【厳選】 怪談・都市伝説・怖い話まとめ

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【沙耶ちゃんシリーズ】14 親父の死

      2015/07/08

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2時間ほど仮眠を取って、夜中のバイトの支度をしているところに電話が入った。
親父の面倒を看てもらっている叔母(母さんの妹)からだ。
『まことくん、お父さんの容態が急変したの。もう飛行機もないでしょうけど、できるだけ急いで来てあげて』

俺はすぐに、自家用車で空港まで向かった。
バイト先には途中で連絡を入れた。まだ店にいた店長は快諾してくれた。
H先輩には、朝一の飛行機の時間を調べてもらった。
最近思うんだが、俺はなぜこの人をあんなに毛嫌いしていたんだろう。

空港に着いたが、最終便の出た後の国内線ロビーは、当然のように閑散としている。
駐車場に置いてきた車まで戻り、早朝までの充分な時間を睡眠に費やした。
なぜだろう。気は焦るが、親が死ぬという絶望感はない。
きっと、親孝行ができたと実感しているからだ。
余命宣告より、ずっと長生きをしてくれた親父に感謝……

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0時を回って15分ほどした頃、沙耶ちゃんの携帯の番号を押した。
『今日は送っていけなくてごめん。昨日はありがとう』と言うつもりだった。
でも彼女は出なかった。
数回のコール音の後、『ただいま電話に出ることができません』とアナウンスが流れ、通話が切れた。
ああ、まだ仕事中だったかな。

夜明けの陽の光で目が覚めた。
出発までは時間があったが空港内に行って、メシと洗面を済ませた。
大丈夫。まだ親父は死んでいない。確信があった。叔母からの連絡もなかったし、夢枕にも立たなかったしww
そういえば、例の悪夢みたいな幻覚も見なかったな。このときばかりは白骨に感謝したよ。

飛行機に乗り込んで海を渡った。そこからバスで1時間。
郷里の総合病院で、無事に生きてる親父と面会したよ。
父さんは自力呼吸もできないのに、酸素マスクを外して、
『俺はお前に孝行してやった』というようなことを言った。
そして死んだ。
わけがわからず、湯灌の間に叔母に聞くと、
「そんなことにこだわってたのか」と、笑いがこみあげるほど親父らしい考えを聞かされた。
「お父さんは、まことくんがお父さんより先に死んでしまうんじゃないかと、ずっと心配してたのよ。
あなたが家を飛び出して音信不通になったときも、ずっと連絡が途切れていたときも。
だから、お父さんが先に死んであげることが、まことくんへの孝行になったの。
そうしたらまことくんは、賽の河原で石を積まなくても済むでしょう」
賽の河原っていうのは一般化してはいるが、仏教思想の一つだな。
親より先に死んだ子どもは、三途の川を渡れずに(転生の手続きができずに)、
親が迎えに来るまで、延々と石を積まなくてはならないっていう、あれ。
親父が先に死んだから、俺はもういつ死んでもいいわけだ。
「なんで俺が死ぬなんて思ってたんだよ、あの人は?」
笑いながら叔母に聞くと、叔母は至って真面目な口調で言った。
「姉さん(俺の母親)が、そこまであんたたちの一家を追い込んだからよ」
そして謝られた。
「あんなのが身内で、ごめんね」
俺がその謝罪を受け入れるわけはない。
愚考に走った母さんが悪いのは確かだし、
おそらく、知らず知らずのうちにその原因を作った、俺と親父が悪いのも納得できる。
でも、叔母は関係がないからね。

親父が歓迎されない病死(アルコール中毒を経ての肝臓癌)だったということと、
喪主の俺が遠方から来ているということで、葬儀は内内で済ませることになった。

その夜、親戚だけの簡単な通夜をしていると、玄関が開いた。
読経の最中だったので目だけ上げると、母さんと姉さんがバツが悪そうに立っていた。
末席の叔母が2人を中に誘っている。(ああ、声をかけておいてくれたのか)
少し苦々しく思いながらも、久しぶりの顔が元気そうなのに安心した。

