに欠伸をし始めた。

「バイトとかで疲れてんのかなー。眠い~」

眠そうに呟く未央子に、沙織が、「寝てなよ。着いたら起こしたげる」

「ありがと。ごめん、少しだけ寝る」

未央子は運転してる奴に断ってうとうとし始め、沙織は黙って窓の外を見てた。

で。着いたときも未央子は起きなくて、もはや完全に熟睡。てか爆睡。

「寝かしとく?」って俺らが顔を見合わせたら、沙織が

「連れてくね。後で怒るよ、置いてったら」

って未央子を担ぎ起こして、強引に車から出したんだよ。

仕方ないから隆史が背負ってやったんだけど、沙織は未央子の手を掴んでて、他の車の奴らが降りてきたら、一番先頭に立って歩いてった。

そこにあった古い家は、普通に不気味な空き家で、皆は結構もりあがって、「うわー」とか言ってた。

未央子は起きないまま。

沙織は未央子の手を掴んだまま。

いよいよ本番で、家の後ろに回ったら、何かぽつんと古井戸みたいなもんがあった。

近寄ってのぞいて見ると、乾いた井戸の中に、ちっちゃな和式の人形の家みたいなもんが見えた。

「何だー?」って一人が身を乗り出したのと、沙織が、「さがってっ!」て叫んだのが同時だった。

覗いた奴がびびって身体ひっこめた、そのすぐ後に、「カシャ……」だか「ズシャ……」だか、何か金属っぽいような小さな音がした。

「下がって!下がって!こっち来てっ!」

沙織が喚き出すまでもなく、もう何か、すごい嫌な感じが一杯だった。

カシャカシャ、ガシャズシャ、て変なジャリジャリした音が、しかもどんどん増えながら来るんだよ。

そのわけからん井戸の中から、こっちにむかって……

もう逃げたいのに身体が動かなくて、横見たらやっぱり仲間がへたってるし、音は近づいてきて、姿は見えないけど絶対に何か居たと思う。

「雅史くん、もっとこっち来て!」

沙織が怒鳴りながら俺の手を掴んで、何かを掴ませた。

俺が掴んだのを見た沙織は、今度は少し横でヘタってる奴を必死で引っ張って、また何かをつかませてる。

てか。よく見たら、俺が掴んでるのは未央子の右足。さっきの奴が掴んだのは未央子の左手。

未央子の右手は沙織が掴んでる。

隆史は相変わらず未央子をおぶってる。

沙織は未央子から手を離さずに必死に他の仲間を引っ張り寄せてた。

その後のことは、色々とよく解らなかった。

ただハッキリ覚えてるのは、気がついたら、目の前に何かがいたこと。

白いんだかグレーなんだか透明なんだか、煙なんだか人影なんだか、何か良く解らない『何か』が俺らの前に居た。

ちょうどその辺りから、ガシャガシャガシャガシャガシャ、ズシャズシャズシャズシャズシャ、みたいな金属音が耳一杯に響いてきてた。

いや、こう書くとその煙みたいなもんが金属音立ててたみたいだけど、そうじゃなかった。

俺らは『煙か人影みたいなもの』の背中を見てて、それが『見えない金属音のなにか』とぶつかり合って止めてるんだって、そういう光景だった。

「雅史くん、隆史くん、動ける?逃げよ!!速く逃げようよ!」

沙織が叫んで、俺らは必死で身体を動かして車へ向かって、何とか乗り込んで逃げ出した。

隆史がハンドルを握る車の中で俺が振り返ったとき、もう何も見えなかったけど、金属音だけは結構長いこと耳に残ってた。

その後。結局帰り着くまで熟睡こいてた未央子に「何も出なかったから起こさなかった」と説明して帰らせた後、皆で震えながら明け方まで飲んだ。

数日後に沙織を捕まえて経緯を聞いたら、げんなりした顔でいろいろ教えてくれた。

あの古井戸がマジで危ない本物だったのは予想通り。

「家の正面に居る分には大丈夫だけど、裏に回って井戸まで見たらダメ」

だそうだった。

問題は俺らを助けてくれた妙な影なんだけど、沙織は凄い嫌な顔で、

「あれは未央子の……何ていうか、憑いてるものなの」

と言った。

沙織が未央子を避けてたのは、嫌いだからじゃないそうだった。

ただ、未央子に纏わりついてるものがいて、それが凄く強くて薄気味悪いものだったんだと。

で、初めは未央子に取りついてる霊か、と考えたがどうしても違和感があって。

ある日、未央子から出てくる『それ』を見て、不意に気づいたんだそうだ。

『それ』は『未央子の中』にいるんだと。

「……未央子があれのいる世界に繋がってて出入り口になってるのか、それとも未央子自体があれの棲む場所なのか、どっちかだと思う」

沙織もよくは解らないようで、とにかくそれは未央子から出てきてまた戻っていくんだと言っていた。

他の霊的なものは全部未央子を避けるそうで、多分あれのせいで近寄れないんだとも。

「あれは私たちを守ったんじゃないし、未央子のことも大事だとかじゃないと思う。ただ、ドアとか家が壊れたら困るでしょ。だから」

何とかした方がいいのか、と思っても、未央子は本気では霊を信じていないようだったし、普通の霊じゃないから祓えるとも思えなかった。

だから放っておいたけど、自分は近寄りたくなかったんだ、と沙織は言った。

ただ、『それ』が未央子を深刻な危険から守っているのは知っていた。

そして、あの日俺らが本当に危ない場所に行くと感じて、止められないなら未央子の中に居る『それ』に守ってもらうしかない、と考えてついてきたのだという。

「あれが守るのは未央子だけだからね。少しでも離れたら、井戸から来てた方に憑かれて人生終わってたよ。雅史くんも、他の皆も」

言われて背筋が寒くなったのを紛らそうとして、

「……でも、何だろうな?未央子についてるのって。結構よくないか?結局守ってくれるんなら」

そう言ったら、沙織は羨むような蔑むような複雑な眼を向けてきた。

「あのね雅史くん。お腹に住みついた寄生虫が孵化するまでは守ってくれるって言ったら、それって嬉しい?」

「……」

……何となく、言いたいことが解った。

未央子に巣くってるモノは、とにかく自分だけの都合で未央子の中に居座ったり顔を出したりするわけで、ひょっとしたら未央子から何かを奪ってるのかもしれないわけで。

いつか自分の都合で未央子をぶち破って出て行ったりするかもしれないわけで。

その時には周りにも影響するかもしれないわけで。

しかも未央子は本気で何ひとつ全く気づいていないわけで。

「放っとくしかないんだよね」

そう言って沙織はため息をついた。

「井戸から出てきた方も、凄かった。神様が最悪の状態になったみたいな感じだった。
並みの霊能者とかじゃ負けちゃうだろうって思うくらいの奴だった。あんなのと渡り合える、未央子の『あれ』も、どうせ何やってもどうもできない」

……それから時が経って、俺も沙織も未央子も社会人。

ふと思い出したんで、投下しました。

ちなみに、理由は未央子から連絡あったから。

結婚した上に子供も生まれて元気にやってるそうです。

沙織に電話してそう言ったら、

「未央子が寿命になるまで、あれが大人しくしててくれたら、それが一番いいよね」

と言ってたところからして、沙織は、未央子が今もあれを背負ってると確信してるようです。

普通の霊と違う、そして人間の『中』に居る『何か』って、何なんでしょうね?

いや、井戸の底のミニハウスから来た金属音も気になりますが。

余談ですが、未央子は怪談と共に時々、「本当の霊体験がしてみたい!一度もないんだよね」と言っていました。

上の話の前後にも肝試しやらコックリさん系の遊びやらを試してみていたようですが、全敗らしかったです。

後に沙織が言ったところでは、

「無理だと思うよ。アレは未央子本人には見えないようになってるみたいだし、他の霊は、霊感のあるなし以前に、全く何も未央子に近づかないから。
井戸のあの音はちょっと並じゃなかったから、近づこうとしたんだろうけど。
だから未央子のアレも、未央子を眠らせて全力でやったんじゃないのかな。これは想像だけど」

そう言えば、あの夜は沙織があんだけ叫んだのに、未央子は眼を覚ます気配もなかったな、と思いました。

なお俺は、それより前に未央子が雑談で、

「家で一人でコックリさんみたいな心霊系の遊びしたけど、反応ないし、眠くなってそのまま昼寝しちゃった。あーゆーのって中々、成功しないね」

と言うのを聞いた記憶があります。

……いや、成功してたんだったりして……というか、だとしたら、その時は何が来てたんだか……

呪いの部屋

何でも、沙織が、もう一人学生時代の友人菜花に誘われて、二人で未央子宅を訪問してきたそうです。

『何か』が今もいるのか、そして何より未央子の子供は普通なのかどうかが知りたかったと。

最も帰ってきた後の話を聞くと、「……行くんじゃなかった……」と言ってましたが。

沙織によると、未央子は郊外のやや長閑なところに住んでいて、喜んで迎えてくれたそうです。

休日だったので、旦那さんと子供も居て挨拶したと言っていました。

そして結論から言って、やっぱり『何か』は未央子の中に居たそうです。

……しかも、沙織曰く「育ってた」と。

大きくなってたと言うか強くなってたと言うか、ハッキリしてきてたと言うか。

「やっぱり形とか顔とか、そういう輪郭は見えないんだけどね。
霧だとしたら『濃くなってた』、人影だとしたら『立体的になってた』って感じで。
気配も強くなってて、撒き散らす匂いっていうか放射能みたいなものが増えてた感じで、正直ぞっとした」

