【厳選】 怪談・都市伝説・怖い話まとめ

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【稲川淳二】渓谷の怪【ゆっくり朗読】118

      2021/05/17

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もう何年も前になるんですがねぇ。私、あるテレビの番組をやってましてねぇ。

スターさんの、ふるさとを巡る、そんな番組でした。

で、このときは松原のぶえさんの故郷を巡る、そんな番組でした。

彼女、九州出身でしてね、やばけい というところで、すっごく綺麗な所でしたね……

水の綺麗な所で、すごかったなぁ。渓谷、緑に包まれて。

で、そこには、伝説になった「青の洞門」というところがある。

ここ、観光地として有名なところですよ。

まぁ、そういうところを撮りながら、松原のぶえさんの懐かしい場所、思い出の場所を、まわって歩く。

そんな番組の撮影中に、ある場所で。

「ここの景色、いいじゃない」って、みんな、立ち止まった。

「ああ、そうだねえ」

ちょうど、自転車でもってね。松原さんと、私二人で、サイクリングをしているような状況でもって、ここ、紹介しょうじゃないかと……

そういうことに、なった。

ワクワクしますよね。松原さん、美人だし。

二人で並んで、自転車で行くなんて、なんとまぁ、こそばゆい思いだ。でも、うれしい、正直言って。

そこ、山の中なんですよねえ……

道が一本、すうっ……と上がって、反対側に、下りている。

その道の途中には、斜めに路線が横切っていた……

それ、単線でしたね。

すでにもう、廃線になってましたけど……

かつてはそこに、ローカル線が、走っていたそうです。

で、その先のところに、ちょうど、道から横にそれるような感じで、鉄橋が、あった。

これが、また、うまい具合に渓谷をまたいでいるんだ。

で、鉄橋を渡って、向こうに行くと、おっきなトンネルが、黒い口を開けて、待っている。

古い、ふるいトンネル……

非常に風情はあるんだけども、なんとなく、怖い……

まだ、そのときは、昼間だから、よかったんですが、ねぇ……

そこ、立って見ていると、昼間なのに、車が、ぜんぜん来ない。

で、そこで、カメラを回す。

松原のぶえさんと、私、二人が自転車で、並んで走って、トンネルに入っていこうと。

そういう演出で、考えて、撮ることにしたわけだ。

今はねえ、だいたいそこ、サイクリングロードとして使われているんでしょうね。きっと。

二人、並んで、自転車に乗って、すっーーっと、トンネルに向かって、走った。

すーーっと、行って、入り口に入ったところで、カット!

まぁ、撮影、うまくいった。

「はい、ありがとうございました!」

「どうもありがとうございます」

じゃあ、と、ディレクターさん、「今度は、二人が並んで、トンネルから出てくるところ、撮りますんで、スタッフは、反対側に移動のほう、お願いいたします!」

で、スタッフ、移動する。

私達は、「5分ほどしたら、スタートしてください。反対側で待っていますから」と、ディレクターさん。

カメラさん達は、歩いて移動して、トンネルの反対側に行った。

自転車に乗る二人、私達はみんなを見送って、待ってる。

私はワクワクして、自転車にまたがったまま、待ってた。

周りの景色なんか見てたんですが、「そろそろ、5分たったかな、じゃあ、行きましょうか」

松原さんも、「はい!」てんで、出発することにした。

二人、自転車に乗って、「じゃあ、行きますか…」

陽気に、行ったわけだ。

鉄橋の上から、すーーーっと走り始めた。

と、いつ来たのか、どっから来たのかわかんないんだけれども、我々の前に、すっと、自転車に乗った女の人が、出てきた。

突っ切って、トンネルの中に、入ったんだ。

で、これ、トンネル入るときのシーンは、松原さんと、私。二人でしたから。

それなのに、トンネル出てくるところで、自転車が三台だと、どうも具合が悪いですからねえ。

「今の人、先に行かせましょうね」

って、私、言って、松原さんと、少し、そこで、待つことにした。

時間をためて、女の人とタイミングをずらしてトンネル出られるころ合いを見計らって、「じゃあ、ボツボツ行きましょう」てんで、二人、出発した。

これで、二人だけ、トンネルから出てくるところが撮影できますから。

具合が、いい。

で、二人、走った。

鉄橋を、渡って、トンネルに入った。

ところが……

トンネル、中に入ったら、真っ暗だ……

「ええっ!」

驚くほどの、暗さ。

要するに、普段は、人の通るトンネルじゃあない。

しかも、もともとは、電車なり、ディーゼルカーが通っていたわけですから、明かりがいらなかったんだ、このトンネル。

そんなことに、気付いた。

で、しょうがないんで、自転車の明かり、付けた。

二人、ちいちゃな明かりでもって、前を照らす。

なんともね……手堀りのような、古い、トンネルなんですよねぇ……

もう、真っ暗。

そこ、行きながら、えっ!と、思った。

トンネルに入った。

中、真っ暗。

それは、わかる。

でも、私たち二人ともライト点けているんだけど、前の方に、なんと言うか、その、先に行ったはずの自転車の気配が、ないんだ……

人が、いない……

「あれ!?」

今さっき、たしかに、我々の目の前を突っ切って、自転車に乗った女の人が、入ったんだ。

が……

前方に、誰も、いない。

見えないだけか?

