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【稲川淳二】樹海を走るタクシー【ゆっくり朗読】260

      2021/06/03

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私、毎年夏になると、怖い映画作っているんですよ。

場所もだいだい決まっているんですけど、富士の青木ガ原の樹海ってあるじゃないですか、そこが多いですね。

樹海の中に民宿があって、その近くで、深夜撮影をするんですよ。

樹海というのは、夜になると、真の闇ですよね。

照明のあたるところはいいですけど、一歩明かりの外に出ると、まったくの闇で、何も見えないですよ。

ストロボ点けて写真撮ると、人物は写るけど、後ろの樹木は写らないですよね。

そういう場所ですよ。

そんな状況の中、撮ってて、一息入れようかと思ってね、「じゃ、休憩入れようか」って言ったんですよ。

そうしたら、タバコを吸う人間も入れば、コーヒーを飲む人間もいるし、おしゃべりをしている人もいる。

私は現場でもって、スタッフの女の子と、あと、何分撮って、どうなって、まぁ、取り残しはないよね……

なんて、確認していたんですよ。

そんなことしながら、ふっと顔を上げたんですよね。

黒い闇の向こうなんですがね、明かりがポツンと光って、こちらに向かって来るんですよ。

「あら~」って思いました。

木々の間を、チラチラ、チラチラ、その明かりが、こちらに向かって来るんですよね。

車だな…って思ってね、その内に、ブウゥゥゥッ……

エンジン音が聞こえて来たんですが、結構なスピードで走っているんですよ。

「おおっ、樹海の中、結構跳ばしてるな」って思ってね。

どうも、様子からしてその車、我々の灯りを目指して来ている様な気がするんですよね。

ブウウウゥゥゥッ……

そのうち、「あぁ、タクシーだ」って、気付いたんですよ。

ヴロロロオォォッ!

キキッー、ズザザザッッ!

って、止まった。

そしたら、制作の女の子が、「ご苦労です!ここまでの料金お支払いしますんで、すみません領収書下さい」って、言ってるんですよ。

ところが、ぜんぜんタクシーの方は、返事がないの。

もう一度、「すみません、あの…料金お支払いしますんで、領収書お願いします」

って言っているんですがね、反応がない……

その内に、後ろのドアが、ふっと開いて、若手の俳優さんが出て来た。

そしたらこの人が、キョロキョロ周り見てるんですよ。

あら?って思った。

普通この業界ですからね、どんな時間でも、もう、車降りたらすぐに、「おはようございます!よろしくお願いします!」

これ常識なんです。

ところが、全然そういう様子がない。

そしたら、もう一方のドアも、ヒョイと開いた。

やはり、若手の俳優さんが一人出て来てね、見れば、ガタガタ、ガタガタ震えているんですよ。

あら、何か、おかしいなぁ?と思ったんですよ。

相変わらず運転手さん、ボーっと、前を見てるんだ……

で、その制作の女の子が、「すみません、ここまでの料金お支払いしますから、領収書お願いします」

って、言ってるんですがね、まったくダメ、反応がない……

で、その内、ふっと気が付いたようにね、突然ドア開けて出て来たんですよ。

そして三人がちょうど、車の前に並ぶような感じになった……

やっぱり様子がおかしいんで、みんなが段々と周りに集まって来たんですね。

私も行ってみた。

「はい、どうも!ご苦労さん!」って言ったら、向こうで、

「あっ、おはようございます!」って、言うんですよ。

「どうしたの?何かあったの?」って聞いたら、

「ええ…あの~…」って言うから、

「なに?良かったら、教えて」って言ったんです。

そしたら、「…実は、ここへ来る途中で、恐ろしい体験してしまったんです…」って言ったんです。

この二人の俳優さんっていうのは、明日朝一番からの撮影なんですよ。

で、前乗りって言ってね、前の晩に、現地に入るわけです。

制作の方から、FAXが行っている訳だ。

で、列車でもって、どこどこの駅で降りて、そこからタクシーで来て下さい、地図も付いている訳ですよ……

二人は言われるままに、列車に乗ってやって来た。

駅で降りて、タクシーに乗って、「すみません、ここまでお願いします」って、FAXを渡す。

受け取った運転手さんは、「ああ、ここね、はい解った、どうぞ!」

二人は乗り込んで、タクシーは、ブオッッ!と走り出したの。

はじめの内は、二人で話をしていたんですがね、しかし、走り出してしばらくすると、景色は変わらない、何も見えない、暗闇の樹々の間を走っているだけ、いつの間にか、眠ってしまったんですね……

そしたら、その内また、目が覚めた、何だか知らないけど、タクシーがガタガタ、ガタガタ揺れているんですよ。

やけに揺れてるなぁ…どんなとこ走っているだろ?

