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【沙耶ちゃんシリーズ】04 親父の病気

      2015/07/08

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沙耶ちゃんにいろんなものが見え始めたのは、小学生の高学年ぐらいだそうだ。
彼女の父親と母親は、次女である沙耶ちゃんにはあまり興味を抱かなかった。

家はそこそこ裕福だったようだが、沙耶ちゃんは食事をもらうのにも頭を下げるという、劣悪な環境に身を置いていたようだ。

ストレスのすべてをぶつけてくる親に対して、沙耶ちゃんは先回りして逃れる必要があった。
親の顔色をうかがい、金銭の制約を持ち出されないようにするために。

彼女に最初に芽生えたのは、霊を感じる能力ではなく、他人の心を読み取る感応力だった。
テレパスと言い換えたほうがわかりやすいか。
霊能力はオマケ。むしろ要らないと彼女は言っていた。

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バイトで親しくなってから数ヶ月後、俺はプライベートでも沙耶ちゃんと会うようになっていた。
……と言っても、彼女が大学から帰ってくるときに、車を用意するだけの関係だったがorz

俺が30を目前に控えたある日、沙耶ちゃんが真面目な口調で切り出した。
「まことさんって、ご家族に恵まれてないですよね?」

「まあ当たってる」
「……結婚は考えてないんですか?」
「相手いねーしww」
内心、期待に弾けそうになりながらそう答えた。いま考えると、馬鹿すぎ俺……
「探したほうがいいですよ。まことさんは、家族がなくなったらダメになる人だと思います」
「いや、いないことはないんだけどね(汗)」
『沙耶ちゃん、俺の家族にならない?』って言えっつーの俺……

俺の家族は、親父しかいなくなっていた。
母親は、俺が高校に入ったばかりのころに蒸発した。浮気相手と。
姉貴がいたが、なぜか母さんのことは棚に上げて、親父ばかり非難していた。
そして駆け落ちという形で、自らも家を出て行った。
俺には親父の非がわからなかった。子どもだったからかもしれない。いまもわからないけど。
親類でひしめく田舎の集落のことだ。俺の家庭のことはすぐに知れることになった。
同情が多数だったと思うが、若かった俺は、母や姉を恥部とすることが嫌で村を出た。高校は卒業しなかった。

沙耶ちゃんを送り届けてから、なんとなく気になって親父に電話をした。
そういえば、電話すらここ何年もしていなかった。
親父は浮かれた様子で、俺の連絡を喜んだよ。そして言った。
『今日な、医者に肝臓癌だと言われた。俺の顔を見られるのもあと一年だぞ』

余命をはるかに凌いで、2年後に親父は他界した。
俺は自宅アパートと故郷を飛行機で行ったり来たりして、自分が納得するまで親父の余生につき合った。
臨終の少し前、親父は言った。
「お前が電話して来なかったら、このときまでお前には知らせないつもりだった」

沙耶ちゃんには感謝してるよ。もし彼女に再会することができたら、真っ先にこの話を伝えてやりたい。
彼女は自分の能力を含めた、存在自体を消したいと思っていたようだから。

梶が無事に3年に進級した。留年してやがったから、知らせを聞くまで俺もなんとなくやきもきしてた。
お祝いに飲もうということになって、バイトが終わった朝からファミレスにしけこんだんだ。
俺も梶も、睡眠時間を削っても気にならない性質だったし。

「体育大って、単位取れなかったら潰し効かないんだろ?中退にならなくてよかったなあ」
「まことさんが言うと重みあるねwwさすが中卒」
「うるせえよwこれで2年は安泰だろ。俺が徹夜仕事きつくなったら、店頼むな」
梶の大学は、3年生から4年生はエスカレーターになっているそうだ。次は卒業をめざせばいいってことになる。
「えー?あの店治安が悪いから、夜中はひょろいの入れないんでしょ?
まことさんの後が見つからなかったら、俺、当分1人?」
梶が不満に思うのも無理はない。店の場所は繁華街の外れで、夜中になると客層はひどく低レベルになる。
俺が採用されたのだって、武道の段持ちって理由なんだ。
「真面目な話、俺、バイトでつないでる余裕がなくなってきてんのよ。飛行機代稼がないと」
梶には親父の容態は伝えてあった。
「ああ、そっか……そろそろ定職持たないと、沙耶姫も可哀相だしw」
なぜそっちに話を振るかなあ……orz
「沙耶ちゃんは関係ねーよ、馬鹿」
「『おやすみなさあい♪』の携帯メールが入るのにー?」
「……頼めばお前にも入れてくれるよ」
我ながら不機嫌な声で答える。
俺が沙耶ちゃんとプライベートで会うようになってから、1年以上が過ぎていた。
なのに俺は未だに、彼女の運転手としての域を出ていない。
なんつか……容姿的にも性格的にも彼女は完璧すぎて、俺には入り込む余地がないって感じで……

まあ、そんなことはいいんだよ!って俺が独りごちてる間に、梶のヤツが沙耶ちゃんに電話を入れていた。
「沙耶姫、ここに来るってw」
……絶対に、よくやったとは言わねえぞ。

昨夜の0時に別れた沙耶ちゃんはしっかり寝たようで、快活な二重まぶたの大きな瞳で俺たちを見つけた。
「朝から飲んでるんですかー?」と非難しながらも、自分も中ジョッキをオーダーする。
梶と同じく大学生の沙耶ちゃんはいま春休み中。
プライベートでの接点が途絶えていただけに、思わぬボーナスだった。

馬鹿な話でさんざん盛り上がり、ファミレスを出たのは昼だった。
俺と梶は適当にセーブしていたので、店を出るころには素面に近かったが、沙耶ちゃんはかなり盛り上がってたね。
鼻歌を歌いながら、俺たちにまとわりついたりしてた。
「沙耶ちゃんって何杯飲んだっけ?」
「三杯ぐらいじゃない?」
梶とそんな会話をしながら笑って見ていると、ふと彼女が立ち止まって、何もいない空間に頭を下げた。
「ぶつかっちゃうとこだった」
肩をすくめながらそう言って駆け寄る沙耶ちゃんに、梶が「誰もいないしwww」と突っ込む。

それからも数度、彼女はいきなり立ち止まったり、不自然に避けるといったアクションを繰り返した。
そのたびに俺たちに、「いまって生きてる人じゃなかった……?」と確認して困惑する。
幽霊って、昼日中にそんなにいるもんなんだ?
まあ考えてみれば、いま生きてる人間より今まで死んだ人間のほうがずっと多いんだから、ありえるのか。

梶は沙耶ちゃんの妄想だと思い始めたようで、俺に「見えてる気になってるだけじゃないの?」と耳打ちしてきた。
すると、「違うよ」。
沙耶ちゃんはくるっとこちらを向いて答えた。
梶の声は沙耶ちゃんに聞こえる大きさじゃなかったんだが。
沙耶ちゃんはもともと色素の薄い子で、肌も白いし、髪の毛や瞳の色も日本人離れした紅茶色をしている。
でも、振り返った彼女の眼は、虹彩も瞳孔も区別がつかないぐらい真っ黒に塗られていた。
梶も俺と同じものを感じたのか、鳥肌の立った腕をさすっている。
「私には人と死人の区別がつかないの」
自嘲気味にうつむく彼女の顔が見る見る青くなって、道端に座り込んだ。
「吐きそう……」
でもな、酔った沙耶ちゃんを介抱しながら、なんか俺は嬉しかったね。彼女にも隙があったことが。

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