式が終わり、親類連中は帰った。
叔母は俺と仏さんの番をすると言い張っていたが、1人のほうが気楽なので帰した。
母と姉は町に宿を取っているという。

ビールを開け、親父の棺の横でどうでもいいことに頭を巡らせた。
叔母の話によると、母さんは親父と結婚する前に、付き合っていた相手がいたらしい。
結婚してからも、感情的には切れていなかったんだろう。
気持ちの冷めている親父の世話をし、親父の子どもである俺を育てているうちに、
現実から逃げ出したくなったのかな。
今ではその男と充実した生活を送っているはずだ……
ふと、沙耶ちゃんの言葉を思い出した。
『強力な守護霊に守られている人間は、努力しなくても人生が好転するの』
羨ましい限りだね、まったく。
イライラしてきた。沙耶ちゃんの声が聞きたい。
携帯の番号を押すと、電源が入っていないとアナウンスされた。そっか。バイト中だったな……

神経が昂ぶっていたが、それでもウツラウツラと眠れそうになってきた頃、玄関の戸が開いた。
挨拶のない訪問者を不審に思いながら出ると、母さんと姉さんと……泥だらけの子どもが立っていた……
「もうみんな帰った?ちょっと話があるんだけど」
母さんは通夜の恥じ入った態度とは正反対のふてぶてしい表情で、親父の安置された部屋に上がりこんでいく。
姉さんは俺と顔も合わせずに、母さんの後ろについている。
坊主は俺の隣りで止まって、そこだけ泥がはげた薄い唇を動かした。
「次は頭」
全身が緊張したよ。そっか……そういうお膳立てなわけか……
冷静さを欠いちゃまずい。深呼吸を繰り返しながら、自分に言い聞かせた。
母さんは親父の死に顔に興味も見せずに切り出した。
「この家とお父ちゃんの預金のこと、あんた聞いてる?」
知るか。首を振る。
「妹(叔母)の話だと、お父ちゃん、全部あんたに遺すって遺言書いちゃってるらしいんだわ。
でもね、あたしはともかく、同じ子どもなのに、お姉ちゃんに何ももらえないっていうのは、不公平すぎるからね」
と母。
……てか、ここまで強欲だと、母親扱いするのも抵抗があるわorz
「俺は遺言のことなんか知らないし、どうしようもないんだから、そんな話持ってくんな」
吐き捨てると、姉ちゃんが初めて口を開いた。
「相続を放棄してくれればいいのよ。
そうしたら、母ちゃんに半分、私たちには4分の1ずつ配分されて、みんな公平になるじゃない」
母親は「お姉ちゃんにだけは遺産を渡して」と繰り返す。姉は執拗に母親の権利を出張する。
なんかほんと……面倒……
「じゃあさ」
俺は自分の言葉に自覚のないまま言った。
「俺と姉さんがいなくなったらいいんじゃねーの?」

人間の首って、こんなに激しく脈打ってるもんなんだな。
姉さんの顔が紫に染まっていくのを見ながら、俺はさらに両手の力を込めた。
母さんは腰が抜けたみたいで、大声を上げることもせずに、親父の棺桶を狂ったように叩いている。
なんだか予想どおりすぎて拍子抜けだよ。どうせ夢なんだろ、これ。
もう少し俺に不利な状況にしてもいいんじゃねーの?なあ、坊主。
姉さんが泡を吹き始めた。そろそろ死ぬかな。
馬乗りになった俺が浮き上がるほどの抵抗をしてた体も、もうほとんど動かないし。瞳孔が開いた。
あー……なんつーか……気分は悪くないんだけど、心残りがあるって感じだ……
沙耶ちゃんに連絡がついてたらなあ……俺、こんなことしなかったのに……
そう思った瞬間、こわばってた手から力が抜けた。姉さんの喉に酸素が流れる感触が現れた。
まだ生きてる!よかった!
母さんに向かって叫んだ。
「誰かを呼んできてくれ!早く!!」
でも、母さんは動かない。
畜生!自分の娘の緊急事態だろーが!
自力で姉から離れようとしたんだが駄目だ。脳が俺の意思を無視する。
また徐々に力が入ってきた。腕が攣るほど抵抗してるんだけど負けてる。
いっそ、手が動かなくなれば……
見回すと、祭壇のでかい燭台が目に入った。ロウソクを抜けば使える!
俺は自分の肩に思いっきり噛みついた。痛みで我に返って、一瞬体が自由になった。
祭壇に飛びつき、火のついているロウソクをねじ取って、鋭い針をむき出しにする。
そして、親父の棺桶の上に置いた自分の左手に、思いっきり突きたてた。