また、沙織と菜花が最寄り駅に降りたときから、街そのものが酷く嫌な感じが漂ってたそうです。

「みえるひと」でない菜花さえも落ち着かない様子で、

「……何だか変わった感じするとこだね。子供が多いわりに静かだからかな?少し早いけど、お店入るより未央子の家いかない?」

と言うほどだったと。

沙織は、未央子の家に向かう間の短い道すがらに、霊的に酷く悪い状態のものを驚くほど大量に見たそうです。

酷い死に方をして浮かばれないんだ、と一目で判るのとか、性質の良くない動物霊とかがもうウヨウヨしていたと。

正味の霊だけじゃなく怨念じみた空気の塊?みたいなものとか、物凄く古そうな嫌な気配とか、得体の知れないモノが寄って来たりして、本気で怖かったそうです。

「街が邪念にまみれてるみたいで怖かった。一人だったら引き返してたと思う。でも菜花に霊の話とかして変だと思われたくなかったし、もう後ろに憑いてきちゃってるのも居たみたいだったから。未央子の家に行けば何とかなる、と思って、そのまま行った」

それで急いで未央子宅に着くと、その中には相変わらず何も近寄れないらしく、未央子宅内は未央子の背負ってる『何か』の気配が充満してる他は綺麗なもので、むしろホッとしたそうです。

「未央子の旦那さんも赤ちゃんも普通だったよ。ただ、そっち系について物凄く感受性がない人だった。元からいいものも悪いものも全然感じなくて、だからどっちの影響も受けなくて、一生『こっち』の現実の世界だけと関わって生きる人が、たまに居るんだよね。未央子と一緒に暮らすなら、そうでないとダメだと思う。旦那も赤ちゃんも、守護霊が、見えなかったから。守護霊もあの家に居られなくて、いなくなったんじゃないのかな」

……守護霊いないって、大丈夫なんだろうか。

二人が未央子と居ないときは守護霊が戻って来てるのか、と沙織に訊いてみましたが、そこは解らんとのことでした。

何はともあれ、久しぶりに会ったんで互いに近況報告したら、未央子の趣味、と言うか怪談好きも健在だったそうです。

そこそこ新しく、立地も良く広々として立派な部屋だったので、菜花が誉めると、何と未央子宅は、札付きの瑕疵物件だったらしく……

結構な頻度で住人が変わるせいで、大して古くもないのに未央子一家は十何番目かの住人だそうでした。

中で事故や自殺が複数あり、他にも不幸があって出て行った住人がいたりして評判の部屋になってしまっていたため、家賃は破格の安値だったとか。

「不動産屋さんも案内してくれたけどあんまり勧めて来なかったしね~。近所の人も知ってて、『本当に大丈夫?あのね、何かあったら 無理に我慢しないで引越した方がいいよ。こんな話して悪いんだけど、その部屋、色んなことがありすぎるから……気をつけてね』って心配されちゃったよ。でも、この人そういうの全然気にしないし、私はむしろ幽霊いるなら見てみたいし~」

のほほんと笑いながら未央子は言ったそうでした。

「でも結局、そういうのって話ばっかだよね。うち、もう半年住んでるけど、全然なにもないよ。近所でも事故とか結構あるし、踏み切りではねられちゃった。子供もいたし、気をつけなきゃ危ないのは同じなんだよね。偶然この部屋の人に集中したから、呪いの部屋にされちゃったんだろうね」

……菜花は「そうだよね」と頷いたそうですが、沙織は顔が引きつるのをこらえるのが、やっとだった、と言っていました。

沙織曰く。

おそらくその部屋は、本物の『呪いの部屋』だったんだと言う事でした。

何かのきっかけで悪いものの溜まり場になってしまう場所、というのが、あるんだそうです。

霊的な位置関係とか、近くに沼や海があるとか、その方向とか色々なことのせいで、悪いものを吸い寄せて溜め込んでしまうポイントが、できてしまうことがある、と。

「それが建物の中で気密性の高い部屋だったりすると、よけいに溜まったものが、出てかなくなるの。そこに悪いものが溜まるから他の場所が綺麗でいられる、ってこともあるから。……そこに未央子が住み始めたんだよね、いきなり」

それは、つまり……

沙織の表現したところでは、

「町中のゴキブリとかムカデとかスズメバチとかを全部集め続けてきた害虫で一杯の小屋の真ん中で、不意に特大のバルサンをたきまくったようなもの」

だそうでした。そして沙織は、こうも言っていました。

「未央子のことが嫌いなんじゃないけど、二度と未央子の家にもあの辺りにも行かないと思う。……もっと散らばったりして落ち着いた状態になるまで、何年もかかりそうな 様子だった」

沙織の言では、旦那さんと子供は大丈夫だろうということでした。

一緒に暮らしている限り、未央子の『何か』の気配が色濃く染み付き続けるから、大概のものは避けていくし、そもそも霊的なものに害を受け難い性質だから、と。

現に、帰りに旦那さんが外出のついでに駅まで送ってくれた時には、道にたむろしてる悪いものは、むしろ避けていたそうで。

……問題は、おそらく付近に住んでいる人だろう、と……

沙織は「みえるひと」だけど、だからって漫画に出てくる、スーパー霊能者みたいなことはできないんだと言ってました。

絶対に勝てない、何もできないと解ってるものには関わらないようにしてる、いちいち手を出してたら今まで生きのびてない、ともらしたのを聞いた記憶があります。

ただ、何も見えないのに危険は自動的に防がれる未央子は羨ましくないか、と。

重ねて尋ねた時には、重そうにハッキリと首を横に振ってました。

「絶対に、思わない。あんなモノに身体の中に住みつかれて自分で気づいてない、なんて死んでも嫌。上手く説明できないけど、結果として助けて貰ったことがあっても、アレは感覚が受け付けない」

とのことです。

普通の霊と何が違うのか、との質問に対する答えは、「情念がない」でした。

「違和感については説明し難いけど、解りやすく言うとね。霊ってある意味で心が剥き出しで存在してるようなものだから、人でも動物でも、必ず何か色、っていうか想いが見えるんだよ。『生きたい』とか『苦しい』とか、シンプルなのでも。その情念に基づいて、こっちの世界で祟ったり守ったりするんだから。でも未央子のアレは、それが見えない。何か意思があって能動的に動いてる、のは解るんだけど、その源になる想いが一貫して全く無い。未央子の中から出てくる時も、未央子の中に戻ってく時も、井戸から出てきたモノとぶつかってた時でさえ、全くなかった。霊的なものとしては、絶対にありえないことなんだよ」

……本当に何なんだろうか?

原発並み

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当時、未央子の元カレ:柳二に聞いた小話を思い出して投下。

柳二は一度、未央子を実家に連れて行ったそうです。

そしたら、今までの歴代彼女には親切で礼儀正しかった柳二姉が、未央子に対しては非常に失礼だったそうな。

無茶な因縁をつけて頭からお茶をかけたり、口汚く罵ったり、失礼というよりイジメのレベル。

とにかく酷くイライラした感じで、ついに柳二は姉を台所へ呼び、未央子を部屋へ残して、柳二母と柳二とで責めたんだそうだ。

そしたら柳二姉の言い分が、「裏のお墓の仏様が、みんなして狂ったように暴れて怖がってる!あんな女が家の中に居るだけで私だって嫌だ!!」

と、こうだったそうだ。

柳二も柳二母も呆れて相手にせず、あまりに柳二姉が言い張るので近い内に心療内科へ連れて行こうかと考えつつ柳二は話を切り上げて未央子のところへ戻った。

そしたら、なんと、未央子は座布団枕に寝てたんだと。

幾ら起こしても起きない未央子にも柳二母は呆れ返り、しかも柳二姉は追い出せ追い出せとうるさいので、とりあえず柳二に告げて未央子を連れ出させ、帰らせた。

ここまでなら単なる女同士のイビリなんだが、その後があった。

……柳二姉が言った通り、柳二の家の裏には広めの墓地(その向こうに寺)があり、柳二が未央子を車に乗せて走り去った次の日、その墓地で大騒ぎがあったそうだ。

一夜にして倒れた墓石、数十個。

真っ二つになったのやらヒビが入ったのやら、削り取られたように表面の文字が消されてたものまであり、幾つもの墓石が偉いことになっていたとか。

その後、柳二が実家付近の噂を柳二母から聞いたところでは、何でも幾つかの家が何度墓を直しても倒れる。

一軒の家が霊能者を頼んだところ、「ダメですね。何度お墓を直しても、もうご先祖様を呼び戻して安らかに眠らせることは、出来ません。……お気の毒ですが、今後の埋葬には別の場所を探された方が良いかもしれません」

