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死者に会える方法【叔父さんシリーズ03】

      2017/06/19

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これは叔父さんがイギリスに滞在していた時に、現地のイギリス人の仕事仲間から聞いた話だ。

とある青年がいたと言う。学生で、同じ学年に付き合っている彼女がいた。非常に仲睦まじく、お互い卒業したら結婚の約束までしていたと言う。

だが、ある日不幸が起きた。彼女が交通事故で死んでしまった。彼女は歩行者で、運転手の脇見運転からなる悲劇の事故だった。

彼は病院に駆けつけた。死因は脳挫傷で、遺体は眠っているだけの様な本当に綺麗な物だったと言う。

彼は深く悲しみ絶望した。葬儀は彼女の遺族らと共に、深い悲しみの中行われた。

彼は抜け殻の様になってしまった。

学校へもあまり出席せず、彼女と同居していた古いアパートに篭りっきりの生活をしていた。

少しでも彼女の思い出に触れていたいが為、居間・台所・風呂・玄関・寝室・トイレに至るまで、彼女との思い出の写真を置き、何時でも目に入るようにしていた。

そんな彼を心配して、友人達が良く部屋に出入りして励ましていたが、あまり効果は無かった。

2Fの真上の部屋は小さな教会になっており、彼と親しく割と歳も若い神父も励ましにやってきていたが、効果はなかった。

毎日、飢えない程度の粗末な食事をし、彼女の写真を見つめて過ごす日々が続いた。

ある夜。彼は、子供の頃に聞いた話をふと思い出した。

『死者と必ず会える方法がある』

その方法とは、時刻は深夜2時前後が良い。

まず、会いたい死者を思い浮かべる。その死者の遺品があればなお良い。

家の門を開けておく。ただし、家の戸締りは必ず完璧に施錠する事。

遺品を胸に抱き、蝋燭1本にだけ火を灯し、部屋の灯りを消し、ベッドに入り目を瞑る。

そして、死者が墓場から這い出てくるのを想像する。生前の綺麗な姿のまま…
死者がゆっくりゆっくり自分の家に歩いてくるのを想像する。

1歩1歩ゆっくりと…そして門を通り、玄関の前に立つのを想像する。

想像するのはそこまで。

そして、絶対に守らなければいけない事は、死者が何と言おうとも、『絶対に 家の中には入れない事』だった。

扉越しにしか話せない。何とも切ない事ではあるが、それがルールらしい。

青年は漠然とそんな話を思い出していた。

会いたい。迷信だろうが作り話だろうが。もう1度会って話したい。

もちろん、迷信だとは頭では思っていたが、もしも彼女と話した様になった気がしたら、いくらか心も休まるかもしれない。

と、自分へのセラピー的な効果も期待し、それをやってみる事にした。

時刻は深夜2時ちょっと前。

オートロックなんて洒落た物は無いので、アパートの門を開けておく。

生前、彼女が気に入っていたワンピースを胸に抱き、蝋燭を灯し、部屋の灯りを消し、彼女の蘇りを想像した。

アパートは老朽化が激しく、2Fの真上の教会(彼の部屋の天井に当たる)から何やら水漏れの様な音がする。

ピチャッ…ピチャッ…彼の部屋のどこかに水滴が落ちているらしい。

そんな事はどうでも良い…集中して…生前の綺麗な姿で…彼女が微笑みながら…部屋にお茶でも飲みに来る様な……
ドンドン ドンドン
ハッと目が覚めた。いつの間にか寝ていたらしい。

ドンドン ドンドン
何の音…?隣の住人?隣人も夜型の人だから、うるさ
ド ン ド ン ! !  ド ン ド ン ! !
…違う。自分の部屋の玄関のドアを、誰かが叩いている。時計を見ると、深夜2時50分。

