【厳選】 怪談・都市伝説・怖い話まとめ

ネットで見つけた、都市伝説・怪談・ほんとにあった怖い話・世にも奇妙な物語・心霊系・不思議系・電波系・オカルト系のお話シリーズです♪

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神社の生活

   

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当時、私は浮浪者でした。

東京の中央公園で縄張り争いに敗れて、危うく殺されかけ、追放 されたあと各地を転々とし、最後に近畿地方の、とある山中の神社の廃墟に住まうようになりました。

ふもとに下りては、何でも屋と称して里の人の手伝いをし、手間賃をいただいて食いつなぐ身の上でした。

その生活の中で一番恐ろしかったのは、人間です。

「何でも屋です。何が御用はございませんか」

といっただけで、いきなり猟銃を向けられた事も御座います。

「一度弾を込めたまま、人間に向けてみたかったんだ。ほらよ」

と、口止め料まがいの大金を渡されましたね。

恐怖に慄いた代金は一万円でした……

付近を走る暴走族に、「お前に人権はねえ」と追い回され、棒切れで叩かれた挙句、足が折れたこともございます。

その時は、よく手伝いにいくかわりに野菜を分けていただいてた農家のかたが、様子を見に来てくださり、あやうく歩けずに餓死するところを救われ、病院にかかる代金までもっていただきました。

その農家のかたからは、さまざまな恩を受けました。

「手に職はあったほうがいい。うちじゃ雇ってやれないから、せめて作物を育ててみて」

そのように仰り、色々な苗やタネを分けていただきました。

荒れた境内の砂利を少しよけて、硬い土をたがやし、近くの川からへたくそな水路をひいて引き入れ、ちょっとした農園をつくるに至りました。

ある時、何度かに分けて訪れた茶髪の廃墟探検の人たちに、この農園は大量の除草剤を撒かれて、全滅させられました。

私はこういう団体が来る度、暴走族の一件を思い出して隠れるようにしていたのですが、このときほど、角材でももって殺してやりたいと思った事は御座いません。

そこでの生活は、どなたかから恩を受け、それをどなたかに奪われることの繰り返しでした。

こうした生活をしていると、不思議と心が澄んできます。

所詮人間は悪徳の持ち主ばかりだ、と悟るのです。

そして、徳の高く優しい人たちにあこがれるようになります。

そういう風になってくると、別に幽霊を見ても必要以上に恐くなくなります。

実はこの神社、社務所にほんとに幽霊が出たんです。髪がぼさぼさで、白着物に朱袴の女性でした。

生活し始めの頃に気づき、以来おびえて社務所には近づかず、物置小屋で暮らしておりました。

しかし、悟ってしまった頃から、頻繁に社務所に出入りするようになり、大工の親方とも知り合い、古くなった工具を分けてもらった四年前。

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仕事をおぼえてみるついでに、社務所の修理をはじめました。

『出て行けっ!たたり殺すぞ』

って具合ににらまれましたよ。何度かちびりました。

でもね、修理をして雑巾がけをしていくうちに、だんだん付き合い方をおぼえました。

まず、必要以上にうるさくしない。

次に、カミさんじゃなくて、その人に挨拶をしてからはいり、出るときも挨拶して出る。

社務所が綺麗になる頃には、幽霊のお嬢さん出てきても、穏やかな表情をするようになりました。

たまにさらさら音が聞こえたような聞こえてないような時は、決まって髪を櫛擦ってる。

二年前、前に私の足を折った暴走族が、また境内へとあがってきましてね、私、逃げ切れずにつかまって、袋叩きにされました。

頭も殴られてぐわんぐわんいってましてね、足なんか痙攣してて、立ち上がって逃げようにもすぐ転ぶ。

深夜の話なんで、昼間よりもっと助けも望めず。こりゃあ巫女さんのお仲間になるなと思いました。

若者達はへらへらと笑っているし、私がもう命の限界に近いなんて理解もしてないようでした。

すると驚いた事に、境内をかけあがってくる足音がするじゃないですか。

暴走族たちも、私を殺そうとする手を休めてそちらをみました。

すると、ふもとの危ない猟銃持ちのおじさんがやってきて、いきなり銃を暴走族達に向けるじゃありませんか。

しかも発砲したんですよ。わざと外したようですがね。

暴走族が慌てて逃げ出したのをみて、私、意識失いました。

病院で目を覚ました後、見舞いにやってきたおじさん。

聞けば、巫女の幽霊に夢の中で脅かされ、飛び起きたら目の前に血走った目をした巫女の幽霊がいた、なんて、きもの縮まる思いをしたそうで。

幽霊撃つためにとった銃も、銃床で殴りつけても、そりゃ素通りだったそうですよ。

あまりの恐さに逃げ出したら、おっかけられて神社までおいたてられたと。

だから私ね、

「実はあの廃墟にゃ巫女の幽霊が出るんだよ」

って切り出して、社務所の修理と、巫女の幽霊が恐くなくなったとこまで話してやったんです。

そしたらおじさん、

「そりゃあんた、幽霊と内縁の夫婦になってるよ」

と真顔で。

退院して真っ先にお礼しましたよ。

以来ちょっと生活苦しくても、巫女さんのために一膳のご飯用意してね。

嫁の飯も用意できないんじゃ男廃りますし。

たぶんあれはただの夢ですが、巫女さんと何度も一晩中貪りあった。

祝言もあげましたよ。神主もいない神社ですが、まあ神前結婚の気分てね。

一年前。この神社の廃墟を含む 山の所有者ってかたがやってらっしゃいましてね。

元々はこの神社の神主の一族だって話してらっしゃいました。

この神社、別に霊験あらたかでもないし、歴史的に由緒あるわけでもなし。

終戦後の神道の混乱期に神主不在となって以来、荒れ放題だったとか。

ところが、みすぼらしいのは同じでも、神社がすっかり生気溢れてることに感激したって泣き出しましてね。

私に、神社のある山とふもとの農地ををくださったんです。

どうせ二束三文の土地なら、活用してくれる人にもっててほしいってね。

農地は、よくしてくれた農家のかたに 安く貸し出し、私は今東京に出稼ぎにでてます。

なかなか家にはもどれんので、嫁が夢に出てくることが多いですが。

いつかこっちもくたばって、その後ずっと一緒にいれるんだから、我慢してもらわないと。

今はお金をためて、私らが死後くらす あの神社をもっとちゃんと修繕し、もういちどちゃんと、神社として神主を迎えられる状態にしないといけない。

でも、達観できていないです。人間の汚い部分随分とみてきましたから。

悟ってはいても、聖人とかの悟りかたじゃあない。だから、徳の高い人にあこがれるんですよ。

それに大層俗物でね。夢か現か今でもよくわかりませんが、嫁との夜のほにゃららが楽しみでならんのです。

死んだあとなら 嫁と子供つくれるんだろうかとか、本気でそんな事考えてる位の俗物です。

奇人変人の類。幽霊の嫁さんもってる自称神主にならなれても、徳の高い立派な神主は荷が重い。

だから、私は生涯かけて、神社本庁に登録された神社にしたいんですよ。

こういうとこの修繕費は、軽く数億すっとんでくんで、人間一人の夢にしちゃ、これでも大分でっかすぎます。

そのために大工やってるんですがね。お宮の仕事にも混ぜてもらって。

材料費だけそろえたら、あとは自分でなおしちゃろうと。

その色欲すら利用して、神仏は、私を選んだのかもしれません……

(了)

 

ふたり怪談(5) [ 黒木あるじ ]

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