【厳選】 怪談・都市伝説・怖い話まとめ

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産婆の闇

      2017/07/29

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私の母方の祖母は、以前産婆をしていました。

357:赤:2006/03/12(日) 17:33:18 ID:ahP/vv9j0
以前といってもかなり昔で、今から五十年前、昭和三十年代はじめくらいになると思います。

どんな子も小さい時は、まるで天使のようにかわいいもんだといって、幼い私によく話をしてくれました。

とても楽しかった。

熱いお湯、清潔なシーツと毛布の用意を忘れないこと、赤ちゃんが生まれたときの感動、お母さんの泣いて喜ぶ姿。

そういう場に居合わせられる事が、産婆をしていて本当に幸せだということ。

幼い私に聞かせるので当然の事なのですが、祖母は産婆という仕事の明るい部分だけを、おもしろ可笑しく聞かせてくれました。

そんな祖母も、一年半前に亡くなりました。

最近になって、祖母の思い出話を笑って出来るようになった母に、

「そういえばおばあちゃん、よく産婆の話をしてくれたよね」

と私が言ったところ、この仕事の暗い部分について母から聞くこととなりました。

そのお話をしたいと思います。

 

これは私の母が、今から十年くらい前に、直接祖母から聞いた話です。

その日も祖母は、今にも生まれそうな産婦の家へ行って、朝から出産の手伝いをしていました。

この産婦さんは、出産の時だというのに風邪をこじらせており、周りの人はとても心配していました。

祖母の他には大類さんという、当時三十五歳の産婆さんも手伝いに来ていて、

「家が近いし何かと人手もいるでしょ」

と、親切な人でした。

大類さんとは何度か一緒に仕事をしたことがあったので、とても心強かったようです。

産婦のご家族や近所の人も、今か今かと待っていたのですが、昼になっても夜になってもなかなか生まれません。

そこで、みんな一旦落ち着こうということになりました。

祖母と大類さんは相談し、

「夜は私たち産婆が近くについて、代わり交代に眠るようにします。任せてください」

と、ご家族に話しました。

産婦の母親は、「私もそばに」と言ったらしいのですが、祖母と大類さんは、

「気疲れしていらっしゃるでしょうから、それにその時はすぐ起こします……」

ということで、了解を得たそうです。

二時間ずつの交代で、祖母が大類さんから番を受け、また二時間経ち、今度は祖母が大類さんに番を預けて、そしてまた二時間経ち……を何度か繰り返しました。

祖母は、風邪の熱が夜中にあがるかもなぁと心配していましたが、思ったほどあがらなかったので、このまま無事に乗り切れーと祈っていたんだそうです。

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祖母は、産婦さんの苦しい陣痛の声で目が覚めました。

ぱっと見ると、既に大類さんは真剣に分娩の手助けをしていました。

祖母は何となく違和感を感じながら、急いで取り上げの手伝いに加わりました。

物音に気づき、産婦の母親が起こしに行く前にとんできました。

その村では、母親以外の家族は分娩する部屋に入らない、という暗黙の了解みたいなものがあったという。

他の家族は、別の部屋でひたすら待っている。

母親は娘の手を握っていました。

そして大類さんが赤ん坊を取り上げ、どうにか無事生まれました。

産婦さんも意識がはっきりしていたので、産婦の母親と私の祖母がホッとしていると、大類さんが言うのです。

「この子、目ん玉が無いわ……」

祖母は、頭半分母親から出てきた時の赤ん坊の顔を、確かに見たといいます。

顔、指の本数などは、取り上げた産婆が必ず確認する事なので、今回確認するのは大類さんだったのですが、祖母はついいつもの癖で、確認したんだそうです。

確かに目は開いていなかったが、下にはちゃんと眼球のもり上がりを確認していた、と。

赤ん坊の母親は半狂乱になって、うつ症状に陥ったが、何年後かに見た時は、可愛がってその子を育てていたと聞きました。

祖母は「ずっと言い出せなかった」と、私の母に打ち明けました。

「万が一自分の見間違いだったらどうしよう」と。

しかし今でも、

「大類さんがあの赤ん坊の目を、故意に潰したのではないかと、疑わずにはいられない」

と母に言ったそうです。

あの時、祖母が産婦さんの陣痛の声でぱっと目が覚めたときの違和感は、後に冷静になって考えると、

「大類さんはなぜ私に一言、『起きて』と声をかけてくれなかったのか」

ということだった。

大類さんが一方的に、その産婦さんに何か恨みを持っていたのではないか。

それとも、祖母の思い違いで、その子は本当に障碍児として生まれてきたのか。

今となっては何も分からないそうです。

(了)

 


文芸怪談実話/東雅夫/遠藤周作

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