【厳選】 怪談・都市伝説・怖い話まとめ

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廃村屋敷のバイト

      2016/10/12

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俺はある大学に六年いたんだが、これはその五年目の話。

898 :本当にあった怖い名無し:2015/12/05(土) 21:30:14.34 ID:87hiRPoC0.net

授業はほとんどなくてね。就職活動が嫌でダラダラしてたんだが、ずっと金欠なのにはまいった。バイトはしてたよ。便利屋の下請けみたいなこと。

そこの便利屋は退職したジイサン三人でやってたんだが、体力のいる仕事の場合は、俺を含め、つてのある大学生に回してきた。

不定期だったが時間だけはあった。

で、そのときのバイトというのが、ある田舎家の清掃だったんだ。

それと池さらい。これがすごいバイト料がよくて、二日間で五万円。

ちょっと考えられないような額だろ。

このときに少し疑ってかかればよかったんだが……

メンバーは俺を含め三人、それと便利屋のジイサンが一人監督でついてきた。

その人がハイエースを三時間運転して現地まで行ったんだよ。

時期は八月の終わりで、大学はまだ夏休み中だった。

着いた先は、まあ簡単にいえば廃村だな。過疎が進んで人の住まなくなった村。

住所は言うのはひかえておくよ。廃村といっても、実際は年寄りが何世帯かはいたみたいだった。話をする機会とかはなかったがね。

その村の小高い丘の上にある典型的な豪農の屋敷。

世が世なら庄屋とか名主の家柄なんだろう。平屋だが二〇部屋近くあった。

庭も広くてな。手入れされてない植木が雑草に埋まってたよ。

九時に向そこに着いて、まず最初にやったのが池さらいだった。

家の縁側にそってくの字に曲がった池があったんだ。

水は緑色に濁ってて、生き物が住めそうには見えなかったな。

「ここは水抜き穴もあるし、ポンプも持ってきてるけど、このままだと詰まってしまってジイサンは、どうにもならないから、これで大きなゴミをさらい出して」

そう言って、かなり頑丈な柄つきの網を三本取り出した。

それで、さらったゴミは木箱に詰めて持ち帰るっていう。

ジイサンの一人が、夕方頃に木箱を別の車に積んで持ってくるってことだったんで、それまでさらったものは、池の脇の草の上に積み上げておくことにした。

でな、二人と一人にわかれて両端から池をさらい始めると、上がってくるのは全部骨だったんだよ。犬といっても、大型犬はなかった。

小型犬やら猫、あるいはイタチとか山の野生の動物の骨。

まあ俺にその区別がつくわけじゃないが、頭蓋骨の形で人間のものでないことはわかった。

一回網を入れると、ずっしりという感じで藻で緑に染まった骨が上がってくるんだ。

それをザラザラと池の脇に積み上げていく。

まだ暑い時期だったから大汗をかいたよ。骨はいくらでも出てきたんだ。

何十体、いや百体近い小動物の死骸が投げ込まれてたってことだな。

これをさらうだけで、コンビニ弁当の昼飯をはさんで四時間はかかった。

ある程度までさらったところで、水抜き栓を開け、さらにポンプを使って水を草むらに流した。

底が見えてきたが、泥がたまってて、その中にも何本も大小の骨が沈んでたな。

そういうのも泥と一緒に全部拾い上げてるうち、二台めのハイエースが大きな木箱を二つ持ってきた。

それにさらった骨を入れてると、さすがにあたりが暗くなってきた。

この日は泊まりだったんだよ。昼よりは少し豪華なコンビニ弁当が配られて、それが夕飯。

その後は屋敷の一番庭に近い部屋に入って俺たち三人が泊まる。

ジイサンら二人はそれぞれ車で帰ることになってた。

夜の間に、さらった池に水を入れるって言ってたな。

その部屋は掃除されておらず、まずホコリをぬぐって寝場所を確保するところから始めた。

布団はなしで、それぞれ一枚ずつタオルケットを渡されただけ。

それで寒いということはないし、むしろ暑いので雨戸はもちろん、ガラス戸も少しずつ開けてた。

蚊が嫌だったし、蚊取り線香も渡されていたが、これがほとんどいなかったんだ。

電気はついたけどテレビがあるわけでなし、ラジオも持っては来てない。

これもジイサンたちから差し入れのウイスキーを飲みながら雑談してたが、十時ころには半ば腐った畳の上に寝た。昼の作業で、体が疲れきっていたんだよ。

バイトは数々やったが、その池さらいはかなりの重労働だったんだな。

でな、部屋の電気を消したとたん、ギィー、ギィーという音が頭の上から聞こえてきた。

屋敷は広いけど平屋だから、上階からの音じゃない。

「なんだよこれ。うるせえな」仲間の一人が言った。

「家鳴りだろ、でなきゃ屋根の上に野生動物がいるとか」

「家鳴りって、さっきまで聞こえてなかっただろ。風もないし」

「猫がさかる季節じゃないけど、俺らの知らない山の動物かもしれん」

「赤ん坊の泣き声みたいで気味わりいな」

こんなことを言い合ったのを覚えてる。

けど、その音は五分ほど続いてやんだんだ。それと同時に、俺はことっと寝入ってしまった。

 

