【厳選】 怪談・都市伝説・怖い話まとめ

ネットで見つけた、都市伝説・怪談・ほんとにあった怖い話・世にも奇妙な物語・心霊系・不思議系・電波系・オカルト系のお話シリーズです♪

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【沙耶ちゃんシリーズ】05 霊障1/3

      2015/07/08

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初めに断っておきます。俺の書く話は、筋は実話だけど設定はデフォルメしてある。
特にこの章はかなり狂わせてあるんで、似通った現場があったとしても別物。
だから、近場の人は気にせんでください。

沙耶ちゃんの大学生活もあと1年を切った初夏のことだ。
ゴボウのようにどす黒い顔とやせ細った親父の面倒を看ていたとき、彼女から電話があった。
『火傷ってすごく痛いんですね』
はあ???
他愛のない話だった。
今朝、独り暮らしの沙耶ちゃんが朝飯を作ろうとしたときに、蒸気で指を痛めたらしい。
むしろ『火傷って初めてしました』って彼女の言葉のほうが、俺にはビックリだったよw

火傷の痛みがわかったので、供養に行きたいところがある。車を出してほしい。彼女はそう言った。
付き合いが長いんで、意味はすぐにわかる。火傷が元で死んだ誰かの、残留したエネルギーを慰めたいんだな。

親父の所にいることを告げると、『わかってます』と言われた。
そして、『私もそのうちに、ご挨拶に伺っていいですか?』と付け足してくる。
二つ返事したのは言うまでもない。

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親父の病室に戻ると、「お前もそういう歳になったか」と笑われた。
「孫の顔までは待ってられんが、結婚式ぐらいなら行ってやるぞ」とも。
一瞬、沙耶ちゃんが生霊でも飛ばして、挨拶に来たのかと思ったよ。
ま、電話の相手が女だと悟った親父の、冗談だったと今では思ってるけどね。

自宅アパートに戻った翌日、休日だったこともあって、さっそく沙耶ちゃんを乗せて早朝に出発した。
今回の目的地は、片道4時間はかかる山中のトンネル。
途中でメシ食ったり観光したりと、ちょっとしたデート気分を味わえたww

沙耶ちゃんがそのトンネルを知ったのは、中学生のときらしい。
親父さんが主幹線と間違えて入った旧道の途中に、ぽっかりと孤独に口を開けていたそうだ。
「まだトンネルが見える前から、高い叫び声がずっと聞こえてたの……
『いいいいいいいいいいい』って感じで、すごく険のある声」
沙耶ちゃんの透明感のある高音で真似されてもピンと来なかったが。
「見たくなくて、トンネルの中はうつむいてたんだけど、声だけは聞こえるでしょ……あのね……」
そこで言葉を切って、「あ、ごめんね。今から行くとこなのに、こんな話したら気味悪いよね?」と俺に確認。
「何をいまさら」と笑って返した。
安心したように彼女は続ける。
「トンネルの中には、男の人がいたみたい。んと……たぶん、まことさんよりも若い人。
その人がトンネル中を走り回りながら、『熱い熱いっ』って叫んでるの……怖かったあ」
そんな場所になぜ自分から行くかなあ。
沙耶ちゃんに『浄霊行脚』の供を頼まれるようになってから、ずっと持っていた疑問は最近解けつつある。
彼女は『正しく使う』ことで、自分の能力を肯定したいんだ。きっと。

予備知識を避けるために沙耶ちゃんには言わなかったが、そのトンネルでは確かに焼身遺体が見つかっていた。
若年者同士の抗争で負けたグループの1人が、灯油をかけられて火達磨になってる。
換算すると、事件は沙耶ちゃんがトンネルを通った2,3年前ということになる。
霊も新しい(?)ほうが活性化しているっていうのが、俺の思い込み。
だから今回、10年以上経った古い霊体への対面は、期待ハズレかもしれないな。

