【厳選】 怪談・都市伝説・怖い話まとめ

ネットで見つけた、都市伝説・怪談・ほんとにあった怖い話・世にも奇妙な物語・心霊系・不思議系・電波系・オカルト系のお話シリーズです♪

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師匠シリーズ 061話 怪物-転(4)・怪物-結-上(1)

   

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061 師匠シリーズ「怪物 『転』4」

そうして地図上の一番外側のオレンジ色を結んでいくと、そこには少しいびつな格好の『円』が現れた。

他のオレンジ色はすべてその内側にある。

想像が現実になっていくことにゾクゾクする。

次に私は、家から持って来た同級生の住所録を鞄から取り出す。

まさかと思いながらも、昨日立てた仮説に役立つかも知れないと用意したのだが、さっそく使う場面が来た。

初めて開く住所録を片手に、今日聞いた『怖い夢』を見ていたという子の家がある辺りを、ひとつひとつ蛍光ペンで塗っていく。

木曜日に見た子。金曜日に見た子。そしてまだ内容を思い出せない子。

それぞれ赤、青、緑の3つの色を使って塗り分ける。

それらの色とオレンジ色との関連性は見つけられない。

接近しているのもあれば、全く離れているものもある。オレンジの円の外側に位置しているものさえある。

けれど、赤、青、緑には、明らかに相関性があった。

赤が最も円の中心に近く、青、緑の順にそこから離れていっている。

早い時期に夢を思い出せた人ほど、円の中心に近い場所に住んでいるのだ。

ふぅ、と息をついてペンを置く。

昨日。ポルターガイスト現象についての本を読みながら、私は考えていた。

もし仮に、街中で起きた怪現象が、それぞれ個別の現象でないとしたら。

もし仮に、この怪現象の焦点となっているのが、たった一人の人間だとしたら。

もし仮に、通常、閉鎖的な家屋の中でしか影響を及ぼさないはずのポルターガイスト現象が、壁を越えて屋外までその力を及ぼしているのだとしたら。

そしてもし仮に、ポルターガイスト現象の正体が、RSPK、反復性偶発性念力による無意識の自己顕示性と暴力性の発露だとしたならば……
とんでもない力だ。そら恐ろしくなるような。

