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秘密の友達【四つ年上の姉シリーズ①】1421

   

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四つ上の姉にまつわる話だ。

これから書き記す話は、姉の人生のほとんどを占めた『縁』あるいは『呪い』と呼ぶべきものと、自分でもその力の正体がなんであるのか決めかねながらも姉が、自分に襲いかかった理不尽な現象に最後まで抗った、その証のようなものだ。

大元がようやく終わりを向かえた今となっては、ただの回顧録といってもいい。

姉にまつわる因縁と、姉を取り巻いていた環境がなんであったのか、未だに俺には想像がつかない。

俺は大概においてかやの外で、いずれ行き着く先があの結果だとしても、自分に何かができたとは思えない。

今日はそれらの『はじまりの日』の話を書きたいと思う。

厳密に言えば、それは連綿と受け継がれてきた血にまつわる話であるから、『始まり』とするのは正しくないのだろう。

きっとずっと大昔から、それは受け継がれてきたのだ。

姉にとっては逃れられないもので、俺にはほぼ無関係だったという、血を分けた姉弟でありながらなんとも釈然としない「呪縛」。

だが、姉にとっての『始まり』はきっとその日だったのだと思う。

姉から教えてもらう霊感0の俺が言っても、あまり信憑性は無いだろうけど。

俺達一家は、元は父方の本家があるS市に住んでいた。

姉が小学校一年の一学期半ば、理由もわからず母方の地へ移るまで、俺達は確かにその場所で生活していた。

父は婿入りした身だが、母の実家には入らず、自分の親元の近くに住居を構えていたそうだ。

姉がまだ保育園に通っていた頃だから、俺なんか幼児もいいところだ。よって、この辺の記憶も当然ながら俺には無い。

小さいながらも一戸建ての家。家の前には道路へと続く舗装されていない砂利道。

母はその頃はパートで稼いでいたらしい。

父は自営業のため、店舗を兼ねる家にいつもいたそうだ。

その頃姉には、大親友と呼べる友達が三人いた。

友達はたくさんいたが、その中でもとびきりの親友達。

なっちゃんは元気はつらつな女の子。肩より少し長い髪をいつも二つ結いにしていた。

まさと君は保育園で女子からモテモテのかっこいい系な男の子。

慎重な性格だが、姉とは気が合って、男女関係無い友情を育んでいたそうだ。

慎重な割に冒険が好きだという辺りが、同類だったのかもしれない。

まーくんは男の子だが少し気が弱くて、よく泣かされていたそうだ。

それでも、だれより優しい性格で、みんながみんな、それぞれのいいところを子供心に尊敬しあったような良好な関係だったそうだ。

姉はその頃から不思議なものが見えていたが、みんなにも普通に見えていると思っていたらしく、日常生活でお化けの話なんかは特にしなかったそうだ。

幽霊と人間の区別がついていなかったというのだからすごい。

明らかに怪我をして、生きていないのは『お化け』と理解していたが、案外普通の外見の『生きている人間』以外はありふれていて、姉にとっては至極当然の世界だったから、怖くもなんともなかったんだそうだ。

遊ぶときは家が近いせいもあって、大体この四人で集まって遊んでいた。

母がいつもパートに忙しく、あまり一緒にいれないことだけが寂しかったそうだ。

父はあまり子供をかまう人間ではなく、よくよくタバコも吸っていたから、喘息持ちの姉は側にいると咳き込んでしまうので、毎日、日が暮れるまで外で遊んでいたそうだ。

保育園にも夏休みというものは存在するらしい。

姉が通っていた保育園が特殊だったのか、普通のことなのか、俺にはわからない。

そう長い間ではないが、保育園側の事情で夏の半ばから秋の頭にかけて二三週間の休みがある保育園だった。

ともかく、その夏休みの間、子供達は親戚の内に預けられたり、それぞれの家庭で過ごしたりと、一時的に会えない状態に陥るのだった。

年少組から年長組になるにつれて、友達に会えない寂しさは増したそうだ。

しょうがないから、姉はそんな時、一人で近隣を探検してまわっていたそうだ。

子供しか通れない細い通路、公園巡り、道路にチョークで落書き。

たわいもない事をして、時間をつぶしていた。

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そんなある日、どうしようもなく寂しくなって、姉は母のいるスーパーへ行くことにした。

