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私の母?の・ようなもの。【意味がわかったら怖い話】

      2016/10/09

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四歳か五歳か、小学校に上がる前の、夏の終わりの話。

2014/05/19 21:33:12

私は田舎にある母方の祖父母の家で昼寝をしていた。

喉が渇いて目が覚めて、違和感を覚えた。

何回も遊びに来ている家だけど、何かが違う。

部屋にあったはずのおばあちゃんのベッドがなぜか仏間にあるし、ただの壁だった縁側の突き当たりに謎の扉があるし。

広い家の中で私を一人ぼっちにして、おばあちゃんはどこかへ出かけたようだった。

セミの声もしないし、おじいちゃんが大事にしていた小鳥も小魚もいなくて、昼寝前にいとこと遊んでいた客間には、見慣れないティーセットが何組も飾られた、ガラス張りの食器棚が出現していた。

今まで寝ていたお座敷に戻ってみると、さっきまであったタオルケットがなくなっている。

ここで半ベソ状態だったんだけど、玄関の引き戸をトントンと叩く音がしたから、おじいちゃんが早く帰ってきた!と思って、涙も引っ込んだ私は廊下に出た。

おじいちゃんはいつも帰ってくると引き戸を軽く叩いて、おばあちゃんを呼んで戸を開けてもらって家に上がってきていた。田舎だから鍵はかってなかったけど、おばあちゃんに開けてもらうのがおじいちゃんのマイルールだった。

引き戸はすりガラスで、人の影が立っているのが見えた。

その人影は頭部が異様に大きくて、首から下は妙にひょろひょろと細長かった。

そのシルエットにビビった私はお座敷に戻ってふすまを閉めて、仏壇の座布団の下に頭を突っ込んで震えていた。

いつの間にか寝ていたようで、「おつかいありさん」という童謡を歌うおばあちゃんの大声で起きた。

歌うことも珍しいおばあちゃんが大声で歌っているのにもびっくりしたけど、なくなったタオルケットが体にかかっていて、仏壇のあるお座敷の奥ではなく、縁側に寝ていたのにも驚いた。

おばあちゃんがアイスをくれるというので起きあがった私は、縁側の突き当たりに扉を見つけてしまって大泣きした。

おばあちゃんは

「ママは結婚式で遠くへ行っちゃったのよ」

「みさきちゃんはお留守番できるって言ってたじゃない」

となだめようとしたけどそうじゃない。

客間へ走っていったらやっぱり食器棚があって、私は食堂のテーブルの下にもぐってわあわあ泣き続けた。

おばあちゃんは根気よく私をなだめてアイスを食べさせてくれた。

夜になって、玄関から「トントン」と音がした。

おばあちゃんと一緒に廊下へ出ると、あの頭部の大きいひょろひょろの人影が二つうごめいていた。

彼らは直立しているのではなく、手足を妙にぐにゃぐにゃと遊ばせていて、不気味さが増していた。

私は再び食堂のテーブルに潜り込んだけれど、引き戸を開ける音がした。

おばあちゃんに

「みさきちゃん、お迎えが来たよ」

「おじいちゃんとお父さんだよ」

と呼ばれ、私は仕方なく玄関に行った。

異様に大きい頭部は人間の顔ではなく、両目とも黒目が描き込まれたダルマに似たものだった。

二人とも夏だというのに真っ白い長そで長ズボンで、手足をぶらぶらぐにゃぐにゃと遊ばせていた。

怖すぎて声も出せず、食堂のテーブルの下で丸まって泣いていると、おばあちゃんが女の人を連れて戻ってきた。

おばあちゃんが言うには、その女の人が《みさきちゃんを迎えにきたママ》

で、女の人は

「結婚式に出ていて迎えに来るのが遅くなってごめんね」と、私にあやまった。

母にとてもよく似た別人…というとはっきりしないけれど、うり二つの双子のような、なんとなく雰囲気が違う、そんな感じ。

母は上に兄姉がいる末っ子で、双子ではない。

母を名乗る女の人に連れられて、当時住んでいた都市部のアパートに帰ったが、見覚えのない巨大な扇子が部屋に飾られていたり、玄関の横に物置のような部屋が増えていた。

《反省部屋》と呼ばれていて、母に叱られた後に、夕ご飯までそこに閉じ込められることが何回かあった。

父親は記憶の通りの顔かたちでホッとした。

それからも祖父母の家に行くことが何度かあったので、現れた縁側の扉や客間の食器棚、消えた小鳥と小魚についておじいちゃんに聞いてみた。

現れたものは元からあって、消えたものは元からないことになっていた。

おじいちゃんは私が小鳥と小魚を欲しがっているのかと思ったようで、次に遊びにいった時には玄関に鳥かご、居間にアクアリウムがあった。

母は「急に水そうとか鳥とか、お父さんどうしちゃったんだろう」と不思議がっていた。

私が高校を卒業する頃には祖父母とも亡くなってしまった。

私は県外の大学に進学したために二年前に家を出て、今は父、母、妹の三人で暮らしている。

今年の四月に母から電話がかかってきた。

祖父母の家で遺品整理をしたという。

「いつの間にか客間にばかでかい食器棚増やして、使いもしないティーセット飾っちゃってさあ」

とぐちられてゾワっとした。

その日は適当に話を合わせて電話を切り、GWに帰省した。

十数年見慣れた母と現在の母の違いは、私にはもうあいまいになってしまったが、母から生まれた妹には

「ママ、お姉ちゃんがいなくなってから違う人みたいになっちゃった」

と言われた。

「どういうふうに?」と聞いたら

「なんとなく別人な気がする」というはっきりしない答え。

帰省する当日、母と二人でお昼ご飯を食べながら

「おじいちゃんちに小鳥と小魚いたけど、なんで飼い始めたんだろうね」

と何気ないふうをよそおって話を振ると、

「昔から、鳥とか魚とか、何がかわいいのかわかんないもの飼うの好きな人だったからねえ。実家にいた頃はママがお世話してて、ママの部屋だった離れを鳥屋敷にするくらいいっぱい飼ってたときもあったのよ」

と苦笑いしていた。

私の母は戻ってきたが、妹を産んだ母はどこに行ったのだろう。

父はこの異変に全く気づいていない。

(了)

 

「超」怖い話(申) [ 加藤一 ]

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