【厳選】 怪談・都市伝説・怖い話まとめ

ネットで見つけた、都市伝説・怪談・ほんとにあった怖い話・世にも奇妙な物語・心霊系・不思議系・電波系・オカルト系のお話シリーズです♪

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【沙耶ちゃんシリーズ】07 霊障3/3

      2015/11/30

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車に戻って、少し思案する。
このままトンネルを抜けて走れば、自宅までの最短距離になる。

もしトンネルを避け、さっきの街まで戻って迂回すれば、1時間以上は遠回りになるはずだ。
「少しでも早く家に帰りたい?」
沙耶ちゃんにそう聞いた。
沙耶ちゃんはドア側に身を引きながら、「まだどこかに寄るんですか?」と不信感を顕わにしている。

質問の仕方が悪かったか。
「そうじゃなくて、このトンネルを通る勇気があるかどうかってことだよ」と説明を重ねると、
彼女は「あの霊は怖くないけど、まことさんがまた変なふうになるのは怖い」と答えた。
謝罪以外に言葉が出ないよ。
「じゃあ、迂回するか」
エンジンをかける。
インパネのわずかな明かりに照らされた沙耶ちゃんの瞳の色は、ふだんの赤褐色に戻っていた。

二度切り返して、トンネルに背を向けて走り出してすぐ、沙耶ちゃんが「見えない」と呟いた。
「見えないって、何が?」
ハンドルを握りながらちらりと見ると、彼女は戸惑った表情でフロントの先に視線を彷徨わせている。

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「何がって……何も……見えてたものが見えなくなってる」
そう言うと、座席の上で抱えていた膝に顔を埋めた。
「霊が見えなくなってるってこと?……んー、でも、そういう能力とは無縁になりたかったんじゃないの?」
俺は無神経に笑った。
「こんなに突然だと嬉しくないよ……まことさんにはわからないだろうけど」
チクッと嫌味を投げてくる沙耶ちゃん。

「いい機会だから、霊とか宗教とかって電波系に逃げてないで、まともな生活観念を持ちなよ」
なぜ俺は応戦してるんだろう。
「見えないものを否定するだけの人生って、楽でいいでしょうね」
だから、なぜ沙耶ちゃんと喧嘩になるんだ?

「楽じゃねーよ。こんな厄介な女に道連れにされてさあ」
「ずいぶんはりきってましたけど?当たり前ですよね。下心全開だったんですから」
「ばあか!3年も我慢してやったのに、いまさら焦るか」
俺……ひたすら自爆しまくる……
「じゃあ、さっさとそういうことして、さっさと愛想を尽かせてくれたらよかったじゃないですか!」
はあ?沙耶ちゃんの言うこともさっぱりわからなくなってるぞ。

「私は、その……男の人とああいうの、したくないんです……」
急にトーンダウンした沙耶ちゃん。
彼女の『本音』を聞き逃したくなくて、俺は再度、車を道端に停めた。
「きれいな感じがしないし……それに、私の求めるものとは正反対な気がして……」
反論はあったが、黙ってることにした。

間を置いて沙耶ちゃんは続ける。
「私、浄化のイメージが好きなんです。体っていう生っぽいものを捨てられそうだから。
早くそういうところに行きたい」
「汚れた魂が昇天してくれるのは嬉しい」
「この世界には居場所がない。私には釣り合わない。好きになれる人もいない」
そこまで言って、沙耶ちゃんはドアのロックを外した。

俺はすぐにロックをかけ直し、彼女を押しとどめた。
「外には出るなよ。そっちは崖なんだ」
沙耶ちゃんは諦めたように、座席に身を沈めた。

朝が早かったせいか、猛烈な眠気に襲われた。高速で帰ってる途中のことだ。
沙耶ちゃんはすでに寝息を立てている。
仮眠を取るつもりで入ったパーキングエリアは、車が極端に少なくて、なんとなく居心地が悪かった。
とりあえず車外に出て深呼吸をする。
そうだ、と思い至った。時計を見ると0時前。まだ会社にいるな。
携帯からダイヤルすると、予想通り元の上司が出た。トンネルについて教えてくれた相手だ。
「眠気覚ましに話に付き合ってください」と頼むと、向こうからも『歓迎だ』と返事が来た。
「今、例のトンネルに行ってきた帰りなんです」
『いい歳して、本当に肝試しなんかしてんのかwで、なんか出たの?』
「出ましたよ。すっげえのがw」
『マジ?男と女のどっち?』
?????女ってなんだよ?
「出たのはカリノですよ。先輩に聞いてたまんまの姿でした」
『そっちのほうかあ。やっぱり女のほうはガセなのかな』
「何の話ですか?」
『あれ?言わなかった?
リンチ焼殺事件の二ヶ月前に、そのトンネルの付近で、カリノのオンナが行方不明になってるの』
「知らねー……詳細ください」

カリノには、一方的に想いを募らせていた相手がいたようだ。
名前まで聞かなかったが、20代前半の女性だったらしい。
カリノは素行が悪く、地元では嫌われ者だった。当然、女性もカリノには警戒していたという話だ。
彼女は突然姿を消した。彼女の車だけがあのトンネル付近の峠道で、全焼という形で見つかった。
カリノは警察にマークされたが、証拠は見つからなかった。

カリノを殺したのは、ヤツのワル仲間だった。
正犯のフジタ以下数名は、捕まったあとにこう供述したようだ。
「カリノは追い回していたオンナを犯して殺し、山中に捨てた。車は焼いた。
うすうすそれに気づいた俺たちは、カリノを同じ目に遭わせてやろうと思った。なぜかはわからない。
誰も反対はしなかった」
『祟りだね』と上司は小気味よさそうに笑った。
『でも、本当のところはどうだか。
オンナの遺体が見つからなかったから、
警察は、カリノが腹いせに車だけ盗んで燃やした、って見解になったみたいだぜ。
オンナはどこかに逃げたんだろう』
俺は窓越しに沙耶ちゃんを見ていた。さっきのこの子は、本当に沙耶ちゃんだったのか……
『まあ、無事に帰ってこられて何よりだ。今度会社に顔出せ。話がある』
上司はそう言って電話を切った。

ややこしくて頭が飽和状態だ。今日は、誰が誰にすり替わっていたのか……
俺は車に戻り、エンジンを始動させる気力もなく、座席を倒した。
まあいいや。今は寝てしまおう。すべては明日、沙耶ちゃんの寝ぼけた顔を見てから考えよう。

 

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