【厳選】 怪談・都市伝説・怖い話まとめ

ネットで見つけた、都市伝説・怪談・ほんとにあった怖い話・世にも奇妙な物語・心霊系・不思議系・電波系・オカルト系のお話シリーズです♪

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天に還る兄

      2016/07/20

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ちょっと前に、友人の後藤の兄が亡くなった。

俺は後藤の家に行って焼香を上げた。

後藤と俺は昔から、それこそ一番古い記憶にも顔をだしている位の付き合いだった。

後藤の兄は俺達よりも6つ離れていたが、“世話係”といった感じで、渋々ながらも俺達の面倒を見てくれていた。

だから結局、後藤と同じ位に古い記憶に残っている。

後藤の兄さんは凝り性というか学者タイプで、大学もダブって院までいって、研助手になってひたすら研究していたらしい。

愛想は良くないし、教授の事も良く無視して自分の事ばかりやっていたので、『生真面目な変わり者』と思われていたらしい。

良くは知らないが、キノコとか粘菌の研究だったらしい。

彼は都合4年かけて、集大成の論文を上げたばかりだった。

それは彼の最後で最高の、まさに人生を賭けた結晶だったのだと思う。

彼自身「これ終るんだったら、ピリオド打っても良いくらい」と良く言っていたそうだ。

後藤も「そういう意味の言葉は始終聞いていたな」と、眉を八の字にして泣き笑いしていた。

「でも、まさか本当に逝っちゃうなんてなぁ……」

「あんちゃん、加減知らないから」などと言ってまた泣き笑い。

「俺、今日はここにいてもいいかなぁ」

「いいよ。あんちゃんもその方が喜ぶよ。なんだったら寝ちゃってもいいし」

それで俺は、通夜を彼の家で過ごした。

「でも、あんちゃんはあれで良かったんだよなぁ」と後藤が言った。

何故かと問うと、「あんちゃんは、もうこの世でやる事は全部やり終えたから、天に帰ったんだよ」

後藤はそうやって納得しようとしていた。俺もそう思えた。

否、思いたかっただけかも知れないが、その時は否も応もなく、その場にいた人達は全員頷いていた。

確かにそうだった。誰もが彼の死に、天命に近いものを感じていた。

「すべき事を終えて、彼は満足に死ねたよね」と誰ともなく囁いて、泣いていた。

棺の中の顔は安らかで、少し微笑んでいる様だった。

それで気が弛んだのか、俺は横になった拍子に寝てしまった。

夢を見た。

公衆便所の様な、タイル張りの廊下にいた。

廊下の先が何処まで続いているかは見当が付かない。果てがない廊下だった。

僧侶がいた。

袈裟を纏って、静々と果てに向けて歩いている。その背は綺羅の如く輝いている。

そして、丑に乗った彼がいた。丑は白く大きかった。僧侶は丑を引いて歩いている。

彼はそれの背に乗って、果てに向って歩んでいた。俺は思わず手を合わせた。涙が出た。
ああ、やっぱり彼は、天国だか浄土だかにいけるんだな。と思った。

ふと横に気配を感じた。後藤がいた。彼も手を合わせて、頬に涙を伝えていた。

その他にもいつの間に集まったのか、一〇人あまりの人々がいた。

見知った顔もあれば知らぬ顔もある。皆一様に首を垂れて合掌していた。

みんな心から感動していた。これが生ききった人間の昇天なのだ、と思っていた。

 

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みんなで彼を見送っていると、彼がくるりと振り向いた。

くしゃくしゃの泣き顔だった。

「みんなぁ……」と彼が言った、と思う。

みんなは微笑んで頷いて、手を振ったりした。彼は更に顔をぐしゃぐしゃにさせて、駄々をこねる子供みたいな顔になった。

「やだぁ!やだよぉ!怖いよぉ!死にたくない死にたくない死にたくないよぉ!!誰か、だれか!!」

彼はこちらに身体を向けるやいなや、すごい勢いで追いかけて来た。

丑は頭が無い。速い。俺達は逃げた。追いかけてくる彼の顔はひどいものだった。

「なんで俺だけなんだよぉ、やだぁいやだぁ!これからだって言うのに!!やだよぉ、何処にいくの!こわいよぉ!だれか来て、誰か一緒に来てよぉ!怖いよぉ怖いよぉ」

廊下は真直ぐだ、俺達はひたすら走った。

「あ」という声が聞こえて、俺は目が覚めた。

傍らには、後藤がびっしょり汗をかいて俺を眺めていた。

「今、変な夢見た」

「俺もだ」

同じ夢を見ていた。後藤の兄に追われる夢だった。

あんな子供の狂った様な彼の顔は始めてみた。

すごい厭な顔だった。俺達は急いで彼の御棺に向った。

もしかしたら彼の顔は今、あの酷い顔に……と、途中で後藤の父に呼び止められた。

「おい、佐々木さんが病院に運ばれた」

「佐々木さん?あんちゃんの同僚の?」

「通夜に来てくれるつもりだったらしい。八王子のあたりで事故ったんだと。居眠り運転だとからしいが、なぁ、こういう時どうしたらいいんだ?」

それは俺達には答えられなかった。

後藤などは、「佐々木さんの不健康で良く肥えた身体なら、死にやしないだろう」と軽口まで叩いて、先へ急いだ。

俺は、夢の中で佐々木さんがいたのを知っていた。

彼は足が極端に遅い。

後藤が手振りをするので棺に近寄った。

棺の扉が開いて、彼の顔が覗いた。

棺の中の顔は安らかで、少し微笑んでいる様だった。

(了)

 

本当にあった!世にも不思議な事件集 [ 並木伸一郎 ]

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Comment

  1. カタリ より:

    おおお…こういうフェイント系はぞくぞくきますね
    名作!

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