【厳選】 怪談・都市伝説・怖い話まとめ

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不可解な叔母の死因

      2016/09/07

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もういろいろ済んだから、書かせてくれ。

父親には妹がいたらしい。

俺にとっては叔母にあたるが、叔母は生まれて数ヶ月で突然死んだ。

原因不明。待望の娘が死んでしまい、婆さんは大層落ち込んでいた。

見かねた爺さんが婆さんにフランス人形を買い与えると、婆さんはそのフランス人形に叔母と同じ名前の「千寿江(ちずえ)」と名付けて可愛がった。

毎日なで、そばに置き、綺麗にしてやり、共に寝たそうだ。

それが変わったのが、俺の妹が生まれてから。

女が生まれて、婆さんはひどく喜んでた。

両親は共働きだったし、代わりに婆さんが妹を大変可愛がって育てた。俺も可愛がられたけどな。

それで、今まで大切にされていた千寿江の定位置は、婆さんの枕元でなく、仏間になった。誰もいない仏壇だけがある仏間だ。

俺はよく先祖へあいさつしろと、夕飯前に御神酒をあげにそこへ行かされていたもんだ。暗くてくそ寒い、不気味な部屋。

小学校高学年の時、いつも通り御神酒をあげに仏間に入り、仏壇に手を合わせた。

その時、誰かが後ろに立っているような気がしたんだ。

振り返ると何もない、いつも通り、ピンクのドレスの千寿江がいるだけだ。

それがその時は妙に怖かったのと、多感な時期だったのもあって、思わず

「なんだよ、文句あるのかよ。かかってこいよ」と、千寿江を挑発した。馬鹿だよな。

居間に戻って家族に「千寿江に睨まれた!」と報告すると、婆さんが激怒してな…後にも先にも婆さんがあんなに怒った事はない。

怒る婆さんに合わせるように父親も激怒、ゲンコツをくらった。

俺涙目。その時はあやまってそれで終わり。

問題が起きたのは数日後だった。

休みの日だったか、まだ明るい時で仏間もいやに明るかった。

昨晩、下げ忘れた御神酒を下げに仏間に入ると、千寿江が定位置にいない。

いつも置いてある棚から落ちて、畳へ。

手首が外れていた。

正直、俺に何かするために這い出して動かしたのかと…

びびって、走って家族のいる居間にいくと婆さんがいて、怒られるかもとは思ったが、本気で怖かったから婆さんに報告。

俺の尋常じゃない様子に婆さんも心配になったのか、一緒に居間にきてくれた。

そしたら千寿江は、今度はちゃんと定位置にいた。手首もついてる。

俺が嘘を吐いた感じになってしまったが、弁明している時に親父がきて

「あ、悪い。それ俺が落とした。トイレ行ってから直したんだよ」

って。犯人親父かよ!