場所は知っている。

ちゃんと道路を歩けば遠いが、秘密の通路を通って草っ原をつっきると、母の職場は案外近いのだった。

まあ、パートに子育てに、仕事から帰ったら家事をする身では、職場が遠いことは不都合だったのだろう。

その草っ原は大親友達と見つけた秘密の遊び場で、誰にも邪魔されずに虫をとったり、かくれんぼをしたり、追いかけっこをしたりと、普段からよく知る場所だったそうだ。

その草っ原を越えて、母のいるスーパーへ向かおうとして、その日姉は奇妙なことに気がついた。

おんぼろとまではいかないが、かなり年期の入った感じの二階建ての木造小屋を見つけたのだ。

戸板は風雨に曝されたことを物語るような灰色で、人の気配も全く無し。

何より、あれだけ遊び回って知らない場所など無いと思っていたのに、突如小屋を見つけてしまったのだ。

寂しさよりも『探検』への好奇心が勝った。

姉は「ごめんください。誰かいますかー?」と一階の入り口から声をかけ、返答が無いことを確認すると、小屋の中へと足を進めた。

電気は当然通っていない。窓から差し込むかすかな光が、その建物のわずかな光源だった。

一階はだだっぴろく、物もあまりないため、すぐに探索は終了。

次に階段を昇って二階へ入り、姉は足下に太陽の光を受けて転がる小さな粒を見つけた。

紫色のその米粒大のものは、当時『香り玉』と言って子供達のあいだではやっていたものだそうだ。

色のバリエーションが色々あり、赤ならイチゴの香りなど、文字通り香りのついた粒が小さな小瓶入れられ売られていたそうだ。

人気があって、すぐに売り切れるようなものだったらしい。

子供にとっては宝物が落ちていたようだものだ。

一階に比べてずいぶん天井の低い二階だったそうだ。

その床に、転々と紫色の粒が落ちている。

面白くなって次々と広い集めた。紫は珍しい色だった。

『香り玉』の中でも特に人気があって、花の香りがするのだ。

大親友達とまた会える日になったら、此処へみんなで探検に来ようと、姉はわくわくした気持ちでいっぱいだった。

「楽しい?」

不意に、背後から女の人が声をかけてきた。

子供のようにしゃがんで、にこにこと姉の様子を眺めていたそうだ。

とっさに、『この小屋の持ち主の人だ、勝手に入って怒られる!』と思い、即座に「ごめんなさい!!」と姉は謝ったそうだ。

女性は一瞬きょとんとすると、くすくすと笑い出した。

「いいのよ、あなたがあんまり楽しそうだから、見てる私も楽しくなっちゃって。
でも、夕暮れが近いわよ、お家に帰らなくちゃ暗くなっちゃうわ」

女性に手を引かれて一階に降りると、確かに夕日が差し込んでいた。

さっきまで昼だと思っていたのに、よほど熱中していたようだと、恥ずかしくなったそうだ。

立ち上がった女性はうす水色のワンピースに白い帽子をかぶった、とても綺麗な人だったそうだ。

「あの、ここの人ですか?」

「そうよ。持ち主ね」

「また遊びにきてもいいですか?今、友達みんなお家にいて、保育園も休みで……」

「こんなほったて小屋、一人で入って怖くなかったの?」

「探検が大好きなんです」

そこで、女性はまたふふと、と上品に笑った。

あまり見たことの無い、テレビに出てくる女優さんのような人だなと思ったそうだ。

「そうね、じゃあ、秘密の友達になってくれたら、いつでも来ていいわ」

「秘密の友達?」

「内緒の方が楽しいことってあるでしょ?ここで会うだけの、ここだけの友達。名前も内緒」

不思議なことをいうお姉さんだなと思ったが、相手のいう事に納得して、そうして姉に『秘密の友達』ができた。

お姉さんは色々なことを知っていて、昔話なんかにも詳しかった。

姉は童話や民話を読むのが大好きだったから、あっと言う間に寂しさも忘れて夢中で通った。

紫の香り玉は少しずつ増えていった。

保育園の再開まであと一週間となり、今度はここに来れなくなるのが寂しいと、姉はお姉さんに相談した。

するとお姉さんも寂しそうに切り出した。

「あのね、残念だけど今日でお別れなの」

「久々にとても楽しかった。でも私に会えるのも、ここに来れるのも今日でお終い」

「もう誰にも会えないで、ただ終わっていくんだと思っていたから、あなたが友達になってくれてとても嬉しかった」

ようやく、その時姉は気づいたそうだ。

あぁ、この人は『人間』じゃなかったんだ、と。

「私の大事な最後の秘密の友達。少しのことしか教えてあげれないけど、あなたが私の元に通ってくれたから、一番大事なことだけ教えてあげれる」

「赤い鬼に気を許しては駄目。関わることは避けられない。あなたは人よりもずっと怖い目に遭うわ。けれど、その時は力を貸してくれそうなモノ達に話しかけ、仲良くなって助けてもらいなさい。私と仲良くしてくれたように」

「赤い鬼に殺されては駄目よ。赤い鬼と同じモノになっても駄目。あなたは、あなたのままでいなさい。それがどんな結果になったとしても」

お姉さんの手は、人間の手と同じように温かかった。

手を引かれて、小屋の外に出る。小屋はもう、跡形も無く消えていた。

「さよなら、ゆきちゃん」

夕暮れに解けるようにして、そのお姉さんは消えた。

もう会えないことを理解して、お姉さんの事を絶対に忘れないと決めた。

一緒に遊んだ時間も、声も、握った手の柔らかさも、綺麗な顔も、最後の忠告も。

お姉さんが何者だったのか、それは今でもわからないそうだ。

土地神だったのか、妖怪だったのか、幽霊だったのか。

次の日、草っ原に行ったが、どこまでも青々と茂った草原が続くだけだった。

誰に訊ねても、そんな小屋はあったことは無いという答えしか返ってこなかった。

残ったのは一緒に集めた香り玉だけ。それだけが彼女が存在していた証拠だった。

秘密にしていた名前を知っていたお姉さん。彼女は何者だったのか。

彼女が告げた『赤い鬼』はその後しばらくして、思いがけない形で、姉の前に現れることになる。

雪の降る日、初めて現れた二匹の小さな赤い鬼は父の後ろで嗤っていた。

父も嗤っていたそうだ。

姉が初めて恐怖らしい恐怖を覚えたのが、その日になる。

これはまた、次の話で……

投稿者「とうま ◆xnLOzMnQ」2014/04/08

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