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それから何時間ぐらいたったか、仲間の「うわーっ」という叫び声で目が覚めた。

そしてすぐ電気がついた。

「なんだよ。何かあったのか」俺が立ってるやつに声をかけると、「今、顔の上を何か踏んでった。小さいものだ」

こう言った。

「あー、やっぱ戸を開けてるから動物が入りこんだのか」

「いや、動物……そうかもしらんけど、どうもなあ……」

そいつは何だか煮え切らない返事をした。部屋の中を見渡しても何かがいる様子はなかった。

その部屋から他へ通じるふすまは閉めてあったし、もし動物が入ってきたとしても、またガラス戸から出たのか、でなきゃそいつが寝ぼけただけだと思った。

時計を見ると四時だったんで「もうすぐ夜が明けるし、暑くないから戸を閉めて寝るぞ」

で、また俺は吸い込まれるように寝てしまったんだ。

次に目が覚めたのは八時過ぎで、仲間は二人とも起きてて、縁側から庭の池を見ていた。

俺が起きていくと、池の水が三分の一ほどたまってた。

便利屋のジイサンの一人が来てて、車から小ぶりの箱を持ってきた。

何をするんだろうと思ってたら、箱の中から金色の仏像、

一五センチくらいの小さなものだったが、それを三体、池の水の入った底に間隔が均等になるようにして立てたんだ。

「あれ見ろよ」

仲間が池の底を指差した。

澄んだ水の底に、小さな足跡のようなのがいくつもあった。

人間の、赤ん坊の足跡のように思えた。

朝飯のおにぎりと牛乳をジイサンからもらって、その日の仕事を聞いた。

家の中の拭き掃除ってことで見取り図を渡された。部屋数を考えて俺らはげんなりしたよ。

ただし、トイレや風呂、その他にも掃除しなくてもいい部屋もあって、そこには入るなってことだった。

雑巾とバケツを渡され、雑巾は汚れきったら捨ててもいいと言われた。

それと奇妙なことだが、バケツの水は池から汲めって言われたんだ。言われたとおりにしたよ。

一人が六部屋の担当で、ホコリのせいで雑巾はすぐダメになった。

バケツの水もすぐに真っ黒になって、何度も草むらに捨て、池から汲みなおした。

そんなこんなで、昼飯をはさんで全部終わったのが三時過ぎだったな。

それからジイサンのハイエースに乗って、大学のある街に帰ったわけだ。

着いたら六時過ぎてて、ジイサンは

「あんたら頑張ったから、色つけてある」

そう言ってバイト料の封筒を渡してよこした。中を見ると六万円入ってた。

二日で六万円は、かなり疲れたがたしかに割はいい。だけど何か釈然としないものがあったんだ。

それで、ジイサンが帰ってから三人で近くのファミレスに入った。

金があるんでステーキを注文して、いろいろ話した。

夜中に叫んだやつは

「俺の顔の上を通ってたのは、赤ん坊じゃないかと思う」

「だってよう、動物なら毛があるだろ。それがすべすべしてたし、なんかミルクのにおいもした」

もう一人も

「あの池さらい変だよな。何であんな動物の骨が入ってるわけ?それと……
これは違うかもしれないけど、形の残ってる頭蓋骨は犬猫のものだろうけど、くしゃっとつぶれたやつの中に、人間の赤ちゃんじゃないかと思えるのがいくつかあった。それにジイサンが池に沈めた仏像はありゃ何なんだ?変すぎるだろ」

それから三人でいろいろ考えたが、はっきりしたことはわからなかった。

ただ、何か赤ん坊に関係があることだとしか……

でな、これからのことは関係があるかはわからないんだが。

俺はこの後、大学はなんとか卒業したが、就職はせずにアメリカに渡った。

観光ビザで不法就労してたんだよ。向こうで女もできてな。

結婚するつもりはなくて避妊してたんだが、子どもができてしまって。

彼女は産むといってきかなかった。

だから俺も向こうの人になる覚悟を決めようと思ったわけ。

ところが、五ヶ月目に流産してしまって、それをきっかけに別れることになったんだ。

日本に戻って就職した。ベンチャー企業でやりがいがあるし成功してる。

結婚もしたんだよ。だけど二回妊娠して、二回とも流産だったんだ。

医者の話では、女房の体に問題があるということではないようだった。

でな、このバイトのことが気になるんだよ。俺以外の二人が今どうなってるかも。

(了)

 

女之怪談 [ 花房観音 ]

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