【厳選】 怪談・都市伝説・怖い話まとめ

ネットで見つけた、都市伝説・怪談・ほんとにあった怖い話・世にも奇妙な物語・心霊系・不思議系・電波系・オカルト系のお話シリーズです♪

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スクラップ車の臭い【稲川淳二】

   

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私毎年ね、怖い映画の脚本書いたり、監督しているわけなんですがね。

もう何年前になるかな、だいたい撮影する所は決まっているんですが、東京の近郊での撮影の時の話です。

高い位置から撮影したいシーンがあったんですよ。

でも、近くに高台はないし、今からクレーンは手配出来ないし、何かいいアイディアはないかなって思ってたらね、地元でもって、我々の世話をしてくれてたその方がね

「稲川さん、フォークリフトじゃ駄目?」って言ったんですよ。

「あぁ、いいですね!あれば助かります」って言ったらね

「じゃ、この先に自動車の解体作業場があるんですよ、あそこなら、フォークリフトあると思うな、なんなら、私が頼んでみますよ」って言ってくれたの。

「あぁ、助かります」って、さっそく出掛けた。

田んぼ道をずーっと行って、やがて雑草の生い茂る荒れ地の向こう側に、板塀で囲った建物が見える。

板ベイの上から、車が山積みになっているのが見えるんですよ。

あぁ、あれだなって思いました。

やはり車はかこいの中に入って行って、プレハブでできた事務所らしき建物の前に止まったんです。

そしたら、事務所から格幅の良い男性が出て来てね、世話人と挨拶を交しているから、私達も車から降りて挨拶したんだ。

その人、この解体屋の社長さんなんですよね。

事情を話したら、「どうぞ、お役にたつなら、いつでも使って下さい」と快く承諾してくれた。

とても感じの良い方なんだ。

で、話ししながらね、私、ヒョイと車、見たんですよ。

私、車が好きだから「あぁ、こんなになっちゃうんだなぁ……」と思ってね。

新車の頃は、格好良く塗装されて、街を颯爽と走り回ったんだろうにな…って思ってね、見てたんですよ。

私が熱心に車見て、感慨に耽っていたからでしょうね、社長さんがね、

「稲川さんね、ここは、車の墓場ですよ……」

確に言われれば、そうなんですよね。

タイヤはない、エンジンは取られてる、窓ガラスも無いし、ヘッドライトも割れている……

塗装も剥げて、なかにはペシャンコに潰れているのもある……

言われみれば、ここにあるのは、車の死骸なんだなって思った。

「稲川さん、事故でもって焼けた車なんかね、いつまでもガソリンの臭いがとれなくて、近くに寄るとキナ臭いですよね」

「あぁ、そんなもんですか……」

「あとね、警察からまわってくる、事故で潰れた車…アレは嫌だなぁ、雨が降るとね、生臭い血の臭いがするんですよ」

「そうなんですか」

「ほら、事故で死んだ人の血をシートが吸って、それが雨に当たると臭ってくるんだよね」

「なるほど……」

「実は稲川さん、去年の夏にね、ウチの若いのがね、怖い目にあってるんですよ……人間が恐怖する顔って凄いね、よく汗を吹くって言うけど、あれは汗じゃなくて、脂を吹くんだね」って言うんですよ、で、話を聞いたんです。

去年の夏、ここで働く若い従業員が、一人残って作業していたそうです。

広い敷地の真ん中、車の山があちこちにある。

夏だから日が長いけど、やがて暗くなってきた。

スクラップ工場という所は、回りの塀のとこは灯りの配線がしてあるから明るいんだ、でも、中は配線が出来ないから、暗くなる。

さて、そろそろ引き上げようかなって思うけど、作業が思うように進むんで、もう少し、もう少しと長引いた。

そしたら、ポツ、ポツ、ポツ……

雨粒が落ちてきた。

あぁ、雨だ、もう引き上げようって、工具を片付けて、荷物を担いで立ち上がった途端に、ザーーッと降り出した。

夕立なんですね、結構強いやつ。

パタパタパタ、カンカンカン……

雨粒がスクラップ車の鉄板を叩く、ピチャピチャピチャ、地面に落ちた雨が、激しく跳ねる。

わっ、大変だ!

急ごうってね、彼は事務所に向かったんです。

そしたら、雨音に混じって、

ギィー、シャキ…ギィー、シャキ…ギィー、シャキ……

ん?

おかしいなと思った。

ワイパーの動く音がするんですよ。

なんでこんな音がするんだろ?

ここにある車は、エンジンもなければ、バッテリーもない。

窓ガラスも抜かれてますからね、ワイパーが動く筈がない。

それに、こんなうるさく雨音がするのに、ワイパーの動く音が聞こえる筈がない
んだ……

でも、聞こえる。

えー?どこから聞こえてくるんだろ?って周りを見回した。

どうやら、目の前にある車の山の上から聞こえてくる……

彼は、その山に近付いてみた。

ギィー、シャキ…ギィー、シャキ…ギィー、シャキ……

山の中程に、白い廃車がある、どうやら、その車から聞こえてくるらしい。

彼、確かめてみようと思ってね、もう、雨に濡れて、びしょびしょなんですが、工具を下に置いて、足場をみつけながら、その車の山を登りはじめた……

もう少しで辿り着く、その車、右側の部分が潰れているんですが、彼は左側から登ったから普通に見える。

白い車に辿り着くと、ガラスの外れた窓に手をかけて、よっこらしょ!

這上がった。

フロントウインドウが見えた。

もちろんガラスは抜けてありません、ひしゃげた枠だけ、そのガラスのないフロントウインドウ、そこに動いているんだワイパーが!

何でだ?

彼はよく見ようと、窓にかけた手に力を入れて、さらに登った。

左側の窓から頭を車の中に突っ込んだ、そして顔を上げると、ううっ!!

体が固まった。

自分の目の前、右側の潰れた運転席に、雨で全身ズブ濡れになった髪の長い女が、前を向いて座っている。

ギィー、シャキ…ギィー、シャキ…ギィー、シャキ……

前で動いているワイパーを、女が無言で見つめているんだ。

彼は瞬時にその女が生きている女じゃないとわかった、わかったけど、目が離せない。

やがて女は彼に気付いて、ゆっくり振り向いた。

逃げたいけど、体が動かない。

やがて女が彼の方を振り向いた途端、「うわぁぁ!」

彼は車から手を離して、下に落ちて腰を打った。

彼が見たのは、右半分が潰れた女の顔だったそうです。

雨の中、這うように事務所に逃げ帰った彼は、社長に事情を語った訳です。

「いや~、稲川さん、恐怖に引きつった人間の顔は凄いね……それから、警察から送られた事故車は嫌だね、とくに雨の日はね……」

って社長が話してくれました。

(了)

 

怖い本(1) [ 平山夢明 ]

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 - 稲川淳二

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