市内全域のほぼ半分をその影響下に置いてしまっているなんて。

寒気が頭の芯にまで這い上がってくる。

『エキドナを探せ』
間崎京子の声が脳裏を掠める。

怪現象を怪物になぞらえたあの女は、非常階段で話をした昨日のあの時点で、今の私と同じ推論に達していたのだろうか。

『まさかあいつが』と思ったが、住所録に載っている間崎京子の住所は市内の外れにあり、オレンジの円の外側に位置している。

違うな。あいつは違う。

なにより、『怖い夢』との整合性が取れない。

恐らく、想像に想像を、いや妄想を重ねているが、『怖い夢』を見ている主体こそがエキドナなのだろう。

彼女が見ている夢が、目に見えない霧のように夜の街に漏れ出て、それを眠っている私たちの脳のどこかがキャッチする。

そして、まるで自分のことのように悪夢としてそれが再生される。

その漏れ出る夢が急に強くなり、影響する半径を広げている。

そのタイミングは、怪現象が街に噴出し始めたのとほぼ同じだ。

私は地図に目を落とし、赤、青、緑の順に外へ広がっていく点を見つめる。

夜毎に蓄積されていく、身に覚えのない母親への憎悪。

そしてその悪意が殺意に変わったとき、一体なにが起こるのか。

母親の首筋から吹き出す鮮血の記憶。

危険だ。以前から漠然と感じていた不安などよりはるかに。

そして多分、エキドナは小さな子どもだ。ドアのチェーンを外すために背伸びをしているから。

彼女はなんらかの理由で母親を憎み、その状況を打破できないでいる。

そのストレスがポルターガイスト現象の原因となっている。

彼女?
そこまで考えて、ふと引っ掛かるものを感じた。

自然と浮かんだ三人称だったが、これはギリシャ神話に出てくる怪物エキドナが女だったからだろうか。

いや、私は“なった”から分かるんだと思う。夢の中で暗い部屋に一人で母親を待っている子どもは女の子だ。

その子は今もそこにいるのかも知れない。

『見つけたい』
そう思った。

見つけたとしても、救えるとは思わない。私もただの高校生1年生にすぎないのだから。
『でも見つけたい』
イタズラにせよ、RSPKにせよ、ポルターガイスト現象の焦点になっているティーンエイジャーたちの心の叫びは、たぶん一つだ。