「変だな」と、思いながら、でも、もちろん、私達途中で誰も、抜いていませんから。

 

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で…、前方、次第に明るくなってきて、出口が見えた。

「ああ、出口だ!」

「もうすぐですねえ」

二人、笑いながら、さーーーっと飛ばして、出てきた。

トンネル出て、カメラの方に向かって、にこっと、笑いながら、横をすーーっと通り抜けて行くと、「カット!」

「お疲れ様です!」

「いやあ、ありがとう、どうも」

私、自転車から降りて、ディレクターに、「いやあねえ、先に女の人がトンネルに自転車で入ったでしょ。一緒に行くとまずいかなと思って、少し時間あけたんだけど、大丈夫だった?」

聞いた。したら、彼、「えっ?誰も、来ませんよ」

「我々の前にさあ、若い女性の人が、自転車に乗って、来たでしょ?」

言うと、「いやあ…どなたもとおっていませんけど…」

「……」

おかしいな……

私も、松原さんも、はっきり見ているんだ……

でも、ふうん、って思いながら、そこでなんか、いやあな気がしたのを、なんとか、吹き消そうとしたんです……

で、撮影、無事にすみまして、ロケバスに乗る。移動だ。

途中の移動でもって、長くて、まっすぐで、平坦な道を、通った。

二車線の道ですよ……

ほとんどね車なんて来ない。

で、この、真っ直ぐな道にそうようにして、川の流れがある。

あるんだけども、川の両岸というのが、竹やぶに、なってた。

ですから、その、竹やぶのあいだから、川を見るいう、そういう感じだった……

乗ってて、ひょいと、そちらを見たんですが、なんか、変だ……

なんか、変だぞ……

竹やぶの、上の方に、なんかが、絡みついている。

ゴミだとか、糸だとか、なんだかいろいろなものが、絡みついてて、おかしい……

おかしい。

なにが絡みついているんだろう?おかしいなあ?
と……

したら、車の中の、スタッフが、「ああ、ここらへん、いつか、だいぶ前のことですけど、大洪水になりましてねえ」と……

「上のほうまで、ずいぶんと水が行ったみたいですよ」

ああ、なるほど……

その時に流れたもんが、竹やぶに 絡み ついて、取れないまんま、残っているんだ…と。

「へえ、そうか」

だけど、これ、なんとなく、不気味なんですよね……

風が吹くと、さっーーーと、揺れるじゃないですか、笹なんかが。

葉が、揺れる、さっーーーと、上の方で、ひらひら、してる。

ちょっと、見ようによっちゃあ、七夕の笹竹に、見えないこともないんだが。

で…こっちも、ぼーーーっとして、真っ直ぐな道ですから、ぼーーーっとして、車に乗ってた。

と、突然、キィィィ!

車が、ハンドルを、突然、右に切った。

「!?」なんだ……

なんか、よけたと思った、車が。

「うわっ…」

私はねえ、そのロケバスの、最後尾の、一番右側に、座っていた。

隣に、松原さん。

ハンドルが、いきなり切られたおかげで、ぐっーーーと、顔が、ウインドウのほうに、右側の窓に、押し出されて近づいた。

と……バスの窓のところに、自分の顔が、ひょっ、と引っ付きそうになった瞬間に、うおっ、となった。

外の、通りなんですが、ガラス越しに、見た。

見たんだ。

頭っから、真っ赤に、血だらけになった男が、立っていた。

こっち、じぃーーーーっと、二人、見ている。

ううっ

バスは、そのまま、走ってるから。

慌てて、私、振り返った。で、見たんだ。後ろ。

ウインドから、眺めた向こう側には……

誰も、いない。

ただ、通りが一本、ずーーーーっと、続いているだけ……

誰も、いないんだな……

この、バスが揺れたのは、みんな知ってますからねえ……

「着きました」

バス、停まった。

いったん目的地に着いて、で、私、運転しているスタッフに、聞いたんだ。

「さっき、なんか、よけたみたいだけど、なによけた?」

したら、「覚えがない」って……

なぜよけたのか覚えがないけれども、なにかをよけたことは、覚えているって……

「思いだせないんですよ、稲川さん」と。

見えないけれども、彼は、その運転していたスタッフは、きっと、なにかを、よけたんですよねえ……

とっさに、…ねえ……

不思議な事が、あるもんですよねえ……

いったい、なんだったのでしょうか。

その日は、私、なんだかいろんなものを背負って帰ってきたような。

そんな思い出があるんですよねえ……

(了)

 

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 - 稲川淳二

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