と言われたとか。

……未央子の『ソレ』と墓地の仏様がモメたんだろうか。

ってか、柳二姉はみえるひとだったのか。

『ソレ』ともめていなくなっちゃった仏様はどこにいったんだろう?と。

その話を聞いた後で沙織に尋ねてみたら、

「考えたくないから。てか、凄い気の毒だよね。マイホームで寛いでたら、お隣に原発が移動してきたみたいな状態だったと思うよ、その人たちにしたら」

……確かに考えたくない事態だな、と思いました。

印-しるし

沙織が未央子宅を訪問した時のことを、もうひとつ話してくれた。

沙織が菜花と共に未央子宅を訪問した際、踏み切りではねられた子供の話が出たことは、先に書いた通り。

その原因は知らぬが花で、未央子は切なそうにため息をついたそうです。

「辛いよね、小さな子供の不幸って。親御さんは死ぬほど辛いだろうね。私だって、この子が大人にもならない内に先にいっちゃったりしたら、どうなるか解らない」

だよね、と菜花と頷きあった未央子は、ふと思い出したように、

「小学生の頃に同級生に不幸があってね、その子のお母さん半狂乱でさ。お葬式に行ったんだけど、近寄ったら凄い目で睨まれて、お前が死ねばよかった、何でうちの子がって怒鳴られて怖かった。でも、今なら少し解る気がするなあ」

しんみり言った未央子は、その時の思い出話をしてくれたそうです。

未央子の十年以上前の思い出話 + 俺は沙織からの又聞き + 少しフェイクで、解りづらいけど、その話は以下の通り。

未央子の父親は昔、何年かに一度は異動して引越す仕事をしていたそうです。

で、小学校の3年だか四年だかの頃に田舎に住んでた時期があって、ベッドタウン化が始まったところ、みたいな町で、小学校には転校してきたヨソ者と、地元の住人の両方が通ってたそうです。

あるとき、未央子は同級生の女の子に、自宅へ招かれたと。

その家は地元の旧家で、他にもヨソ者・地元問わずに何人かの子が呼ばれてて、単独で来た子もいれば親と来た子もいて、未央子は未央子母に送られて行ったそうです。

大きな立派な家で、地元の小さなローカルな行事の時期だとかで、同級生の兄弟も友達を呼んでて、そこんちの親戚とかも来てて、ちょっとしたお祭り状態だったとか。

酒や菓子や料理が出て、子供達は遊んで、大人は話をして、日が暮れかけた頃にそこんちの父親が一同を集めたそうです。

で、お開きの前にすることがあるから、お姫さま?だか巫女さん?だかの役をやってくれる子供を募る、と言うようなことを言ったらしい。

衣装も道具もあるので、ぜひ新しく越してきた(ヨソ者)の子の誰かに頼みたい。これから仲良くしたいから、と。

綺麗なヒラヒラした白い服を見て、未央子は「ハイハイ!」と真っ先に手を上げ、「じゃあ君に」となったそうです。

そこの人に白い服を着せてもらい、お化粧してもらって白い布を被り、おみこしみたいなものの上に載せてもらって大はしゃぎした記憶があると。

未央子母も「あら~!可愛いわよ、未央子」と喜んで写真を撮ったりしていたとか。

そこんちの父親、つまり当主の説明では、おみこしに乗って近所の社へ行き、担いできた人たちがおみこしを置いて一度離れる。

そしたらお姫様はおみこしを降りて神社の中に入ってお供え物とお酒を置いてくればいい、社の中にいれば迎えに行く、と。

おみこしに未央子を乗せて何人かの男性が担ぎ、一行は山道を登っていったそうです。

「はしゃぎ過ぎたもんだからさ、行く途中で静かになったら凄い眠くなってね。うとうとして、気づいたらもう誰もいなかったから、慌てて神社の中に入ったんだけど、もう本気でメチャメチャ眠かったもんだから、とにかく適当にお供え物とお酒置いて、そこでダウンしちゃった。後でお母さんに聞いたら、おみこし担いでた人が迎えに来たら熟睡してて、回収して負ぶって戻ってくれたんだって。『迷惑かけて!!!』ってお母さん怒ってた。おまけに、家に帰ってから今度は体調崩して寝込んじゃってさー。三日くらい熱が引かなくて、『騒ぎまくった上にあんな所で寝るからよ!』って、お母さんに叱られまくったよ」

未央子が寝込んでる間、祭りの夜にいた地元の大人たちが、頻繁に見舞いに来ていたそうです。

特にその旧家の同級生母はちょいちょい来てくれ、身体の調子はどうか、変な夢を見て魘されたりしないか、と色々と未央子に尋ねたそうです。

「お見舞いにって、お姫様の衣装、もって来てくれたの。私が気に入ったみたいだから、部屋に飾っておいたらいいよって。他にも、そこの神社のお守りとか、お祭りのときのお供え物とかくれてさ。迷惑かけたのに、怒ってなくて、優しかったんだよ、そのおばさん。だけどね」

未央子がようやく熱が下がり、回復して学校へ行ってみると。

その、招いてくれた旧家の子が、未央子回復の前日に、亡くなっていたそうです。

未央子母と未央子が連れ立って葬儀に行ったら、未央子たちを見た同級生母が、凄まじい勢いで喚き始めたと。

『何であんたが生きてるんだ』

『どうしてうちの子が連れてかれるんだ』

『××に行くのはあんたのはずだ、印はどうした』

などなど正気でない調子で喚かれ、未央子母が例の白い衣装を返そうとすると、同級生の母親はさらに激昂して、うそだ、こんなのはうそだと喚きまくり、未央子と未央子母は焼香できずに帰ったそうです。

「あの時は怖くて泣いちゃったけど、後でお母さんが言ってたんだよね。『自分の子供が自分より先に死んだりしたら、誰だって悲しくておかしくなるのよ。未央子に何かあったらお母さんだってそうなっちゃうよ。未央子が悪いんじゃないから気にしないでね』って。今は本当にそうだろうなって思う」

……で、沙織が俺にしてくれた補足説明(含む沙織の推測)

「……未央子の好きな怪談って、車とかエレベーターとかばっかりだからかな。何で気がつかないの?って正直思うけど。……白い着物に白い被り物って、それ、お姫様でも巫女さんでもなくて、花嫁さんなんじゃないの?」

言われて初めてゲッとなった俺も、相当鈍いと思います。

『輿』に乗って、神様の居る『社』に運ばれて、酒とお供えと一緒に一人で残される、『白い着物に白い被り物』の娘っていったら、それはつまり。

「……専用の乗り物が実際にあるくらいの古いきちんとしたお祭りなら、普通、大事な役を新参者の子供なんかに頼まないよね。同い年のそこの家の子がいるのに。……その頃は未央子のアレも小さかったのかもしれないね。熱出して寝込んじゃったってことは」

未央子一家は、しばらくして、また転勤のため町を出たそうです。

それまで例の同級生の家には徹底的に避けられ、またそこの家は(未央子母いわく「不運なことに」)事故だか病気だかが相次いで、上の子(死んだ子の兄弟)が、入院したりしてたために忙しそうで声をかけられず、例の白い衣装は返却できずじまいで、今も未央子が持っているそうです。

未央子は、子供をなくした母親は辛いんだ、悲しいんだ、ということを感じて衝撃を受け、今も片付けや引越しなど何かの折にその衣装を見るたびに切なくなるそうです。

「お見舞いで私がこの衣装もらっちゃってなかったら、あの子は助かったかなって思ったりして。何だか捨てられなくて、ずっと持ってる」

……もっとも沙織の意見では、その古びた白い着物は、「マーキング、だと思った。何となく、ぱっと見たとき」だ、そうでした。

どっしりした絹地で、子供が着れば長く裾を引きずるだろうサイズのその着物には、全体に、細かい精緻な何かの文字のような文様のようなものが、ミッシリ織り込まれていたそうです。

そして、ほんのかすかに残るたきしめた香のような香りと共に、妙に「生ぐさい」(と沙織は表現してました)気配と言うか、あっちの世界のもののにおいがした、と。

沙織の言では、同級生家は、未央子が生還した上に中々「連れて行かれない」ので、駄目押しに花嫁の印の婚礼衣裳を未央子家に持ち込んだのではないか、と(完全に推測だけど、と言っていました)