夜に近いほうが視やすいだろうとゆっくり来たが、午後3時には問題のトンネルに着いてしまった。
「出直そうか?」と沙耶ちゃんに問うと、「えー。夜なんか怖いからイヤですよお」と文句を言われた。
何しに来たんだよ、まったく(笑)。
左を下に激しく傾いている道路。
その上に垂直に立っているトンネルは入り口がいびつで、確かに不安定な感覚を覚える。
地元では心霊スポットとして有名なようだが、こういう三半規管を狂わす作りも関係しているのかもしれないな。

車を路肩に止めると、沙耶ちゃんは躊躇なく助手席から降り立った。
トンネルを囲む木々をぐるりと見回し、耳に軽く手を当てる。
「まだいるみたい」
振り返った彼女の瞳は真っ黒だった。
沙耶ちゃんの後ろについて、俺もトンネル内に足を入れた。
一応車道だ。集中してる沙耶ちゃんが轢かれないように、注意していてやらないと。

沙耶ちゃんは重い闇とかすかな西日の留まる坑内をどんどん進み、
中央部の巨大な落書きがされている左の壁に対面して止まった。
しゃがみこみ、歳月を思わせる黒ずんだ壁に指を這わせる。
何も感じない俺はせめて邪魔にならないように、彼女から5mぐらい離れて背を向けた。
持参した水筒の水を供えている音がする。
数日前、『火傷ってどうしたら治るんですか~?』と泣きそうな声で電話してきた沙耶ちゃんの様子を想像して、
つい口元がほころんだ。

俺は霊を視る力はまったくないが、五感は少しだけ優れている。
だから、真後ろに突然現れた音が、人の駆け寄る音だっていうのもすぐにわかった。
半瞬遅れて沙耶ちゃんの悲鳴が上がる。
振り返ると、赤黒く爛れた頭頂部が見えた。そいつは俺の背中から俺の中に進入してきた。
ものっすごい痛みが背中から心臓を刺し、俺は意識を持っていかれた。
背骨の折れる激痛と心臓が弾け飛ぶショックの断続に、死んだほうがましだと本気で思ったね。
意識は覚醒と撃沈を繰り返している。
のた打ち回るうちに、今度は別の不快感が顔面に競り上がってきた。
熱い。頭を炎が覆ってる。耳や目や口から入り込んで脳を焼いてる。
沙耶ちゃんの声が聞こえた。言ってることはわからなかった。
でも『起きろ』と言われた気がしたんだ。
強引に上半身を起こすと、すでに炭化していた俺の頭が地面に落ちた。
……死んだのかな、俺。もう熱くも痛くもない。
「出てってください!」
沙耶ちゃんが嗚咽交じりに叫んだ。
聞こえるってことは……まだ、俺、生きてる……の……か……?
目を開けると、頬の下にアスファルトの冷えた感触があった。
頭が落ちたと思ったのは、全身が倒れたってことか。
首だけ巡らせて振り返ると、沙耶ちゃんが俺の体から人型の炎の塊を引き抜こうとしていた。
火は沙耶ちゃんの両腕にも巻きつき、焦げた肉のにおいを誘っている。
沙耶ちゃんは目をきつく閉じて、この現象に惑わされないようにしているようだった。
焼死した霊は怒りの色なのか、全身を真っ赤に染めて抵抗している。
「もういいから手を離せっ!」
俺はかなりヤケクソで沙耶ちゃんに怒鳴った。沙耶ちゃんは反射的に目を開いた。
そして……燃えてる自分の腕を見たんだろうね。凍りついた表情で崩れ落ちた。

死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね

けたたましい呪詛の声がトンネル内に響く。炎は大きくフラッシュしたあと霧散した。

沙耶ちゃんが助手席で目を覚ましたとき、車はトンネルのある峠を抜けて街へ向かっていた。
「腹減らない?早いけど晩飯にしようか」
俺はあえてさっきのことには触れなかった。実際、エネルギーを消耗してものすごく空腹だったし。
「……おなか空いてます」
沙耶ちゃんも同意した。