見れば、周りは鬱蒼たる木々なんですよね、何か変な感じ、そしたら、もう一人も目が覚めた、うん?まだ着かないんだ?と思った。

で、二人してフロントウインドウから前方を見てみると、これが、おかしいんですよ、前方を照らすヘッドライトね、照らしているのが、土の道でもって、雑草がウサっと生えてる……

轍は見えるんですがね、周りは鬱蒼たる木々に囲まれてる……

今時どんな田舎でも、車の通る道は舗装されてますからね、何でこんなとこ走っているんだろう?

変なとこ走ってるなぁ…と思ったの、そしたら運転手さんが、ポツとね、独り言のように、「おかしいなぁ…道、間違えたかなぁ?…」って、言うのが聞こえた。

冗談じゃないなぁと、思いながらね、「どうしました?」って、声掛けたら、

「えぇ、おかしいんですよね…方向はあっているんですがね…道間違えたかなぁ?」って言う。

嫌だなぁと思ったけど黙ってた……

そのままタクシーは、揺れながら走って行くんですよね。

すると、しばらく行くと、明かりの先に、チラッと車の屋根の様なものが見えたもんで、「運転手さん、あれ車かな?」

「ああ、そうみたいですね!地元の車だったら、道を聞いてみますよ」って、言いながら近付いていった。

タクシーが段々と近付いて行った……

そしたら、どうも様子が違うんですよね。

それは、鬱蒼たる雑草にね、埋まるようにして、屋根だけが顔を出して見えているんですよ……

塗装もはがれて、錆び付いている……

「運転手さん…これ違いますね…」

そしたら、運転手さんも、「えぇ、違いますね…」どうやら、放置車のようなんですね。

やがて、フゥーっと、タクシーが近寄った。

道は狭いですからね、スピードをグウッーっと、落とすわけだ。

そして、その放置車の横を擦れちがう訳ですけどね、その車、もうガラスもなければ、タイヤもない……

スピード落として、このタクシーが、放置車の横を、ズズッ、ズズッ…と進み始めたの。

放置車とタクシーの間は、せいぜい5、6センチ、車の間を雑草がザワザワ揺れている訳だ……

タクシーが、ズズッ、ズズッっと進んでいく、と、運転手さんの後ろに座っていた青年が、突然、「見るなぁっ!!」と叫んだの。

何だ?と思ってね、叫んだ青年を見ると、膝の間に顔を伏せて、ガタガタ、ガタガタ震えてるもんだから、自分も「うわっ」と怖くなっちゃって、下向いて震えてたの……

でも、運転手さんは、そうはいかないですからね、運転している訳だから、何だろう?

と思いながら、ズッ、ズッ、ズッと、進んでいったの、やがてタクシーが、この放置車の横にピタッと並んだときね、突然

バン、バン、バン!バン、バン、バン!

窓を叩かれたもんだから、三人が思わず、ヒョイと窓を見た途端、「うわぁ~!!」と、悲鳴をあげた。

なんと、誰もいないはずの放置車の窓から、頭から血を流した女が、上半身をヌウッと乗り出して、窓に顔をくっ付けるようにして、窓を叩いてる!

そして、叩きながら、ドアをガチャガチャと開けようとしている訳だ!!

「うわあぁぁぁ!!!」

もう、運転手さん、夢中でアクセル踏んで、あちこち車ぶつけて、ブオォォォッ!とスピード上げてタクシーを走らせた。

やがて、塗装した道にでたもんだから、ブワッ!と走らせた……

やがて人心地ついたんで、一方の若手の俳優さんかね、「運転手さん、今のは一体なんですかね?…」って、聞いた。

すると運転手さんが、「いや…前にね、放置車の中に、死体があがったって聞いたことあるけど…それかなぁ?」って言った。

すると、もう一方の青年が、「でも、運転手さん、何だって、あんな道、走ったんです」って聞いた。

運転手さんが、「いや…お客さん達がこっちだと言うから、走ったんですよ」って言ったんで、「いいえ…僕たち寝ていたんで、そんなこと、言っていませんよ…」って言ったら、運転手さん、「え?…じゃ、あれ、誰が言ったのかなぁ?…」って言ったそうですよ……

まぁ、運転手さん、暗いところ、一人で帰るの嫌だってことで、明るくなるまで、我々と一緒にいましたがね。

で、明るくなったんで、みんなで行ってみよう、ということになったんですよ、で、行ってみた。

でも、探しても、そんな道ないんだ……

もちろん、そんな車もない……

だけど、私は、三人が嘘を言っているとは思わない。

(了)

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 - 稲川淳二

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