【厳選】 怪談・都市伝説・怖い話まとめ

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レンゲ畑のお姉さん

      2017/07/27

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rengeoneisan

父方の実家での昔の話。

俺がまだ5歳の時のことで、その頃はなんでそういうことが起きたかわからなかったが、いま考えると、その訳が分かるような気がする話。

父方の郷里は和歌山県。

内陸の方で海は無かったが、周囲は田んぼが多く、春になるとレンゲの花が咲き乱れる、素晴らしい所だった。

父の夏休みを利用して、父も久方ぶりに帰郷したのだと思う。

息子に故郷を見せてあげたかったんだろう。

折しも季節は春で、レンゲ草が田んぼ一面に広がっていた。

写真もあるが、ここでの記憶はいまでもありありと心に再現出来るぐらい、幼心にとって天国のような記憶だった。

ただ一つだけ、当時は納得いかなかったことを除いては……

一面のレンゲ畑で、父方の伯父と叔母、従姉妹と4人で、夢中で花を摘んだ。

従姉妹は手先が器用だったので、花輪を作ってくれたり腕輪を作ってくれたりと、2人で大はしゃぎだった。

その内、俺は広いレンゲ畑を真ん中の方まで、花を摘み摘み歩き回っていた。

レンゲの花の蜜は甘いことも知った。

遠くに伯父叔母、従姉妹が見える場所まで来て、流石にちょっと遠くまで来てしまった。

と思った俺は、戻ろうと両手一杯のレンゲ草を抱えて、元来た道を引き返していこうとした。

ふと背後に目をやると、そこにさっきまでは居なかった筈の人が居た。

詳細までは覚えていないが、青のワンピースを着た女性だった。

「ボク?その花お姉さんにくれるかな?」

そう問いかけられた。

俺は両手一杯のレンゲのうち、半分だけその女性にあげたと記憶している。

やはりこれだけ摘んだのだから、全部は惜しかったのだろう。

女性は「ありがとう。ボクは一人かな?」と俺に尋ねた。

首を縦に振って、一人だということをアピール。

正直な話、お姉さんが奇麗だったので、ませガキの俺は、その頃からこんな調子だった。

お姉さんは俺がどこから来たのか、とかいくつだ、とかいろいろな事を質問した。

お姉さんも手先が器用で、花輪とかネックレスだとかを作ってくれた。

少し奇妙だったのは、お姉さんの匂いが、土のような湿った匂いがしていたこと。

子供心に変だと思った。

「あっちへ行こうか?」

お姉さんは田んぼの真ん中にある、ちょっとした木立を指差して俺を促した。

もちろん、俺はウェルカムだった。

お姉さんは俺の手をぐいと掴んで、さっきとは違う力を込めた感じで俺の手を引いて行った。

お姉さんの豹変ぶりに、俺は驚いたんだろう。

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その手を振りほどこうと、手を上下に振った。

しかし、俺を引っ張る力はますます強くなり、ずんずんと田んぼの木立に向かってお姉さんは進もうとする。

「おじさんにきいてからにするからはなして」

と、俺はお願いをした。

お姉さんは最初は聞いてくれなかったが、何回か訴えるとしぶしぶ手を離し、俺を解放してくれた。

俺は伯父さんのいる土手へと走って行った。

レンゲを蹴散らし、少し怖かったので急いで走って行った。

伯父さん叔母さんに、いまあった事の顛末を子供言葉で話すと、伯父叔母は「家に戻ろう」と言った。

俺と従姉妹は遊び足りないので最初はぐずったが、伯父叔母の様子が真剣なので仕方なく家へ戻った。

伯父は従姉妹にプリンを与え、俺の手を引いてまた外に出た。

叔父と一緒に田んぼのあぜ道を歩いた。

そういえば、お姉さんは見当たらなかった。どこにいったんだろう?

そう思いながら、伯父に手を引かれるままにあぜ道を歩いた。

向かう先は、さっきの木立だった。

木立の正体は墓地だった。

田舎によくある二~三の墓地が固まっているような、そんな感じの墓地だった。

伯父はどこから出したのか線香に火をつけ、墓に供えて手を合わせた。

俺も一緒になって手を合わせた。

見ると、墓の周りはレンゲで一杯だった。

ひときわ大きなレンゲの塊と花輪が、地面に半分埋まっていた。

「一雄、あのお姉さんは人じゃねんだ。お化けだ。お前、連れてかれるとこだったんだぞ」

伯父はそう俺に話すと、

「レンゲ遊びはもう今日はやめだ。家でおいしいご飯を食べよう」

と、また元来たあぜ道を、俺の手を引いて家へ帰って行った。

「お化けだったの?あのお姉さん?」

と道すがら伯父に聞いたが、伯父は煙草を呑みながら、何も答えてくれなかった。

その日の晩ご飯は、父も驚くぐらい御馳走だった。

夢中でたくさん食べて、腹一杯で寝た。

多分いま思うに、御馳走でその日の事を忘れさせようとしたんだと思う。

夢の中に、あのお姉さんが出てきた。

ひどく残念そうな顔のお姉さんは、「またね」と夢の中で俺に話しかけてきた。

次の日は、レンゲ遊びはしなかった。

代わりに、伯父が海へ連れて行ってくれた。

死ぬほど洒落恐じゃないかもしれないけど、不思議で、いま思うとちょっと物悲しい子供の時の思い出話でした。

結局それ以降、レンゲ畑で遊んだ事は無かったです。

いまではマンションが建って、レンゲ畑は見る影も無いそうですが、お墓はまだあるという事です。

(了)

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