【稲川淳二】岡山の霊能力者【ゆっくり朗読】326
2021/05/28
岡山に心霊治療をする霊能力者がいるっていうんでね、取材に行ったんですよね。
撮影は次の日なんですが、先に挨拶をしておこうかっていうんで、ディレクターと二人そちらに向かったんですよ。
そうだなあ、中年位の女性だったなあ。
ところが驚いたのはたくさんの人がいるんですよ。
そのたくさんの人達は全国から集まっているんですが、医者にさじを投げられた、もう治らないという人たちがここで治っているもんだから、たくさんの人から崇められているんです。
一瞬宗教のような感じもしました。
果たしてどういうものかなと私は思ったんです。
それで、手をかざしたり撫でたりするですが、治るって言うんですよ。
でもやっぱり私は疑った。そんなことはないだろう、手術もしないで と思っていた。
そうしたならば、その方が七輪をスタッフに用意させるんです。
そして大きな鯛を持ってきて網に乗せて焼いているんです。
そして来ている人に手をかざしているんです。そして鯛が焼けるのを待っているんです。
妙な感じがした。
その時にその方が言った。
「稲川さん、普通魚を焼くっていい匂いがすると思いませんか?」
「かいでごらんなさい、臭いから」
確かに臭く、嫌な臭いがするんです。
そんなわけないんですよ、鯛なんですから。
でも臭いんですよ。嫌な臭いがするんです。
私は何か入れているのかなと疑った。
魚が焼けると霊能力者の方が、「稲川さん、ちょっと見てください」と言い、魚を割いた。
「いいですか?この人の悪いところが魚に出てくるんです」
「悪い箇所だけは絶対に焼けませんからね」
内蔵を開いた。すると一箇所焼けていない。
おかしい。他は焼けているのに。
なんだこれ?マジックか手品でも使っているのかな?って思った。
でもなかなか感じの良い人で「じゃあ明日、撮影よろしくお願いします」と言うんで、そのまま帰った。
ホテルに帰ったんですが、時間があるもんですから、ディレクターと二人でどうしようかと思い倉敷あたりに飲みに出かけたんです。
ちょっと良い気分になって二人でホテルに帰ってきた。
同じ階なんで廊下で別れて部屋に入った。
部屋が線香臭いんです、すごく。
慌ててディレクターの部屋へ行き「ちょっと来てくれない?」と頼んで自分の部屋に連れて行きました。
ディレクターが私の部屋に来ると、「何稲川さん、この臭い…お線香ですよね?」
「私が焚いたんじゃないよ。帰ってきたらこんな臭いがしていたんだよ。かなりきついよね」
そこでディレクターが気になり、フロントのほうに電話をしたんです。
何かあっては困ると思ったんでしょう。
でもフロントでは、誰も来ていないし、自分たちは何もしてない。
うちでは換気も出来ないと言うんです。
この臭いはなんだと聞いても、おかしいですね……としか言わない。
部屋替えますか?とディレクターが言ったが、もういいこのままでと断りこのまま寝たんです。
翌朝、スタッフと合流して先生のところに向かったんです。
着いたならばその先生が開口一番
「稲川さん、いらっしゃいませんでしたね、ホテルの方へ」
「えぇ、なんで?尋ねたんですか、電話ですか?」
「電話はしていません、尋ねたには尋ねたんですが」
「何時頃?」
「何時だったかな?八時頃におじゃましたんですよ」
「先生がですか?」
「いや違います、私の気が行ったんです。稲川さん、お部屋の中臭いがしていませんでした?お線香の臭いがしたでしょう」
「しました、かなりきつかったですよ」
「あー、私が行くとそんな臭いがするんですよ。もっとも私の気が行ったんですけどね」
不思議でした。信じられないことってあるんですよね。
もちろんホテルには聞きました。
しかし誰も私の部屋には訪ねていないんです。
その先生の気だけが訪ねてきたんです……
(了)
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