『ぼくを見て』『わたしに気づいて』
そんな声にならない声が世界には満ちている。

急に悲しい気持ちが胸にあふれてきて、思わず席を立った。

教室では昼のお弁当を食べ終わったクラスメートたちが、それぞれの群れを作っておしゃべりに興じている。

誰も私を見ていない。

群れを避けるように一人でトイレに向かう。

分かっている。クラスメートたちとの間に壁を作っているのは私自身だ。

でも誰もその内側に入れたくない。一人でいる限り誰にも裏切られない。

廊下を歩く上履きの音。

後ろからついて来ているもう一つの音に振り返る。

「高野さん」

高野志穂はその呼び掛けにビクリとして立ち止まった。

同じような光景を最近見た気がする。軽いデジャヴ。

「なにか用?」

つっけんどんな口調で問うと、彼女は「いや、あ、別に」と言って口ごもってしまう。

それでも顔をスッと上げたかと思うと、「最近、少しおかしいよね」と言った。

おかしいとも。クラスの連中のように噂話がしたいんなら他を当たってくれ。

そんな意味の言葉を口にすると、彼女は手のひらをこちらに向けて振りながら言う。

「あ、そうじゃなくて。山中さんが。なんていうか、いつもはもっと、周りに興味がないっていうか。

昨日もだけど。今日も他のコに話し掛けてたし」

イラッとした。

そんなことこいつになんの関係があるんだ。

私の表情に苛立ちを読み取ったのか、高野志穂は「ゴメン」と頭を下げ、それでも意を決したような顔で続けた。

「山中さん、なにか背負い込んでるように見えるから。もし手伝えることがあったら、手伝うよ」

そう言ったあと、彼女はもう一度「ゴメン」と頭を下げて、踵を返そうとした。

その瞬間、デジャヴの正体が急に分かった。

あのときも、高野志穂は廊下で私に話し掛けてきた。

そして、『私も見たよ。怖い夢。……山中さん。ちょっと占ってくれないかな』と言った。

あれはいつだった?クラスメートが『思い出せない怖い夢』について話しているのを初めて聞いた時だ。

水曜日?いや、水曜日は学校を抜け出して石の雨の現場を見た日だ。ということはその前。火曜日だ。

私の中で微かに感じていた引っ掛かりが急に膨らんでいく。

高野志穂は占って欲しいと私に頼んだ。何を?当然夢のことだ。

そして、その時点で彼女は、私にトランプだかタロットだかで占ってもらうだけの“材料”を持っていたことになる。

「高野さん、お母さんを殺す夢を見た?」

高野志穂は驚いた顔をしたあとコクリと頷く。

「火曜日の朝が初めて?」

彼女は少し首を捻り、思い出す素振りをしたあとで口を開いた。

「月曜日」

それを聞いた瞬間、私は唾を飲んだ。

みんなより、そして私より3日も早い。私が初めて夢を覚えていたのが木曜日の朝なのだから。

「来て」と言って私は彼女の手を取り、教室に引き返した。

彼女は「え?え?」と戸惑いながらもついてくる。

教室の中に入り、私の机の中から市内の地図を取り出して広げる。

「あなたの家はどの辺?」

やけにカラフルになった地図を前にして、高野志穂は少し躊躇する様子を見せたが、私の顔を伺ってから、人差し指をそっと下ろす。

オレンジの点で出来た歪な円のほぼ中心を指している。

円は怪現象の目撃ポイントで構成されているけれど、サンプルが少なすぎるために正確な円を作れていなかった。

所詮クラスメートの噂話だけで集めた情報なのだ。

たまたま知らなかっただけの怪現象が、もし円周の外側に付近にあったとすると、それだけで円の形が変わり、その中心がズレてしまう。

中心にこそエキドナがいるはずなのに。

だがこれで、その中心の位置がほぼ判明した。

高野志穂の月曜日というのは“早すぎる”。だから彼女は中心から極めて近い地域に住んでいる。間違いない。

大雑把に引いた円周の線からもほとんど矛盾がない。

そこにあるのは、急激に『怖い夢』と怪現象が影響を拡大していく前の小さな円だ。

スッと彼女の指先の下にボールペンで丸をつけた。

エキドナはそこにいる。怪物たちの小さなマリアが。今も暗い部屋にうずくまって。

私は微笑みを浮かべようとして、それに少し失敗して、それでもなんとか笑って言葉を乗せた。

「助かった。……ありがとう」

高野志穂はよく分からないままに礼を言われたことに不思議な顔をしながらも、嬉しそうに「うん」と言った。

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062 師匠シリーズ「怪物 『結』上1」

その日の放課後、私は3年生の教室へ向かった。

ポルターガイスト現象の本を貸してくれた、先輩に会うためだ。

廊下で名前を出して聞いてみると、すぐに教室は分かった。

先輩は私の顔を見るなり、オッ、という顔をして手招きをしたが、席まで行くとすぐに両手を顔の前で合わせて謝る。

「ゴメン。今日はこれから部活なんだ」

「剣道は止めたんじゃなかったんですか」と聞くと、「文科け~い」と言って、トランペットを吹く真似をする。

吹奏楽部かなにからしい。

「一つだけ教えてください」

そう言う私に、「ま、座りなさい」と近くの席から椅子を引っ張ってくる。

その周りでは帰り支度をする生徒たちが、私を物珍しそうに横目で見ている。

多少は時間をとってくれるようなので、順序立てて聞くことにする。

「先輩の家で起こったポルターガイスト現象は、イタズラでしたか?」

先輩は目を丸くしてから笑う。

「いきなりだな。でも違うよ。私だって驚いてた。ホントに目の前で、花が宙に浮かんだりしたんだ」

「じゃあ原因はなんですか?」

「……あの本もう読んだんだ?私に聞くってことは」

頷く。

「まあ、知ってると思うけど、あたしの家って両親が仲良くないワケよ。今も別居してるし。そんで小学4年生のころって、一番バチバチやりあってた時期なのよ。家の中でも、顔あわせれば喧嘩ばっかり。子どもの目の前で酷い口論してたんだから。まるであたしがそこに居ないみたいに」