けれども社の主は、何か(多分、未央子のアレ)に阻まれて結局は未央子を連れて行けず、そして社の主が暴れた結末がそれだったのではないか……と。

……もしそうだとしたら、と考えて、非常に不快な気分になりました。

未央子たち新参者の子を家へ誘った同級生家の子達は、どこまで知っていたのか。

そしてまた、思惑が外れて自分の子が連れて行かれてしまった母親が、どんな気分だったのか。

とにかく後味の悪い話だと思います。

「私も持ってるよ、見る?」と未央子が見せてくれた写真は何枚かあり、沙織は未央子に頼んで一枚借りてきたそうで、ご丁寧に俺に見せてくれました。

……白い着物の幼い未央子に、巻きつくような何本かの黒い線が写ってる写真を。

「ピンボケの木の枝が映り込んじゃって、心霊写真みたいでしょ」

と未央子は言ったそうですが、木の枝よりは黒いでかい手が未央子を掴んでるように見えました。

ついでに、未央子の姿の輪郭の外まわりがグレーっぽくぼんやりして見えるのは、「白い着物を着てるから」(未央子談)と言うよりは、あの井戸のミニハウスの一件で、見たモノの掴み所のない姿に似ているような……。

……未央子の母は、数年前、友人にさそわれ、ちょっとしたおふざけで、霊能者にその写真を見せたことがあるそうです。

霊能者は、「この少女は、強い強い山の霊に魅入られています。気の毒ですが、次の誕生日を迎えることはないでしょう」と言い切ったとか。

「今は大学生ですよーって言うのが気の毒で、はあそーですかって帰ってきちゃった」

と未央子母から聞いて、二人で吹き出しちゃった、と未央子は言ってたそうです。

指輪

実は学生時代の話はもう一つあり、それについて最近わかったことがあって話がまとまったんで、投下させて下さい。

こっちは井戸の一件同様、俺の直接体験が入って来ます。

未央子の学生時代の元彼柳二の話は前に書いた。

柳二は俺らの遊び仲間じゃなかったんで、井戸の一件には絡んでない。

未央子とは卒業直前あたりで就職のことで行き違って別れたと聞いてる。

ひょっとしたら今も、未央子を出入りしてるものの存在は知らないかもしれない。

学生時代、柳二から貰った指輪を未央子が仲間内で披露してたことがあった。

金銀組み合わせの指輪で、仲間内の女子の言では結構いいものらしかったが、沙織が凄い微妙な様子だった。

井戸の一件の後だったので、俺は後でこそっと「あの指輪なんかある?」と、沙織に聞きました。

「……うん……まずいかも。でも、どうしよう。俺くん、お祓いできる人とか、知らないよね?」

俺は沙織の他に「みえるひと」の本物は一人も知らなかったので、そう言うと、沙織は閉口した様子で。

沙織は、自分がみえるひとだが、経験則で危ないものを避けてきただけで、霊能者などの知り合いはいないらしいです。

「……それに、未央子も貸してくれないよね……お祓いとかするところに、未央子本人連れて行ったら、まず未央子のアレと揉めるかもしれないし……」

かと言って、指輪が霊的に危ないなどといったら、未央子のことだからそれこそ面白がって肌身離さず持ち歩くのが、俺にも想像できた。

「……ま、未央子はアレがいるから大丈夫なんじゃん?」

と俺は言ったが、沙織は複雑な顔で

「ん……ていうか……ちょっとね……」

と、言い、それで会話は終わりました。

次の日、大学内で沙織が事故って怪我した。

捨ててあった何かのガラスでサックリ切ったとかで大学の保健管理センターへ、運ばれた沙織は、その時一緒に居た同じ科の奴に、自分の荷物は最寄の講義室に、置いといてくれ、後で取りに行くから、と言ったらしい。

で、事故の後にそいつと俺が出くわして話した。

財布とか貴重品はさすがに放置じゃまずくないか?と言うことになり、俺が預かっといてやるってことにした。

講義室に行くと、誰もいなくて沙織の鞄がぽんと椅子の上においてあった。

見覚えはあったが、他の奴のだったらまずいし、失礼して中を開けて、何か氏名の解るものを確認しようとした。

そしたら。

財布の入ったポケットの中に、一緒に、小さなビニール袋に入った指輪が見えた。

前日、未央子が皆に見せまくってたのとそっくりのが。

え、何で?これ未央子の指輪か?どうして沙織が?と思ったが、単に同じもの買ったのかもしれないし、まあひょっとしたら、沙織が思い切って無断拝借してお祓いに持ち込むつもりだったのかもしれないとも考え、とにかく財布の中の免許証を確認して、鞄を持って部屋を出ようとしたら、後ろから「にゃー」って声がした。

振り向いたら、窓枠のとこに灰色っぽい猫がいた。

にゃあ、ってもう一度鳴いた猫がひょいっと窓から外へ下りてから少しして、気がついた。

……さっき居なかったよな?猫。それでここ、四階だよな?外に木の枝とかあったっけ?

慌てて鞄を置いて窓に駆け寄って見ると、窓の外には何もない。

木の枝が張り出してもいないし、建物の外側のどこにも猫はいないし、勿論落ちて死んでたりもしない。

……四階位なら飛び降りて逃げられるモンなのか?と思いつつ戻って沙織の鞄を手に持って、仰天した。

絶対さっきまでなかった派手な裂き傷が鞄についてた。

駄目押しにもう一度、足元で「にゃー」って声がするに至って、ようやく俺は、沙織がしきりに気にしてた例の指輪が俺の持ってる鞄の中にあるんだ、という事実に、気がついた。

「……」

ぞく、と背筋が寒くなったところへ、また「にゃー」さらにガリッて音が続いた。

見下ろすと、俺の靴ヒモが結び目のとこで何箇所か裂けてた。もちろん猫は居ない。

にゃー。にゃー。にゃー。

かなりの至近距離に聞こえるその声は、何だか段々と嫌な感じになってきてた。

冷や汗をかき始めた俺の周りをうろうろしてた鳴き声に、ぼそっと暗い感じの人間の声が重なった。

『……なんか、死んじゃえ。死ねばいいのに』

エコーをかけたような変な声だった。

「……!」

硬直した俺は、咄嗟に大急ぎで携帯電話を出して、速攻で電話をかけた。

プルル、プルル、と呼び出し音が鳴る間も、足元で見えない猫が鳴いてた。

靴や鞄がカリカリ音を立てて、ちらっと見下ろすと床にも何だか、傷が増えてきてるような気がした。

ガリッと衝撃があって足首に痛みが走ったのと同時くらいに、電話が繋がった。

『はーい、もしもしー?』

「未央子か!?あのさ、俺だけど、えっと沙織のこと聞いた?」

有難いことに、未央子は学内にいた。急いで沙織の怪我の件を説明し、荷物を預かってくれと頼むと、未央子は快諾した。

電話を切った俺は、沙織の鞄を持ってダッシュして未央子と待ち合わせた場所へ向かった。

エンドレスに足元から聞こえる猫の鳴き声に混ざって、ぽそ、ぽそと。

『死んじゃえ』とか『死ねばいい』とか呟く女の声がし続けた。

建物を出たあたりで、しゅっ、と足の間を通り抜けるような感触がして、足がもつれて思いっきりこけて、止めてあった自転車に突っ込んだ。

「うわー雅史くん!?大丈夫?」

待ち合わせしてた自販機の所から、大声で言いながら未央子が駆け寄ってきた。

「雅史くん、手!それに足も血が出てんじゃん!」

未央子が騒ぎながら俺に手を貸してくれ、荷物を持ってくれて、気がついたら猫の声も変な女の声もしなくなってた。

ただ、後で確認したら、やっぱり足の傷は自転車の金具で切ったんじゃなく、爪で引っかかれた傷でした。

沙織の怪我もそれほど酷くはなく、沙織鞄の中にあった指輪は、沙織が未央子から借りたものでした。

同じようなのがどうしても欲しいから、お店で見せて「こう言うのが欲しい」と、言うのに見本にしたい、と言って借りたそうで。

ただ、俺が鞄を未央子に預けた話をすると、沙織は「……あ、そう」と、言ったきりで、猫と女の声についても何も説明してくれなかった。

……今になって俺がこの話を思い出したのは、最近沙織が未央子宅を訪問したときの件があったからでした。

未央子の部屋の話、白い衣装と神社の一件の話を聞き、

「未央子の中にいるものは、未央子を守るだけで、悪霊退治をするわけではない。周囲の人がとばっちりを受けても祟られても、未央子が無事なら何もしてくれない」

と言うことを知って急に気になったのが、この一件だった。

俺はこの後、未央子と指輪の話をしたことがある。

未央子はその時、沙織から返却されたその指輪をはめてた。

「沙織が同じようなの欲しがってたけど、見つからなかったんだよね。あれ、柳二が、親戚の子に選んで買ってきてもらったんだって」
で。

柳二に指輪を選んでくれた、その女の子が、柳二の在学中に亡くなってるんだ。

柳二が葬儀に出たと言っていたのは、確か、この一件の少し後だった。

当時は、俺が女の声を聞いたときには生きてたわけだから無関係だと思ってた。

あの一件は、未央子の手元に指輪が戻って未央子には何も起こらなかった事で、片付いたつもりでいた。

でも、今考えてみるとどうしても気になって、先日、改めて沙織に聞いてみた。

沙織は物凄く迷ってたが、やっぱり黙ってるのがしんどかったようで、しつこく聞いたら最後には話してくれた。

……クロだった。

「その親戚の子、柳二が好きだったんだと思うよ。どこで呪いの方法を見つけたのか知らないけど、実際に猫を殺して本格的に呪いかけるくらい、未央子が憎かったんじゃないかな」