母親の喚き声で集まった近所の親族が、救急車を呼んでくれた。
意識の朦朧としている姉を尻目に、運ばれたのは俺のほうだったww
燭台が大きかったので、針は俺の掌を貫通して骨を砕いてた。
親指と人差し指は普通に動いたが、後の3本は再起不能かもしれない。
ま、どうでもいいや……

治療を終えて病室で横たわっているときに、夢を見たよ。
俺は体と右腕の再生した女の肉体を背負って、あのトンネルの脇に立っていた。
女は下に続く急勾配を指差している。
指示に従いながら、ゆっくりと下りてやった。何かを探しているみたいだ。
女の指がさまよい始めた。場所が特定できないのか。
「ううん。見たくないの」
意外に若い声で女は答えた。
すると、10mぐらい前方の薮が動いて、中から薄汚れた沙耶ちゃんが現れた。
「何やってんの、そんなとこで?」と笑いながら聞くと、
沙耶ちゃんも笑いながら「先に来て探してたんですよお」と返す。
そして俺の背中に向かって、足元を指差しながら言った。
「ここでずっと待ってたんだよ」
沙耶ちゃんの足元には、幼児が眠っていた。
女を背中から下ろしてやると、右手で幼児の頭を撫で始める。
「子どもと一緒に殺されちゃったんだよね。可哀相だったね」
沙耶ちゃんも傍らにしゃがみこんで、同じように幼児を撫でる。
いつのまにか坊主が来ていて、母親の首に頭を取りつけた。あれ?姉さんは生きてるはずだが?
母親は穏やかな表情で、子どもに頬ずりをした。
俺は坊主に言った。
「右腕だけじゃ子どもが抱けないから、俺の左腕をやれないかな?」
坊主は黙って母親を指差した。母親は両腕で子どもを抱いていた。
そこで夢から覚めた。

医者が来て、俺の手は神経が寸断されてしまったので、元どおりには動かないだろうと説明した。
大きな病院でなら神経の縫合をしてもらうことができるかもしれない、とも慰められたが、俺は断った。
俺が持ってるより、あの母親にやったほうが何倍も役に立つ腕だったからね。

包帯だらけの手だったからか、翌日の葬儀には野暮なツッコミは入らなかったww
親戚の何人かが、「あの馬鹿どもは、昨日のうちに追い出してやった」と報告してくれた。
田舎の団結力は頼もしいなw

火葬場に移り、骨上げ(骨が焼けること)を待っているときに、焼き場の職員から呼び出された。
「とても申し上げにくいんですが……お父さんの頭のお骨が見当たらないんです。どうしましょうか?」
そっか。親父が姉さんの代わりに首を提供してくれたのか……
親族には黙っておいてくれと頼んだ。
どうせ酒びたりだった親父の骨は、まともな原型を留めていなかったし。

すべての儀式を終えた後、俺は空港の待合室で久しぶりに携帯を取り出した。
驚いたよ。40件近い着信が入ってる。
そのうちの30件以上を占めていた梶に電話をすると、ヤツは深刻そうに切り出した。
「沙耶ちゃんって、まことさんとそっちに行ってる?バイト、ずっと無断欠勤してるんだけど」
すぐに梶を切って、沙耶ちゃんにかけ直す……電源が入ってない。
最後に会ったのは、踏切事故の翌日の朝だ。もう6日も経つ。その間、電話は一度も通じなかった。
『先に来て探してたんですよ』
夢の中では、沙耶ちゃんはトンネルにいた。
事故?嫌な想像が頭をかすめた。

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 - 沙耶ちゃんシリーズ

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