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【沙耶ちゃんシリーズ】09 妄想

      2015/07/06

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バイトしているコンビニには、ふだん夜中に店長はいない。
俺がいい歳なので、店長代理並みに扱われてるからだ。
その信用をいいことに、俺は勤務を中抜けしては、沙耶ちゃんを送り届けるようになった。

もともと心配性ではあったが、それに加えて『大事な人』になったのだから、一時でも目を離したくなかったんだ。

「一緒に暮らしてーなあ」と呟いて、梶に「展開速いっすね」と笑われたこともしばしばだった。

6月の半ば、雨が落ちそうな夜だった。
いつものように沙耶ちゃんを送り届け、アパートの部屋に電気がついたのを見届けて、帰路に着いた。

彼女の家は店から10分ほどしか離れていない。
車を出すまでもないので、雨降り以外は徒歩で往来することにしている。
人気の絶えた歩道を進み、中間地点まで来ると、『坊主の話』で書いたグランドに出た。
坊主の気配はなかった……いや、あっても俺にはわからないかw

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トイレ横の街灯の光がわずかに届くブランコに魅入っていると、突然、背後から声をかけられた。
「お父さん、しにますよ」
ぎょっとして振り返ると、背の低い丸顔の巡査が俺を見上げていた。病的に飛び出した眼球が血走っている。
「あなた、しにますか」
巡査の右手が腰に回ったのを見て、瞬間に(ヤバイ!)と身構えた。
詳しくはないが、拳銃をしまっておくホルスターを探しているのかと思ったんだ。
思わず巡査の右腕をつかんでひねると、ボキンと嫌な音がして腕がもげた。
中学の頃に習っていた柔道の道場で、やりすぎて相手の肩の関節を外しちまったことがあった。
感覚としては、その程度の力しか入れてなかったんだよ。
なにより、腕が取れるなんて考えられない事故だろ。
ちぎれた腕を握ったまま巡査の様子を見ると、体を丸めて「ぎぎぎぎ」と歯噛みを軋らせている。
「だ、大丈夫ですか?!」ととっさにアゴに手を入れて上向かせた。
舌を噛んだらしく、口の中が真っ赤に染まってる。
なんだよ、これは?
数日前からポケットに入れっぱなしだったハンカチをそいつの口に押し込みながら、俺は混乱を極めていた。
通り魔?俺は正当防衛?それとも傷害?
巡査は裏返った眼底を晒し、血を撒き散らしながら、言った。
「誰がしにますか」
そして、消えた。

どうやって店まで戻ったのか覚えていない。蛍光灯が過剰に瞬く店内への扉がとても重かった。
レジにいた梶が「どうしたんですか?」と驚く。俺は言葉もなく頭を振った。疲れた……
「ごめん。休ませてくれ」
なんとかそれだけ伝えて、カウンター奥の申しわけ程度に作られた事務室の机に突っ伏した。
何も考えられない。眠い。すぐにうとうととしたと思う。
実際、連日バイトとH先輩の仕事で、疲労は限界だった。
悪い幻覚だって見るよ。夢の中で無理にそう納得させる。

事務室の戸が開いた。梶が来たんだ。
「何か用?」
顔も上げずにそう聞いた。
でも見えたのは、泥にまみれた子どもの足だった。
「忘れ物」
水の中から話しかけるような声で、坊主は俺の手に何かを握らせた。
冷たくて締まった筋肉の感触から、巡査の腕だって気がついた。
なんで俺に?何の悪意があって?
癌末期の親父の顔と、光に溶けた沙耶ちゃんの姿を思い出して、無性に淋しくなった。

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 - 沙耶ちゃんシリーズ

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