俺が聞いたのは、やっぱりその子の声らしかった。柳二から指輪を貰う女に対して、死んじゃえ、と呟いて猫を殺した時の声なんだろう、と俺は思った。

そして沙織が心配してたのは、未央子が呪われることじゃなかった。

未央子の中にいるものの性質をかなり正確に把握してた沙織は、動物を殺して形を整えて行われた呪いの、「返り」を気にしてたんだった。

「……私も雅史くんも大怪我じゃなかったでしょ?呪い自体には、人を殺すような力は、無かったんだと思う。だけど」

未央子にはアレが居たから。

未央子をターゲットに真っ直ぐ飛ばされたものを、アレが真っ直ぐ打ち返したときに、加速がついちゃったんだと、思う……

沙織は、それ以外は何も言わなかった。

多分、当時の沙織は、指輪をどこか霊能者のところへ持ち込んで、呪いを外してもらおうと考えてたんだと思う。

正直、沙織と話してから、少し気持ちの整理がつかなくて、混乱してる。

俺が未央子を呼んで沙織の鞄を渡さなかったら、柳二の親戚の子は死ななかったんだろうか。

未央子に沙織の鞄を預けたと言ったとき、沙織が取り戻そうとしなかったのは、もう間に合わないと思ったのか、怪我して怖くなったのか、俺は解らない。

いずれにせよ、もう何年も前の話だ。

未央子は何も悪くないんだろう。普通に彼氏から貰った指輪を喜んでただけで。

少し大雑把だけどイイ子で、同じものを探すのに貸してと言った沙織に、快く指輪を貸し出してくれるような奴だったわけで。

でも、俺が悪いんだとも思いたくない。

沙織も俺も巻き込まれただけじゃないか、って気持ちが消えない。

同時に、猫を殺して呪いをかけた女の子は確かにゾッとするけど、相手が未央子でなかったら、死人は出なかった話だったんだと思わずに居られない。

沙織が複雑な顔で「何もできないんだよね」って繰り返す気持ちが初めてまともに解った気がした。

融合体

八月に物凄いことがありました。

最初の井戸の話のときに書いた大学時代の仲間内の隆史、こいつから連絡があった。

未央子が最近、時間が出来たのか懐かしくなったのか知らんが、昔の友人にちょこちょこ連絡してて隆史も電話で話したそうだった。

……んで。未央子と話して昔の井戸の一件を思い出して、職場でネタにして喋ったそうです。

そしたら職場の女の子に呼び出され、その子の知人の男(二十代後半、俺らと同年代)に会ったと。

そいつの用件を纏めると、

「ヤバいものに憑かれてる知人が居る、坊さんも神主も霊能者もダメだった、その未央子さんの力を借りたい。連絡を取って欲しい、詳しく教えて欲しい」

隆史は井戸の一件しか知らない、つまり未央子の『ソレ』に守られた記憶しかないので、気軽に受けあい、ついでに他にも良く知ってる奴が居ると俺と沙織を推薦したそうです。

俺と沙織は話し合って、二人つれだって隆史と静男という男に会った。

指輪の件、白い着物の件、未央子宅の件を一通り説明し、未央子についてるものは未央子当人にも他の人間にも制御できず、また悪霊や呪いの類は「跳ね返す」だけで祓ってくれない、周囲に被害が出るからやめておけと告げた。

どうやら静男も「みえるひと」らしく、沙織が白い着物を着た未央子の幼少時の写真を見せたら、即座にハッキリと表情が固まった。

「……凄いね、これ。この子マジ生きてるの?今も?こっちのナニ、山神様とか?こんなんに狙われても大丈夫なワケ?これなら、本気でいけるかも」

静男は本気になったようで、俺らがやめろと言うのにはとりあわず、しきりに未央子についてる『アレ』について尋ねてきました。

沙織は躊躇いつつも、他の「みえるひと」の意見を聞いてみたかったようで、さらにざっと説明をしていた。

みえない俺には良く判らん感覚的な言葉が多く、

「硬さは?こう、バキンていきそうな」

「そうじゃないし、寒いとかスレてるとかもなくて。ただこう、ぞわっとするだけで、そこにあるのに何で?みたいな変な印象の」

「え、本当に?じゃあザリザリ擦ってるみたいな感じはある?」

「それもないです。するんとして、侵食もしないしできないし」

こんな感じの意味不明なやり取りの末に、静男は「……俺も全く見当がつかない」と首を捻っていました。

その後はもう一度、「本当に止めた方がいい」と俺と沙織から念押ししてお開きにしました。

……数日後の土曜日に、沙織から電話が来ました。

未央子がこれから隆史と会うから来ないか、と言って来たそうです。

『出る』家があるから、良かったら沙織と俺にも声をかけて来いと隆史に言われて沙織に電話をよこしたと。

たまげて家を出、沙織と合流して未央子に指定された待ち合わせ場所に行くと、そこには静男が車で待っていました。

静男はニヤニヤしながら、

「悪いね。未央子と隆史は後から来るから、乗ってくれよ」

といい、車中で説明をしました。

……こいつ、隆史に頼んで未央子に連絡とって約束したそうです。

「知り合いの家が“出る”から来ない?って行ったら2つ返事だった。いいご主人だね、『昔の友達と肝試し?いいよ、羽を伸ばして来い』って子供の面倒見てくれてるって。あんまり時間ないから急がないと」

静男の目的地は、高級住宅街の塀に囲まれたでかい豪邸でしたが、車が止まった時には、俺の横の沙織は硬直して真っ青でした。

「悪いね。大丈夫だよ、俺ら部外者だし、出入りしても手ぇ出さなければね」

静男に促されてしぶしぶ降りた沙織は、その豪邸を見上げて、引きつった顔で静男をみました。

「……本気で?」

「まあね。……ここんちの奥さんが、俺の母親の幼馴染。息子が完全にイカれちゃってんだよ」

「何いってんの?その人が助かったって、周り中に散って広がるだけじゃ」

「俺も考えたし。……出られないところに押し込めてやりあってもらえばいいんだろ? 勝敗つくまで、徹底的にさ」

二人が言い合ってる間にドアが開き、中から中年のおばさんが出てきて、俺らを招き入れました。

……どうぞ、と通された部屋に居る男を見て、思わず硬直しました。

壁向いて立った横顔は白目むいて天井見上げて、唇の端が少しだけ上がってニヤついてるみたいで、どっか壊れたような形相でブツブツブツブツ何か呟き続けてて、上手く言えないけど、その目つきが本気で怖い。

実はコレがウチに出る悪霊です、って言われたら信じたと思う。

俺もドン引きしたけど、沙織はもう真っ青でした。

「……もとはどこに?」

沙織が聞くと、静男は少し疲れたような余裕のない顔で笑って、

「そこが一番まずいんだよね。……解んないんだよ、気がついたら拾っちゃってて」

後で二人に聞いたら、そこんちの息子:清助についてたのは、何だか複数の人霊が怨念をツナギにして融合したようなものだそうでした。

様子から言って、長いこと生き物でなくモノに憑いていたと解る状態で、本体と言うか依りしろと言うか、それが清助に憑く前に居たものがあるはず。

それが除霊するときに手がかりと言うか土台になるらしいです。

なのに、どこで取り付かれたのか解らないために除霊の手がかりがなく、霊能者に無理だと言われたそうでした。

静男の答えを聞いた沙織は、さらに怯えたような顔をしていました。

「……この人、大丈夫なの?何かヤっちゃったとかないの?」

「……あー。寸前まで行ったことはある、かな。今はとりあえず、ちょい前に来てくれた人が体にヨケ(?)つけて抑えてるから」

そんな感じの怖い会話の途中で、外から車の音がしました。

隆史が未央子を乗せて来たのですが、案の定と言うか怖いことにと言うか、未央子は車中で既に熟睡していました。

静男が隆史から未央子を引き取り、抱えて奥の部屋へ連れ込み、床に寝かせて毛布をかけました。

後から清助をそこんちの奥さんが連れてきて、熟睡中の未央子と空ろな目の清助を残して、俺らは部屋を出ました。

……考えてみりゃ、眠ってる既婚女性とおかしな男をひとつ部屋に入れたりしてとんでもない話です。

何故かその時は、静男の全く躊躇いのないテキパキした態度と、未央子は何があっても無事、と言う考えが当然のこととして頭の中にあったため、唯々諾々と従ってしまいました。
ドアを閉めると、静男がドアに背をつけて廊下に胡坐をかいて座りました。

