【厳選】 怪談・都市伝説・怖い話まとめ

ネットで見つけた、都市伝説・怪談・ほんとにあった怖い話・世にも奇妙な物語・心霊系・不思議系・電波系・オカルト系のお話シリーズです♪

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布瑠之言

      2017/05/31

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その日俺は仕事の帰りで、駅前で少し買い物をした。

時間は7時過ぎだった。

いつもは駅の乗り場からバスに乗るんだけど、店に寄ったために2つほど離れた停留所でバスを待ってた。

すると近くの街路樹の手が届くくらいの高さに折りたたんだ白い紙があるのが目にとまった。

濡れてもおらず、ごく最近つけたように見えたんで何気なく手に取ってみた。

たんに枝にはさんであっただけみたいですぐに取れたけど、和紙がおみくじみたいに細長くたたんである。

開いてみると

布留部由良ト由良加之奉ル事ノ由縁

と細い毛筆で書かかれている。

その字を見たとたん頭の後ろでいきなり銅鑼を叩かれたような衝撃があったけど、音がしたわけじゃない。

それからこの内容はそのときに暗記して覚えたんじゃなくて、検索して調べたんだが合ってるかは自信ない。

当然そのときは俺には意味不明の字のられつとしか思えず、やっぱりおみくじのたぐいかと考えて元の場所に戻しておいた。

しばらくしてバスが来たんで乗り込んだんだけど、乗り込んですぐにあれっと思った。

ほぼ毎日このバスを利用するんだが、いつもは混んでて座れないときもあるくらいなのに、乗客がまばらにしかいない。

しかもバス停には俺の他にも待ってた人が何人かいたのに乗り込んだのは自分だけ。

てっきり間違えて乗ったんだと思って行先の案内を見たんだけど、ふだんのバスだった。

ゆっくりできるなら飲み物でも買ってくりゃよかったと思いながら近くに座った。

するとすぐ目が変なのに気づいた。座った自分の体がぶれて二重に見えるんだな。

うまく言えないんだけど輪郭の線が二重になって、自分の膝が四つあるようになって見える。

仕事で何時間もパソコンに細かい数字を打ち込んでるんで、疲れ目かと思って目をつむって指先でかるくまぶたを揉んだ。

その後目を開けてみると、まだ目の前の手が二重に見える。

これは病院に行くべきかと思ったが、奇妙なことに気がついた。

ぶれて見えるのは自分の体だけで、バスの座席やなんか自分の体以外はなんでもないんだ。

そのとき後ろの座席から

「おじさん体が二重に見えるんでしょ。それ重なってるからだよ」

と、子どもの声が聞こえた。

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振り返ってのぞいてみると、黒い長いグランドコートを着た小学校高学年くらいの男の子がいる。

スポーツ刈りで首がひょろっと長く両手で四角い箱のようなものを持ってて、それには白い布がかけてある。

「えー、重なってるってどういうことだい?」と聞くと、

「さっき木の枝の紙を見たでしょ、あれもののべのはらえだから。何であんな粗雑な始末をするんだろうね」

と、その年頃らしくない口調で言うんで、

「もののべのはらえってどういうこと、何なのあの紙?」

と、さらに尋ねると、子どもは

「説明はできないけど、このままだと分離しちゃうよ。関係ない人には迷惑かけられないから、なんとか元にもどしてあげる。そんなに難しくもないよ」

そういう言葉の一つ一つが妙に重みがあって、さからえない気分になるような声なんだ。

「おじさんさっき店で買ったのは何?おみやげ?」

と聞いてくるんで、

「そうだよ。息子に頼まれてたゲームのソフトなんだ。でもどうして買い物をしたことを知ってるんだ?」

「なんとなく……それこれと交換しようよ。そうすれば元に戻れると思う。そうしてよ!」

その声はもう催眠術のように逆らえなくて、俺はバッグからソフトの包みを出してその子に渡した。

男の子は座席に立ち上がったようで、上からそうっと箱を渡してよこす。

「おじさんこの箱ね、あした一日神棚か仏壇に供えておいて。明日の昼過ぎまでぜったい中を見ちゃだめだから。それ過ぎたら中身は捨ててもかまわないよ」

と言う。

箱を手にとってさわってみると、軽いけどでこぼこした固い感じがある。

子どもは「これで交換は済んだよ、契約だから守ってね……まだいつも降りる場所じゃないんだろうけどここで降りて」

そう言ってブザーを押した。

わけがわからないままにバスを降りると四つくらい手前の停留所だった。

バスを見上げると、がらがらだったはずなのにぎっしり人が乗ってる感じがする。

男の子が窓から手を振ってるのが見えた。

気がつくと目はもう治っていた。家に着いてすぐ箱を神棚に置いてから

「もののべのはらえ」を検索して調べたら「物部の祓」のことだとわかった。

その方面には詳しくないんで間違ってるかもしれないけど、どうもおみくじに書いてあったのはその中の

布留部由良ト由良加之奉ル事ノ由縁

という部分によく似ていたように思う。

翌日は気味が悪かったんで駅からそのままバスに乗って家に帰り、神棚から箱をおろして白い布を取ってみた。

中から出てきたのは竹製の目の詰んだ虫かごで、中には干からびた蝉の死骸が一つ転がってた。

(了)

 

呪術探究(巻の2)/呪詛返し [ 原書房 ]

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