勘違いして半泣きになってる俺を親父が爆笑して、婆さんも今度は俺をなぐさめて、事なきをえた。

でもその晩、婆さんが寝たあと、親父が俺の部屋にきた。

「昼間のあの人形な。戻したのは俺だ。だけど、落としてはない。お前、本当に嘘は吐いていないか?」

親父の話によると、俺が大きな音を立てながら仏間を出てくるのを見て、どうしたのかと仏間を覗いたら、千寿江が落ちてたのを発見。

見つかるとまずいから、そっと直したという話だった。

ただ、おかしかったのは、手首なんて取れてないと親父が言ったことだ。

どうやって落ちて、その後どうやって手首がくっついたのか。

俺は怖くて、御神酒をあげる係をサボるようになった。

御神酒を持って出て、客間で2~3分待って、それから居間へ戻る。

多分、半年くらい御神酒をあげてなかったんだ。

その頃、妹が死んだ。小学校に入って間もなくだ。

死因は原因不明の高熱。突然ガーッて熱が上がって、入院して、それっきり。

俺はもしかしたら、俺が御神酒をサボってるせいじゃないかって思って、でも親にも婆さんにも言えなかった。罪悪感とか、そんなん。

妹が死んだのは俺のせいだって思った。

母親は、妹が死んだのは、千寿江のせいだって言い始めた。

話を聞くと、妹は死に際に「ちぃちゃーん」と泣いたらしい。

ちぃちゃんなんて友達は妹にいなかったし、思い当たる事があれば、あの怪しげな人形。

俺が過去騒いだせいかも知れないけど、母親も過敏になって、人形を捨てる!と言い出して、妹の葬儀中に大ゲンカした。

この一件から、うちの両親は不仲になって、母親は実家へ帰った。

親父は黙々と仕事をして、婆さんは千寿江を抱きながら毎晩泣いた。

親父は仕事から帰って来ないし、婆さんは泣いてばかりだし、この辺りから、俺が家事をするようになった。

次に婆さんのボケが始まった。

今思えば当然だ。飯を食うか、部屋にこもって人形抱きながらぼーっとして、泣いて、泣き疲れたら寝て。

ご飯だよ、って呼びに行ったら、何か食ってんの。何食ってんの?って聞いたら、ご飯って言う。

はあ?と思いながら、婆さんの顔見たら、金色の糸が口から出てんだよ。

そんで、手元には半分はげた千寿江。

俺はこの時が一番怖かったと思う。急いで婆さんから吐き出させた。

母親に相談しても、あんな人知らない、の一点張り。

父親に話して、病院にって言っても、仕事が忙しいから連れていけない。

お前が面倒みろ、とそればっかりだった。その時、俺まだ中学生。

でもな、妹が死んでからうちの家族、おかしくなっちゃったんだ。

御神酒やってなかった俺のせいだと思うと…やらざるをえなかった。中学は不登校になってたよ。

千寿江は婆さんの手によってボロボロだった。

髪は引き抜かれ、服は脱がされ、切り刻まれ。

汚い話だが、排泄物を塗りたくられもした。

さすがに可哀想だって思って取り上げても、翌日にはちゃんと婆さんが持ってる。

色んなとこに隠したんだ。トイレの棚、両親の寝室、あとは下駄箱とか。

夜中、「ちずえぇ、ちずえぇ」って徘徊して見つけるらしい。

そしてまた千寿江をボロボロにする。

見かねてな…仕方ないから、試しに俺の部屋に置いとく事にしたんだ。

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夜中というか3時過ぎか。朝方、婆さんが千寿江を探す声で目が覚めた。

俺の部屋二階だし、まあ登って来れはしないし、ボケてから上がってきたことないし…と安心しながら、千寿江を閉まったクローゼットを見ると扉が空いていた。確かに閉めたんだ。

だって目につくところに置いてたら、気持ち悪いだろ。

夜中見なくて済むようにって、クローゼットにいれたんだ。ビニールまでかけて。

でも、そのビニールはそこらへんに落ちてんだ。

ヤバイって、でも千寿江が。もうパニックにおちいった。

布団の中で滝のような汗。寝たフリするか、起きて確認するか。

とにかく怖かったんだ。

そしたら、キィと、物音が聞こえた。

ドアを開ける音。位置関係的には、ドア/ベッド(俺の視線→)/クローゼット

俺は怖くて、ドアの方を見る事ができなかった。

そしたら不意に、声が聞こえたんだ。

「千寿江、こんなとこにおったんけ」

婆さんが登ってきた?と思って、そこで俺は跳ね起きた。

でもそこには何もなかった。千寿江も、婆さんも。

怖くて、そのまま寝ることにした。気のせいだったと思うようにして。

千寿江と婆さんは、婆さんの自室で死んでたよ。翌日の朝、俺が見つけた。

死因は窒息。婆さんの喉には千寿江の髪の毛とちぎれた服、目玉が入ってて、婆さんの口の中には、千寿江の頭部が入ってた。そりゃ、飲み込めねえよ…

明るい部屋ん中、陽がたくさん差し込む中、婆さんがそんな感じに死んでるわけよ。

幸せそうな顔じゃなくてさ、いかにも苦しみましたってさ、目を血走らせて、失禁して、片手に千寿江の胴体を強く握って。

婆さんの葬式は簡易的なものだった。火葬だった。千寿江も一緒に燃やした。

墓に収める時にさ、墓に歴代の先祖の名前あるじゃん。そこにはすでに千寿江(本物の叔母)って書いてあって、変な感じがした。

ここから、俺の中で怖い話なんだけど……

叔母さんの千寿江さんの死因って実は原因不明じゃなかったんだ。

うちの婆さんが首を閉めて殺したらしい。

理由は知らん。

そういや父方の親戚付き合いがないなって思ったら、婆さんは絶縁されたらしい。これは葬式にきた親戚の話。

何で逮捕されなかったのか聞いたら、ごまかされたから、もみ消したんだろうな。

婆さんが死んで、今年で四回忌だ。俺は高校に行ってない、何もしてない。

婆さんが死んでから、ずっとやる気が出ない。

この文も、実は2ヶ月前から書いてやっと完成する。

いっそこのまま死にたいとすら思うよ、疲れた。

今まで起きたこと、全部千寿江叔母さんの呪いなら、この俺の状態もそうなのかもな。

俺の一存を滅亡させるつもりなのかも知れないなって思うと、ちょっと笑えるよな。

(了)

 

文豪山怪奇譚 山の怪談名作選/東雅夫

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