沙織が俺にしがみつき、奥さんが足早に廊下を戻って引っ込んで少しして。

部屋の中から、凄まじい破壊音が響き渡りました。

壁か柱がぶっ壊されてるんじゃないかってくらいの轟音に混ざって、ガシャン、パリンとガラスか茶碗が割れるような音。

俺はギョッとしましたし、静男は揺れるドアに背中を押し付けて座り込んだまま動きませんでした。

隆史も、何か静男から聞かされていたのか、落ち着かない様子ながら、あまり慌てた様子もなく。

どれだけ時間が経ったのか、誰も動かずに待ち続けて、ようやく中の音が小さくまばらになってきたとき。

直ぐ内側から誰かがゆすってるようにドアががたがたっと揺れ、鋭い、あせりまくった切迫した男の声が聞こえました。

「おい、助けてくれ!お願いだ、助けて!開けてくれ、早く!早く!ここを開けてくれえええっ!」

沙織が顔をあげて静男に向き直り、

「ねえ、もういいんじゃない?開けて出してあげようよ」

ここで俺もはっとして、

「おい、さっきの人清助、正気に返ったんじゃないか?」

と、言葉を添えましたが、静男はぎっと俺たちを睨みつけて「まだ」と言いました。

それからさらに時間が過ぎ、中から全く音がしなくなって、やっと静男は、立ち上がりドアを開けました。

……中は、静男が未央子を寝かせ清助を入れて出たときと全く変わりありませんでした。

壊れたものも動かされたものもなく、ただ未央子が部屋の真ん中で大の字になって寝てるだけ。あの破壊音を立てたと推測できるものの痕跡ひとつなく。

そして部屋の隅にうずくまって震えていた清助に、静男が駆け寄りました。

「おい、清助。俺、わかるか」

「あ……静男?静男!!」

目が焦点を結ぶと、清助は取り乱した様子で、しかし初対面の時より遥かにまともな様子で静男に掴みかかりました。

「静男、化け物がいたんだ!本当だ、俺に化け物が、襲い掛かってきて俺を殺して」

「……ほいほい」

幾らか安心した様子で静男がポンポンと清助の肩を叩いて宥めた。

その時、俺の横に居た沙織がふらりと傾いたのが視界に映った。

慌てて受け止めた俺に、静男が

「あ、ごめん。リビングに連れてったげて。ココは辛いでしょ」

と言った。隆史と一緒に沙織を運んで廊下を戻りながら、やっと気がついた。

さっき静男と喋ってた清助の声。

破壊音が止む前に部屋の中から聞こえた声とは、全然違う声でした。

……その後、沙織が目を覚まして動けるようになり、眠り込んでる未央子を沙織宅へ移した上で旦那さんを呼び、沙織が未央子を引き渡しました。

変に疑われると嫌なので、俺も静男も隆史も、男は全員席を外しました。

旦那さんは怪しむ様子もなく爆睡してる妻を引き取っていきました。

「あ、またですか?すみません。ひょっとしたら知ってるかもしれませんけど、睡眠障害とか言うんですかね。突然パタンと寝ちゃって目がさめないことがあって。これの母親から、小さい頃はよくあったって聞きましたけど、結婚してからは年に一回もないし、病院で検査しても異常ないし、本人覚えてないけどガスだの何だの危ないものは必ず寝る前に止めてるし、子供と居る間は起きないし、倒れるとかじゃないから問題ないんで俺は気にしてないんです。面倒をかけてすみません。連絡ありがとうございました」

沙織曰く。

「……ガスとか火とかは絶対に大丈夫だと思う。未央子が止めなくても、必ずアレが何とかするから。赤ちゃん居るとないってのは意外。未央子が子供できてから、危ない場所に行ったり危ないもの買ったりしなくなってきたのかな」

静男曰く。

「さすがに赤んぼ放置して熟睡は、未央子さんの潜在意識が拒むんじゃね?アレ、未央子さんの意識とカンペキ無関係って訳じゃないと思うよ。無意識の部分とかに食い込んでないと、寝かすのはないと思うし。未央子さんでなきゃいけない理由があるんだろーねー。赤んぼ預けるとか家族が一緒とかでないとフルで戦えないなんて不便な状況、ただの間借りならショバ替えしてるよ」

あのとき部屋の中から聞こえた声についても、「みえるひと」二人に聞いてみた。

こちらは二人とも完全一致。

『融合してた人霊のウチの一体が、消滅の危機に瀕して自我を取り戻した』

だそーです。

あの部屋、事前に静男が、使える伝もコネも知識も全部使って、頼めるだけの人に頼んで、何重にも霊的に閉鎖してたんだとか。

で。その檻の中で、未央子についてるアレと、清助についてたモノとが。

互いに在るだけで互いを削りあう至近距離に置かれることになり、形容し難い激烈なバトルが繰り広げられたようです。

結果は、またしても、未央子のアレの勝ちでした。

……助けてくれ、開けてくれ、と叫んでいたのは。

逃げ場のない檻の中で、未央子のアレと戦いながら二度目の死の恐怖を、味わっていた誰かの霊だったと。

衝撃でした。

生身でない、声帯を持たないとは信じられないほど、声はリアルでした。

そして沙織が倒れたのは、霊的に比喩的に「血染めの惨殺現場」を見たためでした。

その霊たちがどうなったのか、と言う質問には二人とも答えてくれなかったし、俺も考えたくありません。未央子のアレはお祓いだの浄霊だのしてくれる存在ではないと、既に知っているので。

話は概ねこれで終わりです。

未央子は次の日の朝に目を覚まし、鼻歌と共に朝食と夫の弁当を作ったそうです。

清助は精神科へ通院しているそうですが、以前と違って会話ができて治療効果がきちんと出ることに清助母は大変喜んでたそうでした。

ついでに隆史は、静男から何を聞かされたか知りませんが、もうあまり未央子とは、連絡を取りたくないようなことを言っていました。

最後に、その「融合した複数の人霊」これが一番、この話の嫌なところですが。

「恐らく半世紀以上は前、だけど百年は経ってない」「全員、両手の爪が剥がされてた」そうでした。

それ以上は沙織も静男も説明してくれませんでしたし、俺も聞きたくないと思っています。

どこでどんな目にあった誰だとしても、判れば気分悪くなるだけでしょうから。

呪いのコンパクト

前回書いた怨霊のカタマリ憑き男:清助の件で知り合った、俺の人生二人目の「おそらく本当にみえるひと」静男がらみの事件だ。

未央子が沙織に連絡して、会おうと言ったそうで。

思えば、学生時代から沙織は未央子を(というか未央子についてるモノを)避け気味だったが、未央子は沙織を気に入ってたようだった。

去年から何だかんだで沙織が未央子と関わってるから、このまま友達付き合いを復活したいんじゃないかと思う。

沙織は断る理由もなく、先の件で引け目があったのでOKしたものの、未央子と二人きりはどうしても気が進まず、俺を呼び出した次第だ。

引け目とは、怨霊塊憑男清助の家に熟睡中の未央子が連れ込まれた段階で反対しなかったことだそうだ。

沙織曰く、前回は本当にとんでもなかったらしい。

「井戸の時は逃げたら済んだけど、あの時は静男さんが逃げ道を塞いでたから……ドアが揺れ始めてからずっと、止めなきゃいけなかったんじゃないかって思って、もし未央子のアレが負けたら未央子はどうなるの?って凄く怖かった」と。

当日、未央子と待ち合わせ場所で会った時、すでに沙織が微妙な顔してた。

ファミレスに入ると、未央子が「コレ見て♪」と鞄から何か出した。

コンパクト?ってのか?丸い平たい2つ折りで、内側は両面が鏡の奴。

何か古そうな奴。金属っぽい質感で、凄く古っぽい感じ。

横の沙織は、また表情が固まってる。

「アンティークなんだよー。この前ほら、肝試しなのに現地到着前に私が寝ちゃったでしょ?沙織と雅史くんが旦那に連絡してくれて」

未央子は、あの後隆史の呼び出しで“肝試しスポットを教えてくれた人”として、静男に会ったそうだった。

「静男さん、おかしな場所に行かせたせいで倒れたんじゃないかって謝ってくれてね、お詫びにってコレくれたの♪結構よくて気に入ってるんだけど、安いものじゃないみたいなんだよね。お返しにお菓子でも送ろうかと思ってさー」

適当に喋って未央子を返した後、沙織が即効で静男に連絡して、数日後に会った。

現れた静男は、俺らが未央子に会ったと聞いた段階で何やら察してたようだった。

沙織が「何考えてんですか!」と怒鳴ると、静男はフフンと鼻で笑って言った。

「いいアイディアだと思わない?散らばらないよ、あれ」

……呪いの部屋と同じように呪いのグッズも現実に存在することを、改めて知らされました。

いや、指輪の一件で既に判っていたようにも思うが、古物やリサイクル品に稀にでもその類のものがあると思うとやはり怖い。

件のコンパクト、確かにモノは良いが静男は一銭も払ってないそうです。

むしろ金をやるから黙って引き取ってくれと泣かれた代物だと。

前回の話の怨霊塊憑き男:清助のために静男が情報収集してる間、静男が「みえるひと」だという情報も、広く垂れ流しだったそうで、お祓いしてくれと妙なものを持ち込んでくる奴は割りと居たと。