こんな時間に友人とは考えにくい。…まさか。さすがに冷汗が額を伝う。

蝋燭を手に持ち、恐る恐る玄関に近づく。

叩く音が止んだ。

「…誰?」
返事がない。

「◯◯か…?」
彼女の名を呼ぶが、返事が無い。

恐る恐る覗き穴から覗く。

長い髪の女が後ろを向いてドアの前に居る!!何者かが確実に居る!!
「◯◯なら答えてくれ…」
青年はふいに涙が溢れてきた。楽しかった思い出の数々が蘇る。

「寒い…」
ふいに女が口を開いた。

彼女の声の様な気もするし、そうではない気もする。

「寒い…中に入れて…◯◯」
女は青年の名を呼んだ。涙が止まらない。抱きしめてやりたい!!
青年はルールの事など忘れて、ドアを開けた。

女は信じられないスピードで後ろ向きのままスッと部屋に入った。

青年が顔を見ようとするが、長い髪を垂らし俯いたまま必ず背中を向ける。

青年が近づこうとすればスッと距離を置く。

「とりあえず、ベッドにでも腰掛けてくれよ…」
青年が言うと、女は俯いたままベッドに腰を落とした。

しかし、この臭い…たまらない臭いがした。彼女が歩いた跡も、泥の様なモノが床にこびり付いている。

しかし彼女は彼女だ。色々と話したい。

死人にお茶を出すのも妙な気がしたが、2人分の紅茶を入れ、彼女の横に座った。

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蝋燭をテーブルに置き、青年は語り尽くした。

死んだ時苦しくはなかったか、生前のさまざまな思い出、守ってやれなかった事…
1時間は一方的に語っただろうか。相変わらず彼女は俯いたまま、黙ってジッとしている。

やがて、蝋燭の蝋が無くなりそうになったので、新しい蝋燭に変える事にした。

火をつけて彼女を照らす。

…おかしい。ワンピースの右肩に蛇の刺青が見える。彼女はタトゥーなど彫ってはいない。

足元を照らす。右足首にもハートに矢が刺さっている刺青。

というか、黒髪…??彼女はブロンドだ…言い様のない悪寒が全身を走る。

誰だ…!?
電気をつけようとしたその時、女が凄まじいスピードで起き上がり、青年の腕を掴む。

凄まじい腐臭。女がゆっくり顔を上げると、蝋燭の灯りの中に見たくもない顔が浮かび上がってきた。

中央が陥没した顔面。合わせ絵の様に左右の目が中央に寄っている。

上唇が損壊しており、歯茎が剥き出しになっている。飛び出ている舌。

青年は魂も凍るような絶叫を上げたが、女は万力の様な力で青年の腕を締め上げる。

女が何か呻く。

英語じゃない…ロンドンのチャイナタウンで聞き覚えのある様な…まさか…!!
彼女を轢いたのは在英の中国人女と聞いている…その女も即死している…こいつが!?殺される!!

青年がそう思い、女が顎が外れんばかりに損壊した口を大きく開けた瞬間、凄まじい雷か破裂音の様な音が室内にこだまし、天井が崩壊してきた。

女は上を見上げ、青年はとっさに後方に飛びずさる。

崩壊して落下する瓦礫と共に大量の水が流れてきた。

女は「ギッ」と一言だけ発し、瓦礫と大量の水に埋もれて消えた。

崩壊は天井の一部だけで済んだ様だった。

青年が唖然として立ち尽くしていると、上から寝巻き姿の若い神父が、驚愕の表情で穴を見下ろしていた。

その後アパートは、消防・警察・深夜に爆音で叩き起こされた野次馬達等で大わらわとなっていた。

調べによると、2Fの神父の教会兼自宅のバスタブと下の床が腐食しており、それが崩壊の原因だと言う。

ただ、確かに腐食はしていたが、今日の様に急に床ごとブチ破る様な腐食では無いという点に、警察消防も首を傾げていた。

さらに、神父は月に1度、聖水で入浴していた。その日、バスタブに浸っていたのは聖水だったという。

もちろん、青年は女の事など誰にも話さなかったし、瓦礫の下にも誰もいなかった。

ただ、血の混じった泥の様な物が一部見つかったという。

そして青年は不思議な事に気がついた。

部屋の至る所に散りばめていた彼女との思い出の写真立てが、全て寝室に集まっていたのだと言う。

まるでベッドを円形に囲む様に。

青年は部屋を覗き込む野次馬の中に、微笑む彼女を見た様な気がした。

つづく……

 

化け蛇・化け狐などの怪談

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 - 叔父さんシリーズ

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