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アメリカ人にお経【叔父さんシリーズ02】

      2017/06/19

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叔父さんから聞いた話にいくつか印象深い話があるので、書きたいと思います。

「◯◯、アメリカ人の幽霊を、お経で成仏させられると思うか?」
叔父さんは唐突に聞いてきた。

「無理じゃない?」
「なぜ?」
「だって、お経知らないでしょ」
「それだよ」
叔父はニタリと笑った。

「もちろん、お経だろうがキリスト教の悪魔祓いの儀式だろうが、霊的な力はあると思う。だが、それよりも重要なのは、死んだ人間がどの文化圏に属し、どういう生活習慣を送ってきたかだと思う。

例え、信心・信仰深くない人間でも、人生で何度かは、葬式や宗教の祭り、教会等に行った事はあるはずだ。そこで、そういう所でそういう儀式を見ている。つまり、『死んだ者等に対しては、そうやって奉る事が常識だ』と思っている。

古来からずっと続いてきた事だ。それだけ人の思い、思い込みとも言っていいだろうが続けば、それは力を持つ。つまり、霊の側も、何となく成仏した気持ちになってるのかも知れない。全部が全部とは言わないがね」

「医者が、その症状には効かないビタミン剤とかを患者に渡し、患者が効くと思い込んで病気が治る、ってのに似てるね」

「そうだな。じゃあ、人生の前半をアメリカで過ごし、人生の後半を日本で過ごしたアメリカ人の霊はどうだ?」

「う~ん…両方効くんじゃない?」

「両方有効な可能性もあるが、最初に生まれ育った文化圏でのやり方の方が、有効な可能性のほうが高い」

「というか、霊がいるってのは、叔父さん信じてるんだ?」

「難しいな。そういう残留思念の様なモノはあると思う。俺も仕事柄世界中を回っているし、いくつも不思議なモノは見てきた。何とか説明がつくのが9割、どうしても分からないのが1割、かな。

さっきの話に戻るが、宗教的な呪文や儀式を、彫刻刀に置き換えてみるといい。ド素人が彫刻刀を奮っても、凡作しか出来ないだろう。

だが、才能溢れる人物が彫刻刀を奮えば、それは素晴らしい作品が出来上がるだろう。要は、呪文も儀式も媒体・触媒に過ぎず、それ自体にさほど効果があるわけではない、と言う事だ。優れた詩人が自分が作った詩を詠めば、それは不思議なな力を持つだろう。

優れたミュージシャンが…も然り。49日とか何回忌とか、死者は別に坊さんのお経が聴きたいのではない。

死者を想う家族の念や心、畏敬や感謝の気持ちが嬉しいのだと思う。だから俺の葬式には、辛気臭いお経など詠ませずに、ビートルズの曲を流す様に頼んである」

ビートルマニアの叔父さんは、そう言って笑った。

つづく……

 

東京伝説 呪われた街の怖い話[ 平山夢明 ]

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