静男は、何も憑いてない場合はそう教えてやり、たまに出てくるホンモノについては小遣い稼ぎのネタにしていたと言ってました。

金目の物で自力で片付くものは引き取り、そして片付けて売り、奉納で済むものは処理方法を助言したりして、ポツポツ稼いでたのだそうな。

「もちろん命は惜しいから、手に負えないのはムリだっつって断ったよ。あの鏡はね、間違えた。鏡から離れないんだから最悪本体ごとおっぽり出せば済むわけで、リスクも小さいと思ったんだけどね。甘かったねー。だから未央子さんに頼んじゃった」

静男は、からからと笑って言った。

静男に聞いたところでは、そのコンパクト?は持ち主の不在を許さないのだとか。

捨てようとすると邪魔が入って、どうしても捨てられなかったそうです。

憑いてるモノは静男の手に余るから長く持ってたくないし、かと言って他人に譲るのも良心が痛むので、持て余してた一品だと。

「本体から他所にはいけない奴だし、未央子さんのアレと勝負できるレベルじゃないから問題なし。未央子さん、寝なかったっしょ?」

未央子が例のコンパクトをしばらく愛用してくれたら擦り切れて掠れて消え去ってくれるだろう、と言うのが静男の言い分でした。

で、実はここまでが前フリです。

再度俺に沙織から連絡が来たのが、確か五月下旬。

……未央子、コンパクトを手放してしまったと。

静男にも連絡したら、あの飄々とした静男があわくってたそうです。

俺も巻き込まれで付き合い、三人で次の所有者を訪ねました。

沙織が未央子に聞いたところだと、友人(学生時代のではない、俺達とは面識なし)に見せたら、凄く良い品だと言われ羨ましがられ、ちょっとだけ貸して欲しいと、言うから貸したら返してくれない、と。

「携帯に連絡してもメールしても返事がないの」

と言った時の沙織の表情を誤解したようで「貰い物なのに申し訳ない」と未央子は凹んでいたそうです。

……沙織が苦労して未央子から聞きだした名前その他の情報を頼りに俺達が未央子友人宅を探し当てた時、未央子友人は離婚前提の別居だとかで、家には居ませんでした。

ご主人だけいて、俺達の目的が奥さんに貸したコンパクトだと言うと、出てきて暗い顔で言葉少なくモノを渡してくれました。

そのとき、両足首に包帯を巻いていた彼の右袖口からちらりと、手首より少しだけ上辺りに何か見えました。

モノを引き取り未央子友人宅を辞して、俺は沙織と静男に確認しました。

…見間違いじゃなかったです。ヒトの歯型だった、と二人とも言いました。

その後の二人の会話は、以下の通り。

「奥さんの歯型だよね、アレ」

「だろうね。……やっちゃったねえ」

さすがの静男が、真っ青に青ざめていました。

「静男さんのせいだよ」

「うん、俺のせい。……呪いのコンパクトだよって言っといたから、未央子さん離さないと思ってた」

「勝手なこと言わないで下さい。大体、高価なものなら泥棒にあうこと、だって考えられるでしょ。何でそんないい加減なことするんですか」

沙織が物凄く刺々しい口調で言って静男が黙り込み、気まずい気分で俺らは静男と別れました。

例のコンパクトは、静男が持ち帰りました。

もっとも沙織曰く、もうコンパクトには何もないそうでした。

未央子が愛用していた数ヶ月で削り取られ磨り減り続けたモノの、最後っ屁と言うか断末魔と言うか、そういうものを未央子友人は、受けてしまったのだと思う、と。

その後、俺が六月に静男と飲んだとき(清助の件以降、何となく付き合いしてる)に聞いたところでは、まっさらになった例のコンパクトを売り払った金に色をつけて、例の未央子友人である女性に送金したそうです。

送金先は自腹で調べたそうで、いつも能天気に見えるコイツでもあの一件は、こたえたんだな、と思いました。

また最後になりますが、そのコンパクトに憑いてたものの正体について。

未央子のコンパクト紛失以前、沙織が静男を呼び出した際に少し聞きました。

……俺にはよく判らなかった話ですが、静男が“みた”ところでは、『四つ足の哺乳類に昆虫の羽根がある』生き物がしがみ付いてたとか。

沙織には姿は見えなかったが(能力の差か、未央子が居たことによる影響かは、解らないと)、ぶんぶんと背筋の寒い羽音が絡まりついてたと。

その中では一人だけみえない俺が

「哺乳類に虫の羽って何?異次元の生き物とか?」

と聞いたら、沙織と静男がまるで狙ったようなタイミングでバッと、目をそらしたのが印象的でした。

沙織は黙ってましたが、静男はハハハとわざとらしく笑い、

「……人間が、恨みとか呪いだけで精神のカタチまで捻じ曲げてあんなモノになれるってのが怖いよね。本当に」

と言いました。

正直、俺はグロいものを見る力が無くてよかったです。

曖昧な部分が多いですが、以上です。

模倣

また時間ができて、少し前にあった話をまとめたんで、気晴らしに投下。

去年の秋の話です。

静男、コンパクトの件で懲りたのかと思ったら、懲りてない。

相変わらず『みえる』のを利用してちょいちょい稼いでるようで、その奴の『小遣い稼ぎ』に関わる話。

いつも静男はいらんことする、と奴の絡む話には常に不愉快(でも他に“みえるひと”の知人がいないため縁切り困難)の沙織が、文句より興味で根掘り葉掘り聞いてた、怖いよりは、珍しい事例です。

コンパクトの件を投稿してから、何ヶ月かしたころ。

静男から連絡がきて、飲みに行くことになった。

んで呼び出された先が、変な場所だった。

少し距離のある市で、街外れに森っぽい林があって、その中。

おいおい、と思いつつ指示された通り砂利を敷いた道に入ったら、何か寂れた石碑みたいなもんが奥にあった。

石碑の横で待ってた静男に「おいこら」と言うと、奴は、

「大丈夫、大丈夫。居るけど、しょぼい奴だから♪」

とかほざいて、カッカッカと笑った。

「そーか。んじゃ、とっとと出て飲みに行こうぜ」

と俺が言ったとこで、静男の携帯が鳴って奴が出た。

「はーい♪ 雅史、来たよ。あ、ここ」

静男が携帯を切り、砂利道を歩いてきた未央子に手を上げた。

「やっほー♪雅史くーん」

手を上げ返しながら歩いてくる未央子の姿。手にはコンビニ袋。

「お疲れー。未央子さん、コンビニ行くとき迷わなかった?」

「少しだけ。横道間違えちゃったみたいでした、ここ戻るときも」

答えた未央子が、コンビニ袋の中身……雑誌とかお茶ペットとかガムとか、何か細々したものを、下げてたバッグに詰め替え始める。

その隙に俺が静男を見ると、小声でコソコソ説明してくれた。

「頼まれごとで、話の段階じゃよくみえなくてさあ。最悪のケース想定して未央子さん呼んどいた。勇み足だったけどねー」

そう言や、会う日時と場所を指定したのは静男だった。

何も知らない既婚女性の未央子を一対一で呼び出せる仲じゃないから、俺を口実に使いやがったらしい(隆史は嫌がったんだろう。怨霊塊憑男清助の件以来、未央子の話はしたくないっぽい様子だから)

呆れた俺に構わず、静男は続けました。

「雅史と未央子さん、仲悪くはないんだよね?今日は一緒に飲みでオッケー?一軒目で未央子さん帰して次行ってもいーよ。一軒目、俺おごるよ」

「や、未央子一緒で全然構わないし。三人でいんじゃね?」

で、そのまま飲む店の相談してたら、また静男の携帯が鳴った。

携帯を見た静男は、俺と未央子に向かって言った。

「悪い。ちょい待ってて。少しかかるかもしんないけど」

未央子は

「雅史くんいるし、大丈夫~。お喋りしてます~」

と能天気に答え、静男は俺だけにこそっと、

「この辺、未央子さんいたら寄っても来れない連中ばっかだからさあ。全く心配しなくていーよ♪」

と言い、夕日の射し始めた木立の間に消えてった。

そいで未央子とダラダラ学生時代のこととか喋ってたら、ものの数分で、

「おい、雅史!!」って静男の声がした。

何か妙にあせった声だった。

「……?おう。何だ、早いじゃん」

「あー。ちょい、こっちきて!」

ややあって、道じゃなく横の林の中から現れた静男は、頭に蜘蛛の巣を引っ掛けて肩に葉っぱつけて、変に青ざめていた。

「……?静男、何かあったのか」

俺が尋ね、未央子も「静男さん~?」と不思議そうに聞いたが、静男は答えもせずに凄まじい勢いで近づいてきた。

そして俺の腕をがっしり掴んで、結構な力で引っ張りつつ「来いよ」と言った。

何か変だ、と思って、俺は何となく腕を引く力に抵抗して、引っ張り合うようになったところへ未央子が割って入るように近寄って「静男さん、何したんですか?」と言った。

そしたら。ぶったまげたことに、凄い勢いで向き直った静男が、ぱっと俺を放したかと思うと、未央子の胸倉を掴んで、ぶん殴った。

バキッと、グーで、女の顔面を。

悲鳴を上げて倒れる未央子。

俺は仰天して、動くことも出来ずにただ静男の形相を見ていた。

さらに未央子を引き起こして二2発目を入れようとする静男を、やっと動いた俺が引き止めて手を放させた。

未央子は、よろけながら立ち上がり、止める間もなく「キャ―!助けて!」みたいに叫びながら、林の中に走りこんで逃げだした。

慌てて追おうとした俺の肩を掴んだ静男を見て、表情に正直びびった。

これマジで静男か?と思った俺の耳に、沙織の声が刺さった。

「雅史くん?静男さん?大丈夫……?」

「あ……大丈夫!今、撃退したから!」

静男が張り詰めたような大声で返す。

「……ほい、雅史」

やっと少し表情の和らいだ静男は、携帯を俺の耳に突きつけた。

「雅史君?もう居ない?未央子のニセモノ」

「……え?」

思わず聞き返した俺に、沙織はざらっと説明してくれた。

……さっきまで俺と居て、静男を待ちながら俺と大学時代の話とかしてて、静男に殴られて走って逃げた未央子は、未央子じゃない、と。

完全に思考の停止した俺を静男が引っ張って、林から普通の道路に出てしばらく歩いて、コンビニを見つけて近づいた。

もう薄暗くなった駐車場に、未央子が居て携帯をいじってました。

「あ、雅史くん!静男さん!」

元気よく声を上げた未央子の顔には、殴られた痕など全くなく。

「待ち合せ場所に戻ろうとして道に迷って、コンビニ戻っちゃってー。メール出しても返事ないから、電波悪いのかなって焦ってたんですよ」

「……うん、電波悪かったし雅史来たし、動いちゃった。メールは来てないなあ」

辛うじて笑ってみせた静男と、まだ思考停止してた俺の携帯が、一緒に鳴った。

『未央子です。すみません!コンビニには着いたけど、そこ戻る道が解らなくなっちゃいました。コンビニで待ってるので、雅史君着いたらコンビニ来てくれませんか?』

着信したメールを読んでやっと頭が動き始め、混乱の渦に巻き込まれた俺をよそに、静男と未央子はまた飲みの店を相談してた。

決めるとさっさと電話して予約した二人に引きずられ、とりあえず飲んで喋り、一段落したら早めに店を出て『主婦だしお子さん居るから、そろそろお開きで』と静男が未央子を言いくるめて解散し、俺は半ば混乱したまま帰宅しました。

数日後。静男と連絡を取り沙織交えて三人で会って、やっと俺は事情説明を受けることが出来ました。

『分身というか、自分の姿を見る人が出る場所。祟り等がないか調べてくれ』

との依頼を受け、見た人と直接会った静男が、敵の気配や強さが何故か読めないことに心配になり保険に未央子を呼ぶことを考え、口実に俺との飲みをセッティングしたのは、前述の通りです。

とりあえず気配を探りに一人で現地入りした静男は、相手の気配が予想以上にしょぼくて貧相なことに拍子抜けしたそうです。

確かに霊的なものが居る、だけど年代物の割りに本当にしょぼい。

相談者に会っても読めなかったのは、しょぼすぎて気配が弱かったからだ、と納得したほどで。

分身とかを“みせる”以上のことができそうには全く思えないから気にする必要なし。

それが当初の静男の結論でした。

「いやね、本っ当に貧相だったのよ。来て損したと思うくらい」と。

で、未央子が待ち合わせ場所の石碑に来て、二人で雅史を待ったが、最悪の事態を想定してヤバいモノが居たら、うまいこと未央子のアレを使って未央子当人には気づかせずに片付けよう、と算段してたらしい。

静男のこういうとこが、沙織の神経に障るようですが……

待ち合せ時間をずらしてあったので、暇すぎて間が持たない。

未央子がガムを欲しいと言ったので、コンビニへの道を教えて行かせた。

一人残って、漂えども姿はない貧相な気配をお遊び程度に探ってるうち、俺到着。

つづいて未央子帰還。

「その時はね、本当に変だとは思わなかったんだよ。アレもいたし」

静男も沙織も、みえるひとは皆、人をみるときには外見だけじゃなく自然に気配や憑いてるモノもみるのだそうです。

未央子は全く普通に間違いなく未央子の気配を持っていて、“アレ”も居た。

何も疑う要素はなかった。

ただ一つ違和感があったのは、ちゃんとみえる“アレ”の気配が変に弱いというか薄いこと。

気配の質は同じだから、未央子の中に引っ込むと気配が弱まるのか、と解釈してスルーしたのだが、仕事電話で石碑を離れてからもやはり気になる。

何だろう、あの、みえるのに弱いってか、薄いってかペラいってか、と考え続けててふっと頭に浮かんだ言葉。

『ハリボテみたいな気配なんだ』

いや、引っ込むと外側が抜け殻っぽく残るのかも、と考えても違和感が打ち消せない。

形だけ残して中身が引っ込むとか、何か凄く不自然だ。

そういう偽装とかハッタリとかと一番無縁な、生の力がむき出しでいるような存在が、未央子のアレなのに。

どんどん不審が増してきたので電話を中断して引き返し、こそっと未央子の写メを撮って、沙織に送って聞いてみたそうです。

すぐに沙織から返信があり『未央子のアレじゃない。絶対違う』と断言。

アレは引っ込むと形がみえなくなる。その時も気配は残り香みたいに未央子を包んでいる。弱くなんかならない、と。

その返事を受け取った静男は、瞬時に結論に到達したそうです。

アレが偽物で背負ってる未央子が本物ってのは、絶対に、ない。

有り得ない。どんなにそっくりでも、未央子ごと偽物なんだ、と。

……その辺の理屈は、正直俺の理解できない点もありましたが。

とにかく“偽物のアレを背負った普段通りの未央子”は、みえるひと、視点では有り得ないようです。

なお、静男を焦らせ沙織にも驚きだと言われた事実。

それは、石碑に居たモノが気配や憑き物を模写したことでした。

二人の言では、他人の声や姿を真似るモノはワリといる。

そして人間の姿を模した程度のものは、本人の気配とか憑依してる霊とかを写さないので、幻覚でも化けてても、みえるひとには、疑問の余地なく解るのだそうです。

なのに今回のモノは、本人の気配やオーラ(的なもの)どころか、背後の霊の気配まで含めてコピーしようとしたわけです。

これは本当に、みるのも聞くのも二人とも初のケースだそうな。

「未央子さんのアレも特殊レアものだし、さすがにコピりきれなかったんだろーけど。それでも、あの精度だよ?ふつーの人なら、守護霊まで完全にコピーできる可能性が高いよ」

「静男さんが騙されたくらいだもんね……何だろ?ソレ、弱いってのもフリじゃかったんですか?」

沙織の質問に静男が身振り手振り交えて説明した限りでは、沙織の見解も

「それは確かに。取るに足らないレベルですよね」

とのことだった。

そのしょぼい貧相な気配が未央子を模して何をしたかったのかも、謎です。

あの時静男は俺が狙われたのかと慌てたそうですが、冷静に返ってみると、生身の人間1人をどうこうできる程の力はなかったようだと。

そして今となっては、調査もできない状態だったりする……と言うのは、あの日、静男に全力でぶん殴られたモノに何があったのか、あれ以降、その貧相な気配の持ち主は居なくなってしまったからです。

後日、石碑を訪れた静男と俺と沙織は「居なくなっちゃった」と、苦笑しながら言いました。

沙織も同意したし、その頼まれ事は、どうやらこれで解決ってことになるらしい。

パニックでフルスロットル状態の静男に殴られて、消えたか逃げたかしたんじゃないか、とは沙織の言です。

また、静男の突然の暴行に仰天した以外は特に体感がなかったと、思った俺だが、後で思い出すと、ひとつだけ確かに変なことがあった。

石碑の横で未央子(だと思ってた何か)とひとしきり喋った記憶があるのに、何を話したか全く思い出せないんだ。

『大学の頃の話をした』と言うような曖昧な記憶だけ残ってて、何年生の時のこと、とかどのイベントの話、とかが全く解らない。

飲み屋で本物の未央子が喋ってたことは、俺が上の空気味だったにも関わらず、しっかり覚えてるのに。

静男と沙織に話すと、さらに難しい顔で

「ってことは、幻覚系じゃないよな」

「変身で、静男さん騙すほどそっくり?うーん……」

と、二人して首を傾げていました。

(完)

 

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