私のイメージの中で、シルエットの男と女がいがみ合っている。

そしてその傍らには10歳くらいの少女が、怯えた表情で身体を縮ませている。

「超能力だか心霊現象だか知らないけど、たぶん原因はあたしなんだろうと思う。今となっては、だけど」

「じゃあ。どうやってそれが収まったんですか」

「昨日言わなかったっけ?祈祷師が来たの。家に。

そんで、ウンジャラナンジャラ、エイヤーってやったわけよ。そしたら、変なことはほとんどなくなったな」

「祈祷師が、ポルターガイストを鎮めたんですか」

「……なんかいじわるになったね、あなた。分かってるクセに。たぶん、満足したんだと思うよ。あたしが。

『親がここまでやってくれた』って。今でも覚えてるもん。

両親が二人とも、祈祷師の後ろで、必死になって手を合わせて拝んでんの。

それで、お祈りが終わった後にあたしの頭を抱いて、『これで大丈夫だ』って二人して言うの。

それであたしもなんだかホッとして、ああこれで大丈夫なんだ、って思った。

最初は二人ともラップ音とか、お皿が割れたりしたこととか、なんでもないことみたいに無視してたのよ。

気味が悪いもんだから、気のせいだ、見てない、聞いてないってね。

それをきっとそのころのあたしは、自分を無視されたみたいに感じてたのね。

だから余計に酷くなっていったんだと思う」

結局、思春期の子どもが起こすイタズラと同じなのだ、と私は思った。

自分を見て欲しくて、構って欲しくて、とんでもないことをしでかすのだ。

それで怒られることが分かっていながら、しないではいられない。

それはアイデンティティの芽生えと、深く関係している部分だからなのだろう。

自分が自分であるために、身近な他者の視線が必要なのだ。

「どうしてこんなことが気になるの」

先輩の目が私の目に向いている。

先輩もこの街を騒がせている怪現象の噂くらい聞いているだろう。

それが、たった一人の人間が焦点となっているポルターガイスト現象なのだと聞かされたら、笑うだろうか。

私はそれに答えないまま、別のことを言った。

「先輩が見たっていう怖い夢は、もしかしてお母さんを殺す夢ですか」

空気が変わった。おっとりとして優しげだった目元が険しくなる。

「どうして知ってるの」

その迫力に呑まれそうになりながら、私は言葉を繋ぐ。

「先輩が言っていた、『ありえない夢』って、別居していていないはずのお母さんを、家の玄関で刺し殺す夢だったんでしょう」

ガタン、と椅子が鳴って先輩が立ち上がる。

「あなた、占いが好きとか言ってたわね。そんなこと、勝手に占ったの?」

しまった。怒らせた。

ポルターガイスト現象の焦点となったことのある人間に、あの夢はどう映ったのか。

それを聞いてみたかっただけなのだ。そこになにかヒントが隠されていると思って。

けれど先輩は私の言葉を完全に誤解し、修正が効きそうにない雰囲気だ。

いや、誤解ではないのだろう。他人に触れられたくない部分を、土足で踏みにじったのは事実なのだから。

「ごめんなさい」

私は深々と頭を下げる。

「もういいでしょう。部活、行くから」

先輩のその言葉に、私は引き下がらざるを得なかった。

知らない人ばかりの3年生の教室の廊下を俯いて帰る。足が重い。『今度、ちゃんと謝らなきゃ』と思う。

そういえば、占いなんて暫くしていないことに気がつく。

間崎京子はどうやって真相に近づいたのだろう。またタロット占いでもしたのだろうか?
それとも、私のように目と耳を使って情報を集め、推理を重ねていったのか。

5時間目の休み時間に教室を覗いてみたが、あいつは席にいなかった。

朝、廊下ですれ違ったので、多分また早退だろう。

そういえばすれ違い様に、『母親を殺す夢を見たか』と問い掛けたとき、あいつは『見てない』と言った。

遅刻しそうだったので去っていく後姿を引き止めはしなかったが、あれは本当だったのだろうか。

確かにあいつの家は、地図上のオレンジの円の端の方にあり、まだ見た夢を思い出せない人たちを表す、緑色の点が存在するエリアの中なのではあったが、この不思議な現象が、単に距離によるアンテナの精度だけに依存している訳ではないのは明らかだ。

1年生のフロアに戻った私は、まだ帰宅せず残っている他のクラスの生徒たちから出来るだけの情報を得る。

そして地図を蛍光ペンで埋めていった。

やはりだ。

赤、青、緑という夢に関する3つの色は、バームクーヘンのようにはっきりエリアで別れているけれど、中にはオレンジの円の外周にあたる緑のエリアの中にぽつりと青い点があったり、青のエリアに赤い点があったりしている。

そういう子に追加取材を試みると、いずれも霊的な体験をよくするという言質が取れた。
この私自身、木曜日に初めて見た夢を覚えていたのに、住んでいる家は、金曜日を表す青い点のある半径エリアにあるのだ。

おそらく直感だか、霊感だかのイレギュラー的な個人の能力もここには影響している。

それを踏まえて考える。あの間崎京子が、まだ夢を思い出せない緑の点のひとつなどで収まっているものだろうか。

分からない。あの女独特の“得体の知れない感じ”のバックボーンがなんなのか、私にはまだ分からないのだから。

廊下や教室に人影もまばらになったころ、私はようやく蛍光ペンを置いた。

結局、高野志穂の他に、木曜日以前から夢を覚えていた人はいなかった。

高野志穂の家の近所に住んでいる子は居たが、その子は怖い夢を見ていることさえ気づいていなかった。

まあ、いい。出来る限りの精度は上げた。

地図に落とされたボールペンの丸をもう一度見つめる。

急ごう。

地図を鞄に仕舞い、私は校舎を後にする。

早足で歩き、一度家に帰って自転車を手に入れる。

サドルに跨りながら空を見上げると、まだ陽は落ちていなかった。

さあ、行こう。そう呟いてペダルを漕ぎ出す。

途中、思いついて公衆電話に寄ろうとした。

しかし、ちょうど通り道にあった公衆電話は、例の『お化けの電話』だ。

なんとなく嫌だったので、少し遠回りして別の公衆電話へ向かう。

ほどなくして電話ボックスにたどり着き、自転車を脇に止めて、中に入って受話器を上げる。

テレホンカードを入れて、覚えている番号をプッシュする。

コール音が数回鳴ってから相手が出た。いないだろうと思って、留守番電話に入れるつもりだったのに。

仕方がないので、忙しいから今日は会えないということを伝える。

案の定、ケンカになった。

毎週金曜日に会う約束をしていたのに、これで2週連続私からドタキャンしてしまった。
だからと言って、別に浮気をしているワケではない。止むに止まれぬ事情があるのだから。

逆に私へのあてつけのように、今夜は女を買うなどと口にしたことの方がよほど許せない。

「死ね」と言って電話を切った。

電話ボックスを出たときは、頭に血が上り冷静さを欠いていたが、しばらく自転車を漕いでいると、次第に我に返ってくる。

いけない。方向が違う。

自転車のカゴから地図を取り出して確認する。この辺りはまだ青のエリアだ。ハンドルを切って方向を修正した。

立ち漕ぎで先を急ぐ。

景色がヒュンヒュンと過ぎ去っていく。

その中へ溶けていくように、涙がひと筋だけ流れて消えていった。

ホントに、私はなにをやっているのだろう。

駄目だ。このところ心と身体のバランスを崩している。

ちょっとしたことで落ち込んだり、悩んだり。

今もこんな訳の分からないことで、いつの間にか必死になっている。

いったい私はどうしてしまったのか。

『あなた、ちょっと変わったね』と、昨日の夜先輩は言った。

高校に入ってから、私は変わり始めてしまったらしい。何故なのだろう。

剣道部を続けていた方が良かったかも知れない。

そう思いながら自転車を漕ぎ続ける。

気がつくと、私は赤のエリアに入っていた。そしてその最深部までは目と鼻の先だった。
ただのありふれた住宅街だ。今はなんの不吉な印象も受けない。

なのに緊張してしまうのは、頭で考えてしまうからなのだろう。

三差路の角を曲がったとき、私は心臓が止まるほど驚いた。

コンクリート塀に、電信柱が無造作に立てかけられている。

元あったと思しき場所には穴が開いていて、そこからまるで力任せに引き抜かれたかのような痕跡が、地面のひび割れとなって現れていた。

電線の角度が変わって、片方はピンと張り、もう片方はたわんでブラブラと揺れている。
(了)

 

土佐の祭りと呪詛 [ 福島義之 ]

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