市街地に入って一番のファミレスに入り、席を確保すると、緊張の糸がやっと解けた。
俺たちは意味不明に笑いあい、ため息をついた。
「あれが霊障ってヤツかあ……あんまりにも直接的だったんで驚いたよ」
「私も初めてです」
短く答えた沙耶ちゃんは、急に俺の隣りに位置を移してきた。
「今まで言えずに来たんですけど、やっぱり、まことさんには伝えておいたほうがいいと思う」
俺の左腕にまきつき、真剣に見上げる沙耶ちゃんの視線を、正直どう受け止めたらいいのかわからない。
ついヘラッと、「どんな告白でも歓迎だよ」といなしてしまった。
「それじゃあ」と彼女は話を続ける。
「生きてる人間は、全員って言っていいほど、密かに守ってくれる存在がいるものなの」
「うん。守護霊ってヤツだろ?」
別に目新しい情報でもない。
「そう」
沙耶ちゃんの瞳は微妙に暗褐色を帯びてきた。
「でも、ごくごくたまに、誰も憑いてくれていない人がいるの。それがまことさんと私なの」
なんとなく反論したくなった。
「でも、別に困ってない」
ガキだ、俺……

真面目に聞くと、沙耶ちゃんの話は大いに理解できた。
憎まれっ子世にはばかる、って諺があるだろ。
現実に他人に憎まれてるのに、なぜか本人はその自覚がなく、
のうのうと世の中のいい位置を確保している、なんて例はたくさんある。
やつらがそこまで鈍くいられる理由、それが『守護霊の数(もしくは強さ)』なのだそうだ。
守護霊は憑いている人間を無条件で盛り上げる。
自分の宿り木である主が迷ったり悩んだりしては、自分たちの存続も危うくなるからだ。
守護霊に盛り立ててもらっている人間は、そこそこの努力で勝ち上がっていく。
逆に守護霊の力の弱い人間は、勝ち上がるために自分自身を高めていかなければならない。
途中で挫折することも多い。
俺たちが家族に恵まれなかったのは、(沙耶ちゃんに関しては後日説明する)
この法則で見れば当たり前のことだったんだ。

「守護霊というのは、本体の人がトラブルに見舞われたときに、ダメージを軽くしてくれるオブラートの役をするの」
「なるほど。じゃああの焼死した霊は、俺たち以外を襲ったら、あそこまでやりたい放題できなかったわけか(笑)」
「うん……」
沙耶ちゃんはうつむきながら、少し微笑んだようだった。
「だから私は普通の人みたいに、霊になんか惑わされない生活をするために、
人助けをして、私自身の守護霊力を高めたいの」
『人助け』って言うのがピンとこなかったが、ちょっと考えたらわかった。人=不成仏霊のことだったんだな。
あいつらは願ってることが単純なんだ。痛みから解放されたいとか、食い物がほしいとか。
だから『助けやすい』。
そして、やつらが成仏すれば、そのぶんだけ沙耶ちゃんは格を上げることになる。
「私って、私のためにしか行動しないんだね」と自嘲する沙耶ちゃんに、
「どっちの得にもなってるんだから、いいんじゃねーのw」とフォローする俺は、間違ってないぞ。きっと。

「ありがとう。でもね」と、最悪のコラボを組み合わせて反論してきた沙耶ちゃん。
「私はもっと欲張りになってる。生きてる人も救って、私の徳にしたくなってる。
そのために、まことさんを毎回連れ出してたの。
私のそばで不浄霊を一緒に救ってもらえば、まことさんの徳も上がるから。それに……」
なんか……次の言葉は想像がついちゃってたんだけどね、俺。
「まことさんは、私と一緒にいるのが楽しそうだったから……
まことさんに喜んでもらえたら、私、もっと早く人並みになれる気がする」
「沙耶ちゃんは……酷な人だねえ」
正直、かなり本気で凹んだ俺は、精一杯